第二話
「ったくよぉ。またでやがった」
「なにがでたんですか?土方さん」
ところ変わって、声の聞こえる場所は新撰組屯所。
会津藩御預京都守護職新撰組。それが、彼らの本当の名。
しかし、京都守護職とは名だけで新撰組からは、幕府公認の人斬り集団として恐れられていた。
「なにがって。総司、お前なぁ…。花蘇芳以外の何があんだよ」
花蘇芳が現れたのはちょうど一月前。新撰組は、数日前から会津藩からこの花蘇芳を捕まえるよう
お役目が回ってきた。しかし、捕まえるどころかまったく情報は掴めていなかった。
あぁ、なるほど。そういって沖田は手をたたいた。
「でも、戦ってみたいものですね。これだけ人を斬って見つからないなんて、相当の腕ですよ。楽しみだなぁ」
「おい、総司。『楽しみ』なのは、いいがちゃんと捕まえろよ」
すると、沖田は微笑んでうなずきながら土方の部屋を出て行った。
ったく、あいつは。と、つぶやきながらも土方は仕事に手をつけはじめた。
今は、文久三年十二月も終わりのころ。
芹沢派暗殺など屯所内のざわつきも収まりだし新撰組が軌道に乗り出している時期。
その大事な時期に、花蘇芳の事件とあり土方も頭を抱えていたのである。