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    絆 ②


「……おおおぉぉっ!?」


『や、やりましたっ! 流石零次なのですっ!』


零次は思わず自分の拳を凝視した。 一体何が起きたというのか? 先程までいくら殴ってもメティスの言う『絶対領域』が邪魔していたはず。

しかし、どういう訳か零次の拳はメティスの頬を激しく殴りつけ、ヘッドパーツを一撃で粉砕して見せたのだ。


「――なぐ、られた? この僕が、殴られたっ!?」


メティスは自らの左頬を抑えながら、目を強く見開いて体を小刻みに震わせながらそう呟く。

どうやら、メティス自身も予想だにしない一撃だったようだ。


「おい、一体何が起きたんだエフィーナ?」


『代行者メティスの絶対領域を無効化にしてやったのです。

デュエルサイバーズのダメージ計算というのは常にVR装置側で行われているはずなんです、ならば不正をするなら装置に干渉する以外はあり得ません。 なので、私の方で干渉しているツールを無効化させました。

でも、ごめんなさい……まだ瞬間移動(テレポート)の方が解除出来ていないのです。

同じ手法だとは思っているのですが、こちらは少し手間取ってしまっているので……』


「……いやいやお前やっぱすげぇよ。 まさか、あいつの無敵バリアを解除しちまうとはなっ!

よっしゃぁっ! これでやっとアイツと存分に戦えるぜっ!」


零次がガッツポーズを取ると、メティスは不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる。

すると、天に向かって両手を広げて、甲高い笑い声を響かせ始めた。


「クク……クククッ! エフィーナ、エフィーナ・F・リターニャッ!

君は、君は僕を裏切ったんだね? フフ、そうだろう……この行為は立派な裏切り行為だっ!

僕は何度も言ったはずだぞ、僕の前で余計な行動を起こしたら、僕を裏切るような真似をしたら容赦はしないってっ!

僕がその気になれば、この学園を物理的に制圧することだって、君の大切な友人を次々と殺していく事だってできるんだぞっ!?」


『わ、私はただ条件を対等にしただけですっ! お、男なら正々堂々と戦ってくださいっ!』


「おいおい、ちげえだろエフィーナ。 まずこいつに言ってやる事があるだろ?」


『な、なんですか? や、ややややれるもんなら、やってみれですかっ!?』


「ちげえちげえ、ほら俺に続いて言ってみろよ」


エフィーナは声を震わせながらも、メティスに向かって強く言い放つが、零次はそれを見てニヤニヤとしながら、メティスを指さした。


「ざまあみやがれ、クズ野郎ってなっ!」


『ざ、ざまあみやがれですっ!』


零次に続いてエフィーナがそう続くと、メティスは再び不気味な笑い声を響かせる。


「クク、ククククッ! いいよ、わかったよ。 たかが絶対領域が無くなったからと言って、僕が優位に立っている事には変わりはないさ。

エフィーナ、君は賢いと思ったけど実に愚かだよ。 この僕を裏切ってしまったのだからねっ!

