花蘇芳の過去 2
長いです。
文の調整ができなくて…。すみません。
トントン、と柚子が料理をする音が聞こえ始めたときだった。
ガラガラ―――――
その音に反応した柚子はいち早く駆けつけた。
顔にはうれしそうな表情を浮かべて。
ドタドタドタドタ
「お帰りなさい、父上」
勢いよく駆けつけた柚子は満面の笑みでその戸を開けた主に抱きついた。
「あぁ、ただいま」
そういって、いつもと同じように柚子の頭をなでるのは柚子の父親である日高竜胆だ。
ごつごつとした手のひらで撫でられている柚子は本当に幸せそうである。
一頻り撫で終わった竜胆は改まって口を開いた。
いつもの優しそうな顔に似合わずいつに無く真剣な目をしていた。
「皐はどこに?」
柚子ももうすぐ八つになると言うところで母親、皐の病状や毎日帰りの遅かった父親が突然早く帰ってくるようになったなど細かな変化に気づくようになっていた。
それでも、ただ自分は両親に無駄な心配をかけたくなくて、苦労を重ねさせたくなくてまじめでいい子として過ごして来た。
文句はひとつも言わず、ただ家族といつまでも幸せに過ごしたくて。
「母上なら、床の間に。今は休んでると思うけど。呼んでこよっか?」
明るく話す柚子に竜胆も真剣な目からいつもの優しい目つきに変わっていた。
「いいや、俺が行くよ。あまり無理はさせたくない」
そういって、柚子の頭をポンポンと軽くたたくと竜胆は床の間に向かって歩いていった。
「父上、どうしたんだろう。忍びの仕事のことかなぁ。最近はいつも周囲に気をはってる気がするんだけど…」
先ほどの明るい笑顔とは違いまじめに、そして不安になりながら考えていた。
柚子の父親、竜胆は忍びである。
忍びは、契約を交わしたもののみを主とする。契約が切れればまた別の主の下につく。
つまり、数多くの人間を主とし、短い期間だけその主の命に添う。
しかし、忍びと主との関係の間は主の命令は絶対。
毎日任務があるはずなのにこんなにも早く帰ってこれるはずがなかった。
「父上。如何したの…。柚子にも言ってくれれば相談くらい乗るのに」
なんとも物悲しそうに悲痛につぶやく柚子。
そして、何を思いついたか外に駆けていくのだった。