第十七話
「あたしさ。家族がいないんだ」
涙声も落ち着いてきた頃、柚子はポツリと沖田に話し出した。
その声は、先ほどの柚子とは違い落ち着いた声だった。
「やっぱり、私たち似てますね」
柚子の言葉に沖田は徐に口を開いた。
「私も、両親を亡くしていまして。まぁ、『みつ』と言う姉がいるんですけどね」
その声は、疾うに両親のことなど忘れたでも言うような言い方だった。
それでも、私には姉がいましたからねと笑いながら話す。
その姿を見て、柚子はまた話し出す。
「殺されたの。あたしの目の前で」
その言葉に、辺りはしんと静まった。
柚子の目は何も捉えておらずただ、自分の過去を語り続ける。
沖田も、また柚子を見つめている。
「あたしには、その日より前の記憶がないんだ」
「えっ…」
その言葉にさすがの沖田も声を漏らした。
記憶がない。自分を育ててくれた家族の。それは、つまり。その人が本当に家族だったかすら分からないと言うこと。
「沖田さんが驚くのも無理はないよね。そ。あたしが本当にあの人たちの家族だったって言う証はないの」
そういって、柚子は一呼吸を置いた。
すでにあたりは薄暗くなり始めていて寒空の中また語りだす。
「それでも、あたしはあの日命をかけて護ってくれたあの人たちが家族だって信じたい」
そういいながら柚子は空を見上げる。
空には、星がきらめきだしていた。
「あの日もこんな寒い日だった」
ヒュゥ――――。
枯葉を巻き上げながら吹く風は二人を過去へ導いているようだった。