第二十七話
いきなりサブタイトルを変えてすみません・・・。
「今のあたしは、吉田先生のおかげであるの。見ず知らずのあたしを助けてくれたあの人に、あたしは生かされてるの」
でも・・・、最近の吉田先生が分からない。
そういうと、柚子はフッと沖田から目をそらした。
辺りは、すでに闇夜に包まれている。
その、不気味なまでの静けさは二人を包み込んでいる。
柚子が敵を果たせるように、ただそれだけのために強くさせてくれた吉田。
もちろん、柚子もただ敵討ちのために強くなろうと思った。
しかし、吉田は、
『ただの人斬り』
と言った。
敵討ちに関係のない人間も殺せと言った。
そういえば、先生は敵討ちの相手を見つけてはくれなかった。
ただ、怪しい。と思われる長州に邪魔な相手しか見つけてくれなかった。
そんな考えが、柚子の頭によぎる。
「私は、柚子さんに何の助言もできません。私だって、ただの人斬りと同じですから」
悲観にくれる柚子を見ながら沖田は続ける。
「それでも、私は近藤さんや新撰組のために剣を振るいます。私の信じる士道のため、私の信じる人達のために」
その言葉に、柚子は沖田を見つめた。
沖田の目は、自分と同じ人斬りの目。
それでも、迷いなどはなくただ、歩き続けている目だった。
「柚子さんも、信じるもののために刀を振るってはどうですか?
信じるものの答えは、もうあなたの心の中にあるのではないのですか?」
その言葉を聞いた柚子は、はっと目を見開く。
そして、スッと目を閉じた。
まぶたの裏側に見えてくる人は・・・。
「あたしの、信じてる人は、命をかけたい人は吉田先生」
ぱっと浮かんだのは、亡き両親の姿ではなく吉田の姿だった。
その声に、沖田は柔らかな笑みをこぼす。
「それがあなたの道なのですね」
それでは、明日からはまた敵同士ですね。
笑いながら言う沖田は階段を下ろうとしていた。
「まってっ」
柚子の叫び声に、振り向く沖田。
振り向く先には、もう迷いのない目をした柚子が居た。
「ありがとう。明日お礼をしたいんだけど・・・。明日は暇?」
その言葉に目を丸くする沖田。
お礼を言われるほどのことはしていない。
そういいたげな顔をしながらポリポリと、額をかいている。
「えぇ、私はいつでも非番ですから。お待ちしてますね」
その言葉を聞いた柚子はにかっと笑った。
それを見た沖田は手を振り、次こそ階段を下り屯所に戻っていった。




