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9話 3月/0歳 父親と赤仔

父親視点あります。

御注意下さい。

区切りで主人公視点に戻ります。


2025年1/16、セリフの追加や修正・加筆を行いました。

2025/06/24、々

『前回、父親が勇者だったアレコレには実は続きが有るし語弊もある。

(なん)なら少し間違いもしていた。

その理由とは………?』


 身なりを整えて再度、今度は静かに入室したクリスは待ち切れず、いやいやっ逸る気持ちを(なん)とか落ち着かせると至って平坦に平常心で普通を装い眠っている息子を抱っこするも起こしてしまう。

娘の子育てをした事があったといっても完全には慣れていなかった。

ブランクが言い訳には、ならないと自分に落胆しそうになる。

赤ちゃんを抱き締め抱える、その手を体を見て不意に思う。


 魔獣を討伐してばかりの───

悪党とはいえ人を殺めて血生臭く赤い色に染めてしまっている僕に、この小さな生命(いのち)を抱えるだけの権利が資格が………神が本当にいるのなら許してくれるのだろうか───


 ミルフローラを愛しカイネを抱き締める度に、そして…………。

これからは息子(リンネ)を抱っこする度にクリスは、その度に思うのだろうと自嘲気味になってしまう。


「温かいな~

大丈夫、大丈夫だよ。

僕は君を落としたりしないよ。

元気だな~

元気に暴れていいんだよ。」


 自分に出来るのは見守り、絶対に傷付けさせない事、彼の人生が幸せでスクスクと育ち

危険から守る事だけだと妻を見る。


「何を訳の分からん事を言っているんだ、お前は…………。」


 ミルフローラは毎度の事のように笑っているのが、どうしようも無く今のクリスには心強くて、彼女の存在が嬉しかった。



 雑というか乱暴とも違う、早い感じが怖いのと低い声とか匂いが気に食わないのでキレ散らかして腕の中で暴れていると何かに気づく。

抱っこされてる反対側に仔犬がいる事に、そして仔犬も寝ているようだった。

その事に気付いた母も父に苦言を呈す。


「バスタオルかと思えば犬ではないか。

どこから拾ってきた?

生後間もない子に危険だろう!!」


「だ、大丈夫ッっ!

一緒に洗ってきたから、それに赤ちゃんと動物・ペットには成長や影響に良いって昔読んだ事があるんだ!」


「ん?

聞いた事も無い!

何処で読んだのだ!?」


「えっ?

え〜〜っとカイネを身籠ったって知らせを受けた時だったかな?

丁度‥‥‥この仔を見て、リンネで思い出したんだ。」


 ん?

なんか変だ、何かか違う。

視力が完全じゃないからか?

いや何か違和感が過る。

……………息が浅い、それに心音も弱い……のか?

もう少し近づきたいッッッ!!

うえぇっと落ちそう!!

助かりました父!

あっ、(あたま)が3つある!?

この仔犬、ケルベロスか!?

この世界にはケルベロスが存在してるのか!!

ってそうじゃない!

やっぱり変だ。

呼吸が浅いのも、そうだが眠っているからにしては奇怪(おか)しい?

弱いとかのレベルじゃなく呼吸が変なんだ。


 確かに今は夜だから寝てるってのもあるだろうけど挙動に表れてる。

通常の動作じゃない、ツラいんだな!!

これは違うぞ、ヤバい奴だ!

布は軽く巻かれてはいるが体温調節云々以前の問題だ。

心音が弱いのも子供・赤ちゃんなのが理由じゃない!

これだけは使いたく無かったがっ、くっ仕方ない──《筋力補助》!!


 前世、俺は賢者と称される魔法使いだった。

この身体に生まれ変わってからも乳母や使用人、それこそ母の前ではやらなかったが‥‥‥‥‥‥時々使ったりしてたかもだけども。

もはや関係ない!!

魔力や魔法が使えるかの確認や訓練も真夜中なんかに隙を見つけては怠らなかった。

死なせるか!!!


