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それは異世界で

 それは古の昔、時の流れすら曖昧であった、もうずっと昔のお話です。


 世界にはただ一人の女神しか居らず、すべてがただひとつでしかなかった頃。


 女神により天地は生まれ、神々が生まれ、竜と獣達が生まれ、妖精と草木が生まれ、全ての生命が生まれました。

 “最も年若き同胞”である人間達が最後に生まれた後、その役目を終えた女神は長い長い使命を終えて、大いなる眠りにつき、その命を持って世界を完成させました。


 この“最初の死”によって全てのもの達は生命を得て、世界の始まりを継げたのだと言われています。


 世界創生の神話です。


 その後、たくさんの時が再び流れますが、この頃は神も魔も人も竜も全ての生命が等しく地上で暮らしていたと伝えられています。

 “ひとつの時代”と言われる、神々と共に全ての生命が共に在った頃でした。

 ですが、“ひとつの時代”は終わりを告げ、何故か神々は地上を去ります。


 地上に残された生命達は、いつしか神々の事を忘れてゆき、剣と魔法により地上の覇権を争うようになりました。

 “黄昏の時代”の到来です。


 しかし“黄昏の時代”は唐突に終わりを告げることになります。


 ある日、天空を黒く切り裂いて、“世界の外”から、この世界へ攻め込んできたものがありました。

 それはあらゆる存在に取り憑いて、その姿を変貌させる恐ろしい怪物たち……

 “混沌の軍勢レギオン”の侵略が始まったのです。


 地上全てのもの達が再び一つとなり、この恐ろしい侵略者に戦いを挑みました。


 しかし、“軍勢(レギオン)”の侵攻は恐るべきものでした。

 “軍勢(レギオン)”達は実体を持たず、地上のあらゆるものに取り憑いては、そのものを狂わせ恐ろしい怪物へと変えてゆきました。その怪物を滅ぼす為には、取り憑かれたものたちごと滅ぼすしかありませんでした。


 かつての同胞達の命を犠牲にしながら、救いようの無い戦いが長く長く続きました。

 それが世界の生命を削っていく戦いであったとしても、戦いは続きました。


 ……世界は、滅びようとしていました。


                         ●


「ふぅ……いやー、やっぱり一気に話すとさすがに緊張しますねぇ! ……まあ、こんな感じにですね、ちょっとまあ色々あったりしてかなり大変なことになっちゃった訳ですよ! この世界!! このくらいの時代の話とかもまあ、面白い逸話が沢山あるんですけどね、はい! でもまあ、そのあたりに触れると結構脱線になるというかでして……ああ、でももしご興味があるなら……!」


 なんだか良い感じにテンションが盛り上がって、矢継ぎ早に言葉を重ね続ける眼鏡の少女を前に、アキラはとりあえず自分の置かれた状況の整理を開始することにした。


「……えーと、とりあえずここは私が住んでいた世界とは違う世界で……」

「そうですわね」


 褐色の肌にとがった耳を持つ銀髪の女性が応える。


「で、私は勇者として召還された、と?」

「はい。ようこそいらっしゃいました。今代の勇者様」


 巫女装束の黒髪の少女が恭しく頭を下げる。


「あははははははははははは……」

「まあ、なんだね……ヨロシク!」


 小柄でエネルギッシュな女性が、ビシ! とでも効果音が出そうな勢いで親指を立てる。


「なにそれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……!!!!!!」


 アキラは天を仰いで絶叫した。


「あー……ごめんなさい。少し取り乱しちゃいました……んで、続きなんですけど、勇者って言われても……私何も出来ない唯の人ですよ? それと、話聞いてるとなんだか皆さん対応に慣れてる感じですが、もしかして他にも私みたいな人間が居たりするんですか?」


 ひとしきり騒いで冷静になったのか、アキラはそれぞれ個性的な面子を見渡しながら、そんな疑問を口にする。


「こほん……まあ、実を申しますと貴方のように“外の世界”からやってこられた方々は過去に幾人か居られますの。最初の一人を除いてその全てが最上級のクエストである“世界級”のワールドクエスト『勇者召還』で召還された方々であり、結果やって来る方々を文字通り……」

