表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

繰り返すクリスマスは強がりのせい

 私と彼はクリスマスである今日入籍する予定なのに、なぜか1ヶ月前の日付になっていた。

 何度目を擦ってもスマホの表示は11月24日だし、外は昨日までよりもちょっとだけ気温が高い。テレビをつけても会社の新聞を見てもちゃんと11月24日だ。これはどこかで見たことがある、タイムリープだ。

 だけど、タイムリープは事件や事故に巻き込まれる登場人物が、それを避けるために起こるのが普通だと思う。私にはそんな記憶は一切ない。もしかして私か彼が巻き込まれる!? と思ったけど、そんな相談を彼にしたところでドン引きされるだけだろう。これは夢かもしれないし、今月はいつもと同じように過ごすことにした。

 すると何も変わらずクリスマスイブが来て、夜眠るとまた1ヶ月前の日付になる。2回目となると、さすがにもう同じことを繰り返してはいけないと直感が警告した。

 これは「もっとラブラブにならないと結婚させてあげないよ」と、神様がイタズラしているんだろう。そこから私はサプライズでデートに誘ったり、イメチェンをしたり、旅行を提案したり、彼が好きな格闘技に興味を持ってみたり……。できる限りのことをしたつもりだ。彼も楽しんでくれてたみたいだから、毎回「もうこれで最後だ」という自信があった。

 なのに、何をやってもクリスマスイブが来たら1ヶ月前に巻き戻る。何度も何度も時を戻されていて、アイデアは尽き、疲労はピークに達していた。普段の仕事をこなしながら、どうすれば彼とラブラブになれるのかばかり考えていたけど、仕事にも支障が出始めた。もう一生クリスマスは訪れないんだろうか。そんな不安で押し潰され、私はついにクリスマスイブの夜、彼に弱音を吐いた。

「私達これから先、一生幸せになれなかったらどうしよう」

 そう言った瞬間、堰を切ったように涙が溢れ出た。私の方が年上だし、もっとしっかりしなきゃと思っていたのに、全然涙は止まってくれない。

 彼からしたら、明日入籍というタイミングでこんなにも情けない姿を見せられて困惑しただろう。なのにその日は、私が泣き疲れるまで何も言わずに抱きしめてくれた。

 目を閉じて開ける頃には、朝陽が部屋に差し込んでいた。しかしいつもとは違い、なんだか肌寒い。スマホを見ると日付はクリスマスになっていた。思えば前日のクリスマスイブは、私が初めて彼に涙を見せた日だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