──《視力魔力強化》と《増幅》!

これで赤子のデバフを相殺できる。

このケルベロス、やはり産まれたばかりだ。

最悪、1日と経ってないかも知れない。

栄養失調か?

でも母乳を飲んでないだけが原因じゃないはずだ。

どちらにしろ不味い!!


「これは!?

魔力反応!!

リンネ!?

(きみ)なのか!」


 くそ、腕の中じゃ分からない!!

父親うるさいぞ。


「フライの魔法だとッ………。」


 空中飛行と空宙停止を維持すると俺とケルベロスを浮かせる。

アカカ、精霊たち手伝ってくれ!!

魔力で形成した半透明な魔力の手を仔犬に潜らせる。

内臓物や身体の構成を確かめていく。

コレだ!

やっぱりだッ!!

この仔犬は本来は三つ子だったんだ。

それが母体にいる時にエラーを起こして多頭犬として誕生してしまったんだ。

それが要因なのか魔力が不安定になっている。

そのせいで仔犬自体が危うい。


 これを俺は直感で感じ取っていたんだ。

そして母犬はその姿に驚いたか何かで放置したのを父が見つけて持って帰ってきたって所だろう。

でも、このままじゃあ、この仔犬は死んでしまう。

ヤバいぞ!

本当にヤバい!!

ん、心臓の横に魔石がある!

魔物か?

魔物なのか!?


 なら通常よりは頑丈なはず…………もう少しだけ耐えてくれ!!

この仔の魔力神経(かいろ)と全身に魔力と回復魔法を施し続ける。

その(かん)、アカカは仔犬を浮かせててくれ。


「神聖魔法を介さない光魔法に依る回復魔法だと!?」


 これは単なる治療じゃない!

常に治癒を掛けながら体内構造を正常化させないといけない。

それも迅速にだ。

じゃないと、このケルベロスが持たないっ!!


「リンネ、何をぉ!?

今、下ろしてやるからね」


「待て、リンネはコヤツを助けようとしている。

無意識なのか…………。

それとも………………流石、余の子だ。

改めて見てみれば魔力路が(だま)って淀んでいる。」


 外野がうるさい、って集中しろ。

今はそれどころじゃない!

一刻を争うんだ。

俺は魔力神経を慎重に、でも急いで何とか(ほぐ)し正常常態に全身に行き通らせる。

ケルベロスは吐血し体内でも血を流し苦しそうになる。

ヤバい、急変だ!!

回復魔法を急ぐ、アカカ達も手伝ってくれて何とか容態が安静に戻る。

これで一段落だ。

でも危険なのは変わらない。

これで終わりじゃない。

ここで止めると問題の解決にも成らない。

このままでも仔犬は助かり生きてはいけるだろう。

でも、それは長くて数年に引き伸ばしただけで根本的な処置を蔑ろにしているに過ぎない。


 だが今の俺には分離は技術的にも状況的にも不可能だ。

せめてもの可能性は1つの体に三つの命を共存共生、融和させる事だ。

何時訪れるかも分からないタイムリミットと俺の限界に怯えながら俺は腕と魔力を動かし続けた。

体内の不要な物や多い物を切除して足りない部位・臓器は魔力で複製、形を本来の姿にしたりと大汗を垂らしながら体を止めない。


 前世の賢者の経験と現代の頃の知識が重なって魔法がこんな所で活かされて来るとは────でも、まだだ!

もう少しだけ頑張ってくれ。

堪えろ!

耐えてくれ、死ぬな!!

しかし仔犬が吐血する。


「回復魔法は任せよ!」


 えっ母!?

ありがとうございます!!

繊維や筋肉を接合させて血を流し過ぎてる。

血が足りない!!

俺のを輸血させるしかないのか?

拒絶反応は、……………魔物なら大丈夫かな?

…………………………………よしっ、いけた!