もう後悔しても遅い、泣いて謝っても許さないさ。 君の友人には死んでもらい、この学園には消えてもらうよ……クククッ! ハッハッハッハッ!」


怒り狂ったメティスは、巨大なビームソードをもう1本インスタンス化させて、両腕で構え始める。

ほぼ同時にメティスが姿を消し、零次は背後を警戒しているとブォンッ! とビームソードの一撃が振り下ろされ、ギリギリで交わす。

メティスは先ほどまでの余裕を何処かへ消し去り、完膚なきまでにこちらを叩きのめしにかかってきているのか、二本の大剣を執拗なまで振り回し、零次に反撃の隙を与えない。


『零次、アームパーツを優先的に狙ってください。

あんな重い剣、アームパーツが無くなってしまえば満足に扱う事はできなくなるはずですっ!』


「わかった、アームを狙えばいいんだなっ!?」


零次はメティスの猛攻を避けながらも、反撃のチャンスを伺う。

その瞬間、メティスの持つ両手のビームソードが一斉に真っ赤に変色し始めた。

嫌な予感を察した零次は、全力で駆け出すとメティスは背後に瞬間移動(テレポート)をする。

ビームソードを2本まとめて振り下ろした瞬間、先程とは比べ物にならない程の爆風が巻き起こった。

ステージ全体をほぼ埋め尽くすかのようなその一撃を避けきれず、零次はVR空間の限界領域まで激しく叩きつけられる。

ガンッと激しい衝撃と共についにボディーパーツが砕け散ってしまう。

呼吸器官が一時的に言う事を聞かなくなるが、それでも倒れまいと強く踏ん張り、中腰の姿勢を保った。


『零次っ!』


「心配すんな、まだ動けるっ!」


エフィーナの悲鳴が耳に飛び込むが、零次は心配させまいとそう叫んだ。

その瞬間、ガァンッ! と背後からビームソードが振り下ろされる。

零次は間一髪で避けると、僅かに生じたその隙を狙いメティスのアームパーツを思いっきり蹴り飛ばす。

ガァンッ! と激しく火花を散らすが、アームパーツは傷一つ負う事はなかった。

もっと強力な一撃でないと破壊する事は出来ない。 ならばと零次は深く踏み込んで、ブーツを青白く輝かせ始める。

パッと目の前からメティスが姿を消したタイミングを狙い、零次は後ろへと振り向くが――そこにはメティスの姿はなかった。


『零次、それでいいのですっ! もっと真っ直ぐ飛び込んでくださいっ!』


「あ、ああっ! わかったっ!」


零次はエフィーナの意図を理解したのか、全速力で直線上を目にも留まらぬ速度で突き進んでいく。

するとその直前上の先には、メティスがビーム砲を構えた姿があった。


「何っ――」


「食らいやがれぇぇっ!」


ガァァンッ! 瞬間加速を乗せた零次の一撃が、ロプト=マキーナの右腕へと直撃すると、パーツは赤い火花を散らし、一瞬にして砕け散った。


「……僕の、僕のアバターは最強なんだっ! 君達ゴミクズがいくら力を合わせようが、勝てるはずがないっ!

