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31話 魔人の伝説編 (6)

 サム・マルティン。

彼は之郎達より数年前に召喚され、持ち前の腕力からくる暴力とカリスマ性。

それと少しの話術で召喚される前と変わらず、いや依然よりも高い地位に君臨していた。

サムはもう田舎ギャングの更に下っ端組織のリーダーとして上を気にしながら威張り散らしているだけの、お山の大将ではなかった。

異世界の実験体達の1番上、頂点に立ち、先導する彼には目映い素晴らしい未来の椅子が用意されていた。


 彼は今、王や神のように自分のする事が許され何をしても罪にもならないサムが命令すれば誰が、その通りに行動する世界にわを堪能していた。




「ふざけやがっ───」


 その次の言葉は言い終わる前にサム・マルティンは壁に穴を作り場外に消えていた。


 サムの誘った笑いは沈黙に変わり之郎がリンダに近づくも誰一人として動く事をしなかった。


「……脈が無い。

体温も冷たい。

殺したのか。

‥‥‥‥‥‥‥‥殺したのか!!」


 静かに、しかし確かに之郎は激情に支配されていた。


「ここは別の世界だ。

地球じゃない。

でも人の命は同じだろう?」


「お前が言ってんじゃねーよ!

てめぇがジョンを殴ったからこーなってんだろがよぉ!!」


 ハオの言葉に上着をリンダに掛けて立ち上がり睨む。


「なんだよ!?

なんだよ、その目!!

やるのかよ!

えぇ!やるってのか!」


「…………そうだね。

僕が悪い。」


「だろうが───」


「でも君達はもっと悪い。」


 見える之郎の腕は毒のよう怪しく水に絵の具を落としたように動めく。

片方が破けた裸足みぎあしも同じように変色したように毒毒しかった。



「善と悪、そんな殊勝な事を言える程、君達も僕も正しい行いを‥‥‥‥正しい行動をしてきてたのかい」


「ごちゃごちゃと五月蝿ぇ〜んだよカッコ付けてんなよオッサン」


「リョウスケ!」


「調子乗ってんのかよ、オイ!」


 鷲尾リョウスケが飛び出す。

その両腕はドラゴンのように鱗に覆われ首や顔にもチラホラと鱗に成り眼球もドラゴンなように鋭くなり怪しく光りだす。


「そうだ、やっちまえ!!」


 リョウスケに続くように、一斉に皆が動き出す。

先に飛び出したリョウスケは凄まじい速さで之郎の所まで来ると飛び掛かっていた。


 床にポタリっと血が1滴垂れる。

指を伝い2滴、3滴と止めどなく赤く染める。

ニヤリとするハオと勝ちを確信したリョウスケが笑う。

リョウスケの腕は之郎の腹部を貫通していたからだ。

しかしもう、一方の腕は之郎に掴まれていた。


 リョウスケは優勢を確かな物にしようとして苛つきながら、その手をほどこうとクチから火を吐き之郎の顔面に命中させる。

プスプスと煙や煤が出来るが微動だにしない之郎に苛付きながら叫んだ。


「死に損ないが離しやがれ!!」


 足で蹴ろうとしてリョウスケはビンタのように叩かれクチと頬は抉れ倒れる。

リョウスケは呻き声と顔を触ろうとして血がボトボトと溢れていて片腕が無い事に気付く。


 リョウスケの片腕は依然と之郎の腹に刺さったままだ。

之郎はその片腕を取り出し、その勢いで吐血し腹部からも大量の血が流れる。

悲鳴を上げながらリョウスケは自身に起きた事と之郎の行動にパニックを起こし叫び声の後に気絶していた。



「リョ、リョウスケっ!?

ッーーー糞!」


 リョウスケが負けた事にハオは逃げようと咄嗟にしたが後ろにいるサムの部下達が邪魔をして、そのまま之郎へと到達するしか道は残っていなかった。


 ハオは野太い尻尾を出現されると伊駒 蕾水を脅す際にリンダを拘束したように之郎に巻き付け捕まえようとした。

腹部はリョウスケの攻撃で大損傷を負っている事、吐血している事から充分に動けないと自分に言い聞かせたが嫌な予感は命中する物だ。

既に腹部の傷は再生されていて血の跡と破れた服を見つけてしまう。


「うぎゃッ!?」


 ハオの尻尾は糸も容易く掴まれ潰される。

そしてハオの視界は真っ黒に。ブラックアウトのように包まれる。

之郎の左口角が悪魔のように曲がる。

右腕が黒く変化し膨張したように大きくなると迫る。

ハオ達を殴り吹き飛ばされていた。

後続を巻き込んで壁に激突する。

だが無傷の者達は動きを止めた者や変わらず之郎に飛び掛かろうとする者達に分かれていた。


 膨張した之郎の右腕は元のサイズに戻るも血玉ちたまりがブツブツと至る所に現れ次の瞬間には血が吐き出し腕は弾けて断面の肉と骨が垂れて見える程、痛々しい。

その隙に群がったサムの部下達に下敷きにされてしまう。


 壁や天井に、ぶつかり群がった者達は、一様に倒れてゆく。

平然と立ち上がる之郎の腕は見事に再生しており、その血色の右腕でクチを拭い血の痕を残してフッと笑う。


 ───熱い、熱い。

痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱い熱い。

スカッとする。

もっと殴りたい。もっとだ。

もっともっと、もっっと、もっとだ!!

もっと!

でも、あれ?

俺は…………………僕は誰だ?

なんだっけ?

ん?この雄叫びは何だ?───


「うが、うごご、うおおおおおおおおおおお!!!」


 両腕を禍々しく毒毒しくされて膨張した巨人のような手で床に指を入れて罅を伸ばしながら床だけを持ち上げると倉庫の半分と室内にいる人達ごと地面に突き落とす。


 瓦礫に突っ伏して倒れる。

両腕は弾けて血が瓦礫を汚し広げる。

瓦礫の下や中から声がする、それはサムの部下達である彼等の存命者らだ。

1つの建物が崩れる騒音に駆けつけた兵士達と、彼らが上げる声で辺りは、一層に煩くなる。

あれから数十分が経過して尚、之郎の両腕はまだ再生していない。


 瓦礫に張り付いた歪んだ時計の針は丁度、7時を指した所で壊れて時を刻むように止まっていた。


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