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神崎は琴吹とは昨日のように校長室で会うことになるだろうと踏んでいたが見事に予想は裏切られた。

次の日、普段通り、神崎は櫻井と2人で登校していたが正門前は人だかりで塞がっていて、学校に入れない状況になっていた。


神崎は超人的な視力で人だかりの中心の人物を捉えていた。

(なんで、今いるんだよ)

その中心には琴吹が缶詰状態でそこにいた。恐らくは、正門前で待っていた所、男子生徒に見つかってこの状況になったのだろうと神崎はすぐに推測することができた。


(さて、どうしたものか)


このままだと正門から学校に入ることが出来ず、地域の人にも迷惑をかけてしまう。特に神崎はどっちの問題も関係ないのでスルーしてもいいのだが、お礼を言いに来た琴吹を放っておくのも忍びない。後で、不本意だが桐野にも文句を言われるだろう。


(仕方ないか)


本来、面倒事には首を突っ込まないのだが、渋々助けることを決めた。


「なぁ、櫻井、アイドルの琴吹がまた困っていたら、助けるか?」

「琴吹さんね、それはもちろん、助けるよ」

「そうかぁ、じゃあ、頑張れよ」

「え、なんの・・」

神崎は何も言わず、正門横の塀の上に上った。


「お~い、女子ども、櫻井が今一人だぞ――」


叫んだ瞬間、塀を乗り越え、学校の敷地内に神崎は入った。神崎が叫んだ声が聞こえた範囲の女子は櫻井に向かって、走りだした。


正門前は学校中の生徒により、ごった返していた。もはや、男子生徒と女子生徒が入り乱れて、両者は目的の人物が何処にいるのかすら、見失っていた。


琴吹本人は、混乱していた。お礼に来たはいいが、すぐに男子生徒に囲まれてしまったと思ったら、今度は女子生徒が来て、何が何だか分からなくなってしまった。

そう思っていたら、不意に後ろから引っ張られた。

思わず、この前の経験から身を縮めてしまうが、振り返るとこの前、助けてくれた本人がいた。


「あっ」

琴吹は思わず、声を出そうとするが口を神崎に塞がれて、何も言えなくなってしまう。そのまま、琴吹は神崎にお姫様抱っこをされてしまう。

「顔だけ隠して下さい」


その一言だけ言うと、神崎は前の見えない人込みの中を何事もないようにスイスイと進んであっという間に学校内まで着いた。だが、そこで神崎は足の進みを止めず、さらに加速して階段を上って行った。


着いた場所は屋上。


屋上まで着いた所で、神崎は琴吹を下ろした。

「ありがとうございます」

「いえ」

神崎は短く会話を切って校舎内に戻ろうとした。


「騒ぎが収まったら、早く帰った方がいいですよ。俺はこれで」


「待って下さい」

神崎はすぐに帰ろとしたが琴吹の呼び止める声で立ち止まった。


「昨日はありがとうございました」

「いえ」

神崎は早く話を終わらせたいのでやはり、短く会話を切る。


「本当は貴方が助けてくれたんじゃないの?」

「何の事ですか」

「事件の件です。私を助けたてくれのはイケメンの人じゃなくて、貴方じゃないんですか」

「ペンを投げたのは俺ですが櫻井が言ったから、やったことです。だから、助けたのはあいつで間違ってないですよ」

「櫻井って人が言わなかったら、助けなかったと言いたいんですか」

「そうですね」

「昨日は助けてくれましたよね」

「たまたまです」

「でも、助けてくれましたよね」

「そうですね」

一言一言いうたびに琴吹は神崎に近づてくる。


「なら、その櫻井って人が居なくても助けてくれたかもしれないですよね」

琴吹が近づいた結果、2人に距離は鼻先が当たるぐらいになっていた。


「そうかもしれませんね」


「それが分かれば、十分です」

満面の笑みを浮かべた琴吹に神崎は面を食らった様な顔したが、すぐに神崎は後ろに下がり、距離を取った。


「もういいですか」

「また、会えるでしょうか」

琴吹からヒシヒシとお願いといったオーラが伝わってくる。


「それは恐らくないですね」

「な、何でですか」

「自分から貴方に会うことはないですから、この学校の生徒でもなければ、もう会うことはもうないでしょう」


「そうですか、わかりました」


「俺はこれで」

それだけ言うと、踵を返して階段を下りて行った。


「はい、ま・・・」

階段を下りながら、神崎は最後に何か聞こえた様な気がしたが、校舎内の雑音によって、何も聞こえなった。



「今日から転校してきました。琴吹 響です。よろしくお願いします」

1週間後、先生の言われて黒板の前に立った人の姿を見て、神崎は開いて口が塞がらなかった。


まだまだ、神崎の学校生活には平穏は訪れないのだった。

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