そうだ、僕に敗北はない……有り得ない有り得ない、有り得ないんだぁぁっ!」


メティスは左腕でビームソードを闇雲に振るうが、利き腕ではないのか先程よりも勢いも乗らずに動作も鈍い。

零次はその隙をついて反撃をしようと構えると――不意に、メティスは姿を消してしまった。

まさかと思い振り返ると、背後からキラリと白い輝きが目に映る。


「やっべ、あのビーム砲かっ!?」


下手に高飛びをすればこの前のように連続で撃ちぬかれる危険性も高い。 しかし、だからと言って回避する術は他にない。

既にボディパーツが破壊されている以上、あれが直撃すればコアがあっという間に砕け散り零次の敗北が確定してしまう。

どうすれば、いい? そう考えた時だった。


『零次、前へ飛び込むんですっ!』


「前だと? 正気かっ!?」


『私を信じてください、絶対に避けれますっ!』


「チッ、なら信じてやるよっ!!」


エフィーナに言われるがままに、零次は地を強く踏みつけて機械仕掛けのブーツを青白く輝かせ、前方へと向かって飛び込んでいく。


「クククッ! わざわざ自ら飛び込みに来てくれたのかい、狙う暇が省けて助かるよっ!」


メティスがニヤリと笑うと、腰にある二門のビーム砲の光が最高潮に達し、まさにビーム砲が放たれようとしていた。


『零次、今ですっ! 飛び越えてくださいっ!!』


「飛び越えるだぁっ!? ああ、わかったよ畜生っ!!」


ビーム砲が放たれる瞬間、零次は瞬間加速を使い高く飛び上がる。

その刹那、強烈な光が周囲一帯に広がり、爆発に近い音が鳴り響く。

だが、零次はビーム砲に巻き込まれることなく、メティスの遥か頭上を飛び越え背後を取った。


「うおらぁぁぁぁっ!!」


更に零次は瞬間加速を乗せて、豪速でロプト=マキーナのボディパーツを背中から殴りつける。

ガキィィンッ! と激しい金属音とを響かせると、メティスの体は吹き飛ばれ、ガタンッと力なく地面へと体を叩き付けられた。


「――バカな、あの距離で避けたというのかっ!?」


『当然です、ビームは発射時では集束していますから近距離に行けばいくほど範囲は狭まるんですよ。

ゼロ=リターナの前での近距離によるビーム砲ははっきり言って無意味ですよっ!』


「へぇ……大した自信じゃないか。 なら、試してあげるよっ!」


メティスが再度腰のビーム砲から青白い光を収束させると、零次は地を強く踏み込んで機械仕掛けのブーツを白く輝かせた。

『零次っ!』


「ああ、わかってるっ!」


零次は撃たれる前にと、高く前方へ飛び込もうとした瞬間――急遽、クルリと後ろへ振り返って弾丸の如く前方へ低く飛び込んだ。

すると、零次の直線上にはビーム砲を構えたロプト=マキーナが待ち構えていた。


「なっバカな――」


瞬間移動(テレポート)に頼りすぎなんだよ、チート野郎がっ!」


零次の拳がロプト=マキーナの腹部を貫くと、凄まじい金属音が鳴り響く。

ミシミシと大きなヒビが入るが、破壊にまでは至らなかった。

すると、不意に零次の腹部に衝撃が走る、メティスの左腕の一撃がモロに直撃してしまった。

激しい嘔吐感に襲われ、一時的に呼吸困難に陥るが零次は地をしっかりと踏み付け、渾身の力を込めてアッパーを仕掛けた。

ゴォンッ! と鈍い音が響き、メティスは顎を突き上げられ吹き飛ばされる。

更に零次は飛び込んで追撃を仕掛けようとしたが、不意にメティスは巨大なビームソードをインスタンス化させ、片腕で横一線に振るうと、零次は避けきれずに左腕でその一撃を受け止める。

メティスは大分弱っているとはいえ重すぎる一撃だ。 当然、アームパーツは衝撃に耐え切れず粉々に砕け散ってしまった。


「ククッ、ザコの癖に調子に乗るなっ! この僕が、この最強のアバターが君如きに敗れるはずないんだよっ!」


「なら、俺がそのアバターを最強じゃねぇってことを教えてやるよっ!」


メティスがビームソードを天に掲げてると同時に、零次は踏み込んだ。

次の瞬間、メティスは真っ赤に変色しきったビームソードを力任せに振り下ろす。

零次はその合間を潜り、もう一度ロプト=マキーナの腹部に目掛けて拳を突き付ける。


「クハハッ! 消し炭にしてやるよ、桜庭 零次ぃぃぃぃっ!!」


「貫けぇぇぇっ!!」


二人の叫びがほぼ同時にあがった瞬間、周囲に凄まじい爆発が引き起こされる。

煙で視界が奪われ何も見えなくなり、一瞬だけ静粛が生まれた。


『零次……?』


エフィーナが不安そうな表情で名を呟くが、返事はない。

体を縮めながらキョロキョロと必死になって零次を探し出そうとするが、煙のせいで周囲一帯はほとんど何も見えなかった。しばらくして煙が晴れてくると、その中心には巨大な鎧を身に纏ったシルエットが目に移りこむ。 零次、ではない。

