花蘇芳の過去 1
柚子の過去の世界です。
安政三年。
まだ、幕府が大きく揺らぐ少し前。
静かな山間の町に柚子は暮らしていた。
「母上、お花を摘んできたよ」
笑いながら花を持ってきた少女は柚子である。
柚子はまだ、六つになるかならないかの幼い子供。
その柚子にやさしく微笑みかけているのは、柚子の母親である日高皐だ。
「ありがとう。柚子。あなたには迷惑かけてばかりで…」
そういいながら顔をうずくめる皐を見ていっそう微笑みかける。
皐は、ここ数ヶ月病に倒れ床に伏せっていた。
病名は『労咳』。
医療が発達した未来では治る病。しかし、この時代では発症したが最後。
血を吐き最後に死が待っている不死の病。
両親から告げられてはいなかったが、柚子もうすうすは気づいていた。
(母上はもう…。長くはない)
だからせめて、と皐には自分の笑顔を見せて安心させようと思っていた。
「何言ってんの。なんにも迷惑なことなんてないよ。
もうすぐ、父上も帰ってくるしご飯作ってくるね」
摘んできた花を花瓶に生けた柚子はその場を後にした。
その後姿を見守る皐の横には丁寧に生けられた睡蓮が飾られていた。
睡蓮って生けられるの?
などの、疑問は一切受け付けませんので 笑。
だって…。
話の都合上仕方がないんです。
勘弁してください 汗。