一話 悪とは
短め、思い付いたら続き書きます。
悪とはなにか?
それは外道、道を外れた者
それは魔、人成らざる者
それは人、須く脅かす者
「じゃあ俺がなってやる」
「完全無欠で地上最強...いや、全世界で一番の悪!完全超悪に!!!」
人と魔がごった返しの世界で人の身に生まれ人として育ちそして死ぬ。そんな定められた道を外れた「外道」であり「人」の形を「魔」に落とし、機嫌一つで全てを脅かす。
まさに「悪」
そんな物に拘った阿呆の道中、そしてたどり着く末路は喜劇か悲劇か...
「お前そんなことも出来ねぇの!?だっせー!」
懐かしい夢を見てる
「やめて」
「やーいチビ!ちっちゃい上に火も出せないでやんの!」
「ちがうよ!」
そうだな、違う。
出せないんじゃなくて出さなかったんだ、本当は皆と同じくらいの魔法は使えたんだ。
「何が違うんですかー!?またいつもみたいにお母さんが~お母さんが~って泣くんですか~?助けてママ~」
「お母さんの事は悪く言うなよ!」
これも懐かしいな、母さんに人前で魔法は使っちゃいけませんってキツく言われてたっけ、それでよくいじめっ子に馬鹿にされたもんだ。
この後は取っ組み合いの喧嘩になっちゃって相手の子を怪我させて怒られたんだっけな...
「.........くさん......きゃくさん...お客さん!もう目的地着いたんだからとっとと降りて!」
「あ?あぁこりゃすんません」
大きな城門の前、様々な荷が積まれている中で一緒になって運ばれていた、魔車のように金がかかっている訳ではなく乗り心地も良くない馬車の荷台でよくここまで熟睡出来たものだ、我ながら感心してしまう。
「大体お客さん無用心だね、そんなに寝てたら身ぐるみ剥がされて捨てられるとか思わないの?」
「大丈夫だ、所持金は前払いで渡した物が全てだしそれ以外の荷物は何にもねぇ。まぁ服を取られて全裸は困るな!ハハハ!...はぁ」
先程の嫌な夢もこの先の不安も全てを吹き飛ばすように笑ってみるが頭を覆う不安は一向に晴れる気配がない。
「まぁ金さえ払って貰えればお客さんの事情は知らないけどね、こっちも荷物を届けるついでだし、じゃあもう行くから。また機会があれば乗せてやるよ」
そう言って門番の元へ向かう商人、俺も気を引き締めてその後を歩く。目的地は勿論この城門の向こう「エンデルン」だ。
「ふぅ~ん、氏名トワ=ユウキュウねぇ」
場面は変わり門番の前、絶賛俺の通過審査の真っ最中である
「この街に来た目的は出稼ぎ?こんな街になにを期待してんだか...そもそも剣の一つどころか水をいれる袋すら無いじゃないか、怪しいものですと言ってるようなもんだよ?」
「金はないけど腕っぷしには自信があるんだ、水袋なら既に追い剥ぎに奪われた後だし残ったなけなしの金でここまで来たって訳さ」
軽く嘘も交えながら違和感の無いように進めていく、ここで失敗してしまえば全てがおじゃんだ。
頼む、通してくれ...
「ていうか元貴族?ユウキュウなんて家は聞いたこと無いから隣国の没落か余程田舎者か...どちらにしろそんな怪しい奴は入れられねぇな」
「え!?...そこをなんとか頼むよ守衛のおっちゃん!さっきも言ったろ!?俺は追い剥ぎのせいで水すら無いんだぜ!?」
そう言われても無理だ、なんて軽くあしらわれて次の奴の審査を始めようとするおっさん
「これは本当にタダの気持ちだけどさぁ、入れてくれない?」
おっさんのポケットにスッと石を忍ばせる。
「......これは大変失礼いたしました!どうぞお入りくださいませユウキュウ様、このエンデルンをどうぞお楽しみくださいませ!」
その石を見ただけでおっさんの態度は激変する、今までのやる気の無い対応とは一変し目の色を変えて対応してくれる、俺の後ろにいる奴はそれを見て何が何だか分からないって感じだが俺は分かりやすく賄賂を渡しただけだ。
「なにはともあれ取り敢えず、ようやく着いたぜエンデルン!!」
――――
「いや~今日はツイているな、へへっおい次の奴!氏名と目的を言え、身分証があるならそれも出せ」
「え?あんた今なに受け取ったんだ?」
「言うわけ無いだろう?俺は真面目に働いてい
「エンデルンじゃあ石も賄賂代わりになるってのか?」
...は?」
「なんじゃあこりゃあ!!??おいちょっと待て!そこの......!?あ、あれぇ?今通した奴ってどんな顔だったっけ?名前!帳簿に書いてある名前から割り出して取っ捕まえてやる!......書いてねぇ...」
紫の煙が足元を撫でる