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十色の永久光石  作者: みいみ
第2章 結束
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第20話:だからこそ、信じたい

 3学期が始まった直後、全日制の6人は理事長室の前を訪れていた。同じ双葉総合全日制の校舎とは思えないほど、彼女たちの耳に馴染んだ喧騒は遠く聞こえてくる。


「みんな、いくよ」


 ゆめみはその扉を震える拳でノックした。


「どうぞ」

「失礼します」


 扉を開けると、ふわりとお香のような香りが漂ってきた。高級感のあるセットアップに身を包んだ熟年女性が革製の椅子に腰かけている。

 彼女こそ、この1年でゆめみたちも数回しか顔を見ていない理事長だ。

 理事長の有無を言わせぬ威圧感に、夜通し考えた口説き文句がゆめみたちの脳内から消えていく。理事長の前に、6人は横並びになった。


「1年、ドリームテイルの高宮ゆめみさんたちですね」

「え、どうして私たちのことを!?」

「噂はかねがね聞いています。合宿配信を中心に問い合わせの電話も度々かかってきていますし、あれだけの大立ち回りをして知らないはずがないでしょう?」


 理事長はドリームテイルの行く末を静かに見守っていたという。何度も10人を止めようという話は教員たちの間であったが、理事長の一声で活動停止を回避させていた。


「あなたたちが理念としている『心の溝』の解決は、大人が介入することも考えました。そうしろと教員たちに呼びかけたこともあった。ただ全ては表面的に終わり、最後には私も匙を投げてしまった」


 理事長は小さくため息をつく。大切な生徒たちがいがみ合う現実から目を逸らした罪悪感に、彼女は今でも囚われている。


「だからこそ、あなたたちが立ち上がったときに私は『これだ』と強く感じました。大人が綺麗ごとを言うよりもあなたたちのむき出しの人間味のほうがずっと効く。そう信じることにしました」

「では、中庭ライブの件は……!」


 紗矢がぱあっと目を見開く。


「もはやこの話は、あなたたちだけのものではない。後ろには1000人以上がついている。これでダメだと言ったらどうなることか。1月15日、中庭の占拠を許可しましょう」

「わぁ……!」「よかった~……」


 6人の笑顔に、理事長も顔を綻ばせる。開校以来初めてだという中庭の使用許可証が、ゆめみたちに手渡された。ゆめみはそれを確かに受け取る。


「ただし、やるからには本当に学校中を揺るがすライブにすること。あなたたちならこの学校を変えられると信じていますよ」

「はい! ありがとうございました!」


 部屋を去る前、ゆめみは理事長の方へ振り返った。


「絶対、この学校にある心の溝を埋めてみせます!」


 ゆめみのきらきらとした目を見て、理事長は微笑みながら頷いた。

 その後、学校のサイトへ大々的に10人の写真が表示された。


 ――ドリームテイル 中庭ライブ開催決定! 1月15日 16:00スタート


「さあ、もう後戻りできないよ。ゆめみ」


 夏菜恵(かなえ)の声に、ゆめみははつらつとした声で応えた。合宿でありのままをさらけ出した彼女たちにもう迷いはない。

 

「うん! 1年間の頑張り、全部出し切ろうね!」


 ドリームテイルも、双葉総合も最高の状態となっていた。そこに美優(みゆう)が携帯の画面をスクロールしながら低い声でつぶやいた。

 

「でもさ。1月15日、雪だよ」

「えっ?」

「まほろ、次の衣装ってほとんど半袖だよね」

「う、うん……」


 週間予報には1月15日、しかもこの場所だけに雪だるまがぽつんと佇んでいた。ただでさえ日の届かない中庭に、雪が降るほどの極寒。

 それに薄着のアイドル衣装という軽装備で挑もうとする事実を想像するだけでゆめみの背筋は震えた。


「えぇ~~~~っ!?」

「高宮ちゃん、ここ理事長さんの部屋の前」

「大丈夫だよ、薄着しなきゃいけないときの寒さ対策も私詳しいから……」

「あんたのその知恵はどこから来てるのよ……」

「それは……! 内緒で」

「ん。何よ。教えてくれたっていいじゃない。ゲームの衣装を作ってるって時点でちょっと察するところはあるけど」


 まほろはドリームテイル内でひた隠しにしているコスプレイヤーとしての知識もフル活用してさっそく知略を練り始めた。

 中庭占拠の権利を手にしつつ、6人は新たな課題も持って理事長室の前を後にする。


 集大成のライブは、目の前に迫っていた。

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