まさか零次は――と、嫌な予感を頭に過ぎらせた途端、不意にもう一つのシルエットが徐々に見えてくる。

巨大な真っ黒な鎧のアバター……ロプト=マキーナの鎧を拳で貫いている零次の姿がはっきりと映し出されたのだ。

ピンポイントで貫いた鎧の先には、ロプト=マキーナのコアを位置している。

見事、零次の拳はロプト=マキーナのコアを粉々に粉砕していた。 メティスの纏っていたロプト=マキーナは音もなく、粉々に砕け散っていく。

すると、メティスは何が起きたのか信じられない表情を見せ、うつぶせで倒れた。


「――おい、エフィーナ。 喜べ、たった今メティスの野郎をぶちのめしてやったぞ」


『か、勝ったのですか……本当に?』


「ああ、見ろよ。 奴のロプトなんちゃらってのがもう解除されてんだろ?」


零次が倒れているメティスを指さすと、不意にメティスは上半身を起こし、立ち上がった。


「嘘、だ。 嘘だ嘘だ嘘だっ! 何かの、何かの間違いだっ! この僕が、最強の僕がこんな雑魚に負けるはずがないっ!

何故だ、何故だ何故だ何故だぁぁっ!?」


「んじゃ、約束通りエフィーナは俺のもんにさせてもらうぜ? 異論はねぇな?」


「――認めるか、僕は負けていないっ! エフィーナ……君が僕を裏切らなければ、僕を裏切ったりさえしなければぁぁっ!!」


『ひ、卑怯な人を使う人は嫌いですっ! もう、私は貴方の言いなりにならないのですっ!』


「い、いいのか? 僕にそんな口を利いてタダで済むと思っているのかっ!? いいだろう、ククッ! ハハハッ!

こうなったらこの学園を物理的に制圧してやるぞっ!

ぼ、僕に不可能はないのさっ! 屈強の兵士共を集めてこの学園の生徒を皆殺しにしてやる、自衛隊でも何でも呼んでみるがいい、まぁどーせそんな事をしても無駄だろうけどね――」


「へぇ、何? 俺達と戦争やろうって言うのか?」


零次はメティスの胸倉を掴み、ギロリと睨み付けてそう告げた。


「フ、フフッ! この僕に暴力でも振るうのかい? ハハッ、好きにするといいよっ!

そうだ、一番最初に殺すのは君にしてあげようっ!」


「お前が何をどうしようが知ったこっちゃねぇがよ、ただ俺達に挑むってんならそれなりの覚悟は出来てんだろうな?

言っておくがデュエルサイバーズのプレイヤーってのは戦闘のスペシャリストばっかなんだよ、俺みてぇにケンカばっかしてきた奴や本物の格闘技ばっかを重ねてきたすげー奴だっている。

テメェが連れてくる奴らがどう言う奴らかは知らねぇがよ、俺達がただ黙ってやられるだけだと思ったら大間違いだぜ?

覚悟は出来てんだろうな?」


「ク、ククククッ! 見える、見えるよっ! 君は今、僕の言葉で動揺しているんだろうっ!?

そうだ、怖いだろう……僕が連れてくる無敵の軍団に身体を震わせ、オシッコを漏らしそうになっているんだろうっ!?

ハハ、ハッハッハッハッハッ!」


「ケッ、くだらねぇ。 ま、テメェがそこまで言うんだったら……まずは俺が『リアル』で相手になってやるよ。

そのくだらねぇ口を聞けねぇように前歯全てへし折ってやる。

さあ、現実世界(おもて)に出ろ……何なら今予行演習として、ここでやっちまってもかまわねぇぜ?」


「――ヒ、ヒィィッ!! わ、わかっているのかっ! ぼ、僕にっ! 僕に逆らうと、どどどどうなるのかっ!

き、君はっ! 君の命はもう、ないっ! ヒヒ、イッヒッヒッヒッヒィィッ!! 死ね死ね死ね死ね死ねぇっ!!