 あとは今のうちに魔石に魔力を流して体力を回復させてっと。

再度全身を確認して~……………うん問題なし!

完了だ。

よし息が安定してきた。

元気に成ったのか仔犬は、か弱くも一声、鳴いたと思ったら俺の(ほっぺ)を舐めてくる。

元気になったと安心して俺は貧血や集中力が尽きて落下していた。



「おっと!

リンネ‥‥‥ミルフィー!」


「うむ。

体内の魔力循環も正常化している。

これはどうやら、………まさかな。

先祖返りや隔世(覚醒)遺伝、その類いか。」


「そうじゃないよ!!

リンネが凄い熱だ!!!」


「なにぃ!?

なんだとッッ、しまった!」


 朝に爽やかに目覚めたら俺を見下ろしている姉カイネが泣き出して乳母やメイドさんが母や父、医者 (神官)を呼びに戻ってきて大変だった。

なんか有ったの?


 どうやらケルベロスの手術が終わると同時に俺は気絶してしまったらしい。

1日寝たかな~ぐらいだったけど周りの話しを聞く限りで集まった情報から総合すると俺は高熱を出したりと1ヶ月間も寝込んでいたようだった。

でもその実感が無いんだよな。

生死を彷徨い危険な状態でも有ったらしい。

だから皆、あんなに大騒ぎだったのか。


 最初聞いた時は1週間と聞き間違いしたのかなとも思ったが1ヶ月だったとは。

マジかよ。

そりゃ、姉も大泣きするわな。

体調も戻って全快だが体調不良になるのさえ1ヶ月間とはエルフの気長な長命種的、時間の流れには驚かせられる。


 寝込んでいる間に俺は子供部屋から母の自室に移動されられたようで俺が目を覚ました時は丁度、なんか重要な仕事をしてたらしく隣の執務室に居たようだった。

大きい屋敷ってか城みたいだし貴族で当主っぽいので当地系の関連で何かの緊急案件で、一時的に席を外していたとカイネが俺を撫でながら俺を嫌ってないよと言っていた。


 いやでも客観的に見れば赤ちゃんがアブ~とかダブ~って言いながら仔犬に天井近くで浮遊しながら奇っ怪な事をしていたら気味悪がっても、おかしくは無いんだよな。

良い両親で良かった。

両親と言えば父、クリスだったかな?彼は勇者らしいのに傲慢でもインチキ臭くも無ければ偉そうでも無くて爽やかイケメンの好青年で親切な優しい父親だった。

苦汁を舐めさせられたきた歴代2人の勇者が最悪過ぎて勇者と聞くと偏見を持ってしまっていたようだ。

反省m(_ _)m


 母ミルフローラに朝ご飯(おっぱい)を貰いながら考え事をしていると俺の頬をペロペロしてくる奴が現れる。

おい、くすぐったいって~


「おい()さぬか、パピコ!」


 優しい口調で止める母に、‥‥‥‥ってぇ!?

えぇぇぇぇぇぇ!?

パピコ!?

パピコぉぉぉぉお!!??

ケルベロスぅ~!?

お前ってば、パピコって名前になったの?

現代のアイスの名前と、一致したのは偶然?

偶然なのか!?

………………まぁいいや。


 おいでパピコ!

ミルフローラに頬を拭かれながら俺はパピコを抱き締めた。

ベッドには雛やココ達も眠っている。

どうやら俺の眠っていた1ヶ月間、コイツも、一匹(ひとり)で寂しい思いはしなかったようだ。

まぁそれが無くてもカイネやシュヴェルト達もいるもんな。

にしてもコイツ、俺から離れないんだけど?


ケルベロスの名前、パピコですが死んでしまったミニチュアダックスフンドの名前なのですが法的にダメな場合はパミコとかに変更予定です。

あっ、注意点、作中のパピコは犬種、ケルベロスなのでミニチュアダックスフンドではありません。

考え中です。

コーギーかダックスフンドで悩み中( ̄~ ̄;)

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