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十色の永久光石  作者: みいみ
第1章 集結
6/19

第6話:それでも、好きなものは好き

 私、村上(のぞむ)。趣味はお菓子作り! そのきっかけは小さな頃に見たパティシエが主人公のアニメだった。


「私にとって、スイーツは魔法なの。だって、ふわふわのスポンジと、とろけるクリーム、きらきらのフルーツの前では誰もが笑顔になっちゃうから!」

 

 画面の向こうで、毎週美味しそうで可愛いお菓子やケーキを作る女の子にものすごい憧れを抱いたのが始まりだった。


 って、ここまで話したらこの後私がいかにもお菓子作りに魂を燃やす物語が始まるように見えるでしょ? 残念。それはできなかった。好きなものは「好きなもの」止まりだった。

 だってアニメのパティシエちゃん、毎回トラブル続きで大変そうだったもん。

 私は今でもお菓子を食べること、作ること、両方が大好き。毎日、毎食と言っていいほど食べてた。美味しくて可愛くて、癒されるんだもん。


 そろそろ察するよね。私、太ってます。健康的にどうのって話じゃないし、街を歩いていればたまにいるくらいのぽっちゃりだけど。

 多様性の時代って言うけれど、小学生にはまだ分からない。だからよく「デブ」って男子から揶揄われてたっけ。

 そんなことはどうでもよかった。体型については言われても仕方ないかって広い心で受け入れてたから。「うん、そうだよ~」って。


 そんな私も気づけば高校生。そんなに好きならお菓子作りの専門学校に行ってみたら? って友達や先生に言われたけど、普通の高校でいいって言った。

 その中でもどうして双葉総合高校かと言えば、単純に家から1番近かったから。

 高校生活にも慣れてきた7月の初め。

 地味~にクラスから自分の居場所がなくなっていることに気づきました。自分にはあまり関係ないけどね。だって料理同好会に入ったらお友達がいっぱいできたから!

 

「望ちゃん、本当にお菓子作り上手だね。将来パティシエとかになれそう!」

「いやー、照れるなぁ。だけど趣味は趣味。大人になったら多分全然違う仕事して、お休みの日に作ってるみたいな生活してるんじゃないかなぁ」

「い、意外と現実見てるんだね……」

「そんなんじゃないよ。好きなものを『好き』って言い続けたいからどうしようかなって私なりに考えただけ」


 クラスではちょっと寂しいけど、放課後、週2回の楽しみのためならそんな時間も乗り切れる。

 せめて1年2組に料理同好会の子がいればと思ってみんなにクラスを聞いても、首を横に振った。仕方ないか。2組、運動部の子がいっぱいだもん。


 今日の同好会もお開きになってさあ帰ろう! と、アスファルトに昼間の余熱が残る中庭の横を通ったら、可愛い声で胸にちくっと刺さる言葉が聞こえてきた。


「止めて。ゆめみさん、あなただけまたフリが逆です。もう1回最初から!」

「えぇ~! もう10回目だよぉ……? もう7時だし、今日はここまでで勘弁してください朋香さまぁ~」

「ライブ感が欲しいから一発撮りにしたいって言ったのはゆめみさんじゃないですか! それに紗矢さんの言う通り、投稿頻度を下げたらアルゴリズム的に誰にも見つけてもらえなくなりますよ」

「うわぁーん!」

「ゆめみ、あと1回だけ頑張ってみよう」

「かなちゃんまでぇ~……」


 この学校にアイドル部なんてあったっけ……。少なくとも入学前のパンフレットには載ってなかったはず。11回目の撮影の行方が気になって、私は遠巻きにその子たちを見守ることにした。

 ところで、踊っている4人のうち1人っていつも教科書を先生の目からの盾にして携帯でニュース番組を見てる至田(しだ)ちゃんに似てるような……。

 あーあ。ゆめみちゃんって子、なんだかすごく可愛い通信制の子と至田(しだ)ちゃんから袋叩きにされてる。


「……あ!」


 その時、至田(しだ)ちゃんたちと踊っていた子の身体がぐらりと揺れた。私はなりふり構わず校舎の陰から飛び出す。

 保冷バッグを激しく揺すり、どたどたと音を立てて私が数歩走ったときにはもう倒れた子の身体はかなちゃんって子に抱きかかえられていた。


 突然現れたぽっちゃりさんこと私と、ドリームテイルの出会いはそんな感じだった。


「まほろ、大丈夫?」

「はぁ、はぁ……っ」

「困ったな、保健室もう閉まってるし。家も遠いって言ってたし……」

 

 私はといえば、今日は同好会でレモンゼリーを作った。家で家族と食べようと保冷バッグで持って帰るところだった。

 友達が寒天の分量を間違えてかちかちになっちゃったから今走った衝撃でも崩れていないはず。


「あの! これ、よかったら……」

「村上さんじゃない。……急に何?」

「私、料理同好会で、これ、さっき作ったばかりで、えっと、えっと……」

「5個全部、もらっちゃっていいの?」

「うん、うんっ!」


 ラップで封をしたガラスの器を取り出すと、保冷剤並みに冷えている。

 かちかちのゼリーが入ったそれはまほろちゃんという子の身体を冷やすのに3つ使われて、1つは今冷やされている本人が、もう1つはゆめみちゃんが食べている。


「きゅんって酸っぱくて、ぷるぷるで美味しい! 生き返る~!」

「えっと、村上さん。ありがとうございます、助かりました。ゼリーもすごく美味しくて……。みんなで大事に食べますね」

「望、でいいですよ。あまり詰め過ぎないように、頑張ってください! それじゃあ!」


 って、まほろちゃんに言われてほっと一息つきながら帰ろうとしたのに。至田(しだ)ちゃんが私の前で仁王立ちしていた。


「そろそろ歌とダンスのコピーに視聴者が飽き始めてる。料理同好会なのよね。その知恵、貸してもらってもいいかしら」

「し、至田(しだ)……ちゃん」


 なぜか私に拒否権はない気がして、頷いてしまった。

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