死んでしまえぇぇぇぇっ!! ハーッハッハッハッハッハァッ!」


メティスは狂ったかのような甲高い笑い声をあげると、そのままグラリと気を失い、バタンッと倒れてしまった。

目を強く見開き、体をビクビクとさせながら口から泡を噴き出して倒れている姿はなんともまぁ間抜けとした言いようがない姿である。

零次は思わず見ていられず、右手で両目を覆いながらため息をついた。


「はぁ、まさかこんな奴に俺達は振り回されていたのか……情けねぇ」


『零次、今ならVR空間をログアウトできますよ。 今のうちに戻ってください』


「おう、わかった。 今戻るぜ」


零次がエフィーナにそう返すと、周囲の景色は一瞬にして真っ暗になり、やがて零次の意識は途切れた。






零次がVR装置から出ていくと、エフィーナはサーバールームで何やら一人で作業を続けていた。

当分VR装置からメティスが出てくることはないだろうと思い、零次はエフィーナの元へ向かうと、エフィーナは真剣な表情でカシャカシャとキーを叩き続けていた。


「おい、何してんだよ?」


「決まっているじゃないですか、メティスの用意したプログラムに細工しているのです。

メティスがプログラムを実行した時に、学園のネットワークを介してメティスの恥ずかしい写真を一斉に送信するよう改変しました」

エフィーナが見せた1枚の写真は、たった今VR上で見せたメティスが気絶した姿が映されていた。


「……お前、顔に似合わずえげつない事すんだな」


「メティスの自業自得なのです、悪い奴は成敗してやるんですっ!」


「んで、あいつが言ってた物理制圧って実際どうなんだ?」


「単なる脅しだと思います、いくら元ハーミットサイバーと言えど軍と直接的に関わりは持っておりませんし、裏の世界の人間とも接点はありません。

それができればこんな回りくどい真似しなくても学園ではなく国にケンカ売るべきですよ。

所詮私達は技術屋止まりですし非力なのです、だから技術的な手法でしかテロ行為を行えなかったはずです」


「じゃあ、何であんな奴の言う事聞いてたんだよ?」


「……だって、怖かったんです。 メティスはデュエルサイバーズ内では、まさに最強に近い存在でした。

例え絶対領域や瞬間移動(テレポート)がなくともオーバースペックは健在ですし……。

何よりも、VR装置のセーフティーを解除した状態では本当に人が死ぬ可能性だってあったんです」


「何だよ、俺が負けると思ったのか?」


「だって、現に1回負けたじゃないですかっ! あの時、零次が二日も目覚めないと聞いて怖かったんです……

あれからずっとメティスに脅され続けたんですよ、余計な事をしたら零次を殺すって、何度も何度も……」


エフィーナは顔を俯かせ、目尻に涙を浮かべながらそう呟いた。


「……そうか、お前はメティスの野望を阻止する事より……俺の命を優先してくれたのか」


「……はい。 だって、零次は初めてのお友達だったんです。 だから、零次だけでも絶対に守ろうって決めてたんです。

勿論、私も黙ってメティスに従っていたわけじゃありませんよ――」


「ったくよ、だったら何で自ら俺を突き放す真似しやがんだ。 結局全て一人で背負いこもうとしやがったんだろ?

そんなに大事に思ってくれてんなら、二度と『さよなら』なんて口にすんじゃねぇぞ。 そんなの、俺もお前も……悲しすぎるだろ?」


零次は弱々しく震えていたエフィーナの肩をポンッと叩いて、そう告げる。

エフィーナは袖で目尻に浮かべていた涙を拭き取って、笑った。


「はい、私達はパートナーですもんねっ!」


「ああ、そうだ。 俺達は――」


零次はエフィーナに続いて返そうとすると、不意に目眩を起こしてガクンッと膝をつく。

恐らくVR装置における戦闘影響が今頃になって出てきたのだろう。

まだ医者からはVR装置の利用を止められていた段階だ、にも関わらずにあれだけ派手に戦闘を繰り返せば無理もない。


「零次……大丈夫ですかっ!?」


「あ、ああ……悪い、ちょっと休ませてくれ――」


零次はそれだけ告げると、ガクンッと意識を失いその場で倒れた。


「零次、零次っ!?」


最後に、エフィーナが涙を目に浮かべながら必死に訴えかける声が飛び込んできた。

別に死にやしねぇよ、ただ眠くなっただけだ……と、告げる前に零次は意識を失った。


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