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歌い切った2人に三森先生から拍手が送られた。
「とても素晴らしかったですよ。2人とも」
「ありがとうございます、三森先生」
桐野は綺麗な一礼をした後、お礼を述べた。
「あなたもですよ。神崎君」
「いつも通りですよ。先生」
神崎はピアノの鍵盤蓋をそっと閉めると桐野の横に並んだ。
「そうだとしても素晴らしかったですよ」
先生に褒められてなんだか照れ臭くなってしまったか、神崎はそっぽを向いてしまった。
「それでは、私たちは失礼します」
「また、放課後にきますね、三森先生」
「ええ、また来てくださいね。桐野さんもいつでも来てくださいね」
「機会があればそうします」
音楽室を出た2人は、すべての課題が終わってしまってすることがなくなってしまった。
「まだ、時間が1時間以上あるわね」
「そうだな。それじゃな」
そう言うととスタスタと歩いて行こうとする神崎。
「え、ちょっと何処にいくつもりなの?」
突然、別れの挨拶と共に歩きだした神崎を桐野は腕を掴んで引き留めた。
「ん、まだなんか、用があるのか」
これ以上の面倒事はごめんだと言うようにうんざりした顔で神崎は桐野の方に振り返った。
「違うわよ。ペアなんだから最後まで行動するのは当たり前でしょ」
「どうせ、去年と同じように最後に放送がかかるんだから一緒にいる必要性はないね」
「それは別れて行動する理由にはならないわ」
「そんじゃ、1つ理由を追加だ。お前といると男子に狙われる」
「私と一緒にいれば襲われないわよ」
「俺は狙われると言ったんだ。襲われる襲われないは関係ないね。そんじゃな」
桐野の返事を待たずに桐野とは反対方向へ神崎は歩き出した。
「まったく、思い通りにならない男ね」
桐野は神崎が去った後にその顔に笑みを浮かべながら独り言を呟いた。
神崎は廊下を歩いている途中で体に悪寒が走り風邪でも引いたかなと首を傾げていた。
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