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私しか知らない行儀の良くない姿
ひとつ残らず留めた釦、シワのないシャツ、ジャケットやパンツ丈は1センチの狂いなくぴたりと決まったスーツ姿。その行儀の良さで武装した貴方のこと、私はときに苦しくならないのだろうかと勝手に心配してしまう。
近くにいる人から容赦なく浴びせられた心無い言葉。自分自身を守るために、一寸の隙間すら許さない。私と出会ったときの貴方はそんな印象で、行儀の良い姿の思い出しかなかった。
だけどひとつ屋根の下で住むとになったら、貴方はあまりに安らかで気の抜けた顔で寝ていることに気がついた。
寝ている間だけでも、硬くて重い防具から開放されていますように。