「まあ、勇者って呼んでるわけだ」


 説明! 説明ですか? 説明ですよね! と、後ろで騒いでいたアネットと名乗った少女を押さえて、褐色の肌の女性レンカと小柄な方の女性ローザがアキラの疑問に答えを返す。


「……うわお、マジでファンタジーか、RPG(ロープレ)の世界だわ……っていうか、ワールドクエストって?」

「ああ、この“迷宮世界”で、あたし達冒険者が成すべき仕事とか試練を“クエスト”って呼ぶんだけどさ、最近だと外……まあ“現界”の方でも冒険者が受ける仕事の事をそう呼ぶことも多くなってきたかね」

「付け加えますと、“クエスト”はその難易度などでいくつかの等級分けがされておりますの。その中でも最高ランクの“世界級”に属するものをワールドクエストと呼びますわ。文字通り世界レベルでの影響、もしくは規模を誇るものです。これ以上ですと、歴史に名を残す規模──この”迷宮世界”誕生の儀式に代表される──主に勇者により成される“英雄級”のヒーロークエストくらいですわ」

「はあ……えっとじゃあ今言ってた”勇者が”この世界を創ったっていうのは……?」


 ……ますますRPGロープレの世界だなあ、と考えるアキラの言葉に、彼女達は「ああ、そうか、そこらへんか」「どこから説明したものでしょうね?」と一瞬顔を見合わせる。


「その当たりは……“最初の勇者”のお話から始めたら良いのではないでしょうか? あの、“門”の辺りで」


 やや遠慮がちに発せられたシノの言葉に、三人の女性達も「それがいいか?」「妥当ですわね」「解説! 解説ならおまかせですよう!」と、三者三様ではあるものの、肯定の意を示して、アキラの方へと向き直った。


「では勇者様、これも何かのお導きでしょう。僭越ながらご案内申し上げます。古の世界が、この“迷宮世界”へと生まれ変わった成り立ちと……過去の勇者様達の足跡そくせきを」


                         ●


 それは、広い神殿のような場所だった。

 太く重厚な石造りの柱がぐるりと周囲を囲むように配置され、中央には青い光を発する魔方陣のような円形の場所が存在する空間だ。その広いスペースは、まるでかつて通っていた学校の体育館を二つか三つ繋げたようだと、アキラはそんな印象を持った。

 そんな場所の片隅に立つ大きな白い石碑の前に、アキラと四人の冒険者達は静かに佇んでいた。


「これは……?」

「こちらは、これまでの勇者様達の主な出来事を記した……記念碑です。そしてここは、私たち冒険者が“門”又は“入り口”等と呼ぶ場所。“迷宮”と“現界”──地上を繋ぐ場所です」

「地上?」 

「はい。私たちが今居るこの場所は、“迷宮”と呼ばれる異空間に接続する為に、”最も新しき女神”の御力によって世界の狭間に創られた小世界なのです。そして最初は、この門の存在する小世界と迷宮のことを”迷宮世界”と呼んでいましたが……今は我々の住まう世界全体をまとめて”迷宮世界”と呼び現すようになっています」


 “迷宮”それは、“軍勢レギオン”の侵攻を阻む為に世界を護る堅牢なる砦。

 “迷宮”それは、“軍勢レギオン”を捕らえ、実体を持たないかの者達を滅ぼす為の狩場。

 “迷宮”それは、“軍勢レギオン”に対抗する為、人が仮初かりそめの命にて無限の闘争を繰り広げる世界。


重々しく語られたシノの言葉により明かされた、この世界での”迷宮”の役割に驚愕するアキラ。

 だが、それに追随ついずいするように語られたアネットの解説に、


「あ、こういった世界の仕組みを創るにあたっての発案アイデアは“最初の勇者”がもたらした“MMO”とか言う異界の概念が関わってるらしいですよ!」


 思わず違う意味で、彼女は天を仰いでしまった。


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