【18】 凱旋
【18】 凱旋
魔王討伐の凱旋パレードは、盛大に執り行われた。
救世の英雄を敵地から救出した王国騎士団は国民から称賛を受け、魔王討伐はあたし達と後発組のカルラ達の手柄ということにされた。
実際、完全に魔王に止めを刺したのはあの古城での戦いでのことだったし、カルラ達は「辞退します!」と言ったそうだが、英雄は一人でも多い方が都合が良いらしく、それに、あまり表舞台に立ちたくはなかったあたしや、ユリアの後押しもあって、表向きの勇者はカルラ達のパーティグループの、それも前衛職の二人の方が見栄えがいいだろうということで、ムネヨシだかアランだかの二人に担ってもらうことになった。
王城へと向かう大通りを手綱を引かれた馬に跨り、あたし達は行く。
窓やベランダからばら撒かれる紙吹雪が太陽の光に煌めき、空高くを二羽の鳥が飛んでいる。
振り返れば、思い出は褪せることなく思い返せるのに、ひどく実感が乏しい。
「あたし達、帰ってきたんだよね」
思わずこぼしたあたしに、ユリアは困ったように笑って、返した。
大切なものをあの場所に、置き忘れて来てしまったかのように。
「あまり帰って来たという感じはしませんね」
苦笑し、周りに目を向けるユリア。
半年――、……いや、勇者育成機関にいた期間を考えると三年と少しか。
そもそもあたしもユリアも王都出身ではないからこんな所に来たって「久しぶりに来たよね、ここ」「そうだよね、前来た時はどこ行ったんだっけ?」みたいな観光地気分しか湧いてこないだろう。
まぁ、観光気分でも湧いてくれればマシだったのかもしれないけど。
生まれ故郷である魔法都市に戻れば「帰って来た」という実感が湧くのだろうか。
それとも勇者養成機関を訪れれば……?
……いや、たぶん、そんなことではあたしたちはあの場所から戻っては来れない。
ギルを看取り、アレスを置いて来たあの時から、あたしたちはずっと帰る場所を失ってしまったのだ。
その心の傷は時間が解消してくれるのか、……それとも、他の誰かで埋めなきゃいけないのかはわからないけれど、いまはただ、この悲しみさえ愛おしいとすら思う。思う、べきだと思う。
もう少しの間。アイツらの、顔を思い出せている限りは。