2話 12月/0歳 転生と家族
執筆開始当時は空前怒涛のエルフブームが到来していた(作者自身にね)
前話ありますので御注意下さい。
令和7年 1月8日に加筆・修正を行いました。
2025/06/21 々
あれから数日が経ち視力もそれなりにでは有るが見えてくる。
光のみ、と人の輪郭さえ判断付かないながらも状況把握で情報も集まってくる。
言語は俺の知っている物ではあるが勿論、日本語では無い。
言わずもがな地球とは違う以前と同じ異世界だ。
しかし1つだけ驚いたのは聞こえてきた言語がエルフ語だった事だった。
前世って言うにはまだ抵抗と違和感が少し残ってはいるのだが前世でも数度しか会った事のないエルフが使っていたエルフ語と同じなので、そこからも此処ではエルフ語のみが聞こえる事からエルフの国と早々に結論付けた。
そして籠や柵、ベッドのどれもが豪華で厳重な事やメイドも常にいる事から今世は貴族っぽい。
だったら良いな〜。
「リンネ様、朝ごはんの御時間ですよ~
持ち上げますね~」
笑顔で見下ろす若い女性に抱っこされて赤子の各々をされる。
3度目の人生とも成れば恥ずかしさ等は感じない。
……………………嘘である。
恥ずかしい。
それでも俺は赤ちゃんになっているのを受け入れるしか無い。
オシメを代えられて寝かせられるが不意の背中の感触に驚いて泣いてしまった。
ごめんなさい、この体は敏感ってか感情に正直なんだ。
許して下さい。
それから乳母に美味しい食事を頂いた事もあり満腹から眠ってしまった。
今は昼過ぎ頃だろうか?
窓のカーテンを揺らす風と陽射しが心地いい。
‥‥‥‥うん、やはりと言うべきか身動き取れず寝返りさえ出来ない赤子は暇だ。
何もする事が無い。
メイドの人も昼寝してるようだ。
物思いに耽るかな。
毎日、それこそ数時間置きにメイドが交代している事からもそれなりに裕福なのは明白だろう。
ならば…………死線とか戦場は、もう潜りたく無い。
干し肉と硬い|黒(B)パンに魔法で生成した水だけの腹を満たす事のみ、を目的とした楽しくない食事なんてのは、もうゴメンだ。
そして決意した!
今世じゃあ絶対に!
ぜったいに戦うのは嫌だって言う事だ!!
でもまぁ〜そのためには…………どうすればいいんだろか?
その時だった。
俺の居る部屋の入り口が開かれフワリ~と懐かしいようで安心する良い匂いが鼻腔に届いたのは………。
慌てて身なりを整えてイスから起立するメイドさん。
ゾロゾロと後ろに供回りなのか大勢を連れて、あっ交代の人以外の使用人さんとかも居る。
ん?子供もいるな~まずいな~
子供は怖い。
何をされるか分かったもんじゃないからだ。
うわっ!?
うわわわ!
おほ~その安心する匂いを発生させている女性に抱き抱えられて、この女性が母親なんだと無意識に俺は確信した。
「うむ。
リンネは特に弱ったり発症もせず問題無く元気のようだな」
なんて言ってやがる。
やっぱり!
でもな~俺らぁ~知ってんだぞ?
俺を産んだ直後に 〔もう子は産みとう無い!!
痛いだけだと言っておろうがぁ!!!〕 って言ってたのを!!
って言うか、かれこれ産んでから俺目算的に1週間は経ってるんだけど!!
それまで1度も来て無かったじゃん!
薄情者めぇ!!
「今までは寝ている時や真夜中にしか来れなかったからな。
起きて目を開けて見詰められるのは新鮮ではあるな」
あっそうなの?
失礼しました。
「母上ぇ~この子がワタシの弟?」
母親は声のする人物である少女の目線の高さまで俺を下ろすと頷いてキリッとした雰囲気から、一瞬だけ母親の顔を見せた。
そっちの表情のが落ち着くのにな~
興味有りげな少女が伸ばした指を…………しまった。
手を出されて、うっかり掴んでしまった。
嬉しそうに笑い、お姉さんですよ~と語り掛けてくる。
「‥‥‥‥そうだな、まだ不安な時期ではあるがカイネの成長のためにもリンネとの接触を許可する。
近衛との行動・入室をするようにな。
抱える時は頭を、しっかりと支えるのだぞ。
首も、すわっておらんからな。」
言うと母親は家臣なのか家来なのか、それっぽい人達を引き連れて出ていってしまった。
貴族なのは確定だけど君主?
女当主とかなのかな?
「リンネェ~
カイネが、いっ~ぱい!
お世話してあげますからね。
わぁ~リンネ、温かいね~
甘い匂〜い」
残された姉らしき少女とその世話係・俺の世話係のみになった室内で少女が俺の頬っぺを軽く押したり、抱えるのをメイドが指導と忙しなくなり、ある意味で恐怖で緊張している内に寝てしまっていた。
俺の母親ドライだ~
その日から姉、カイネは毎日のように俺の元にやって来ては姉である実感と母性に目覚めたのか俺の面倒を焼きたがるので落とされないかとか。
目を突つかれないかとかヒヤヒヤしていた。
何より赤子生活は疲れる。
意思表示が泣く事しか選択肢が無いからだ。
特に、お風呂は体力的にも疲れる。
まぁ世話してる乳母さんとかメイドさんも大変だろうけどね、一時も気が抜けないんだろ〜から。
そんな昼頃、乳母が椅子に座りながら、うたた寝を始めたので魔力を練っていた。
する事がまるで無いので暇だな~と魔力を練ってみたら、赤ちゃんでも出来る事が分かってからは早かった。
ここ数日は暇を見つけては魔力錬成をしている。
すると窓に小さな鳥が、ぽつんと居るのに気付いた。
コチラを伺っているようで赤ちゃんの俺が魔力を練っているのが不審なのか時折、首を傾げて鳴いたりする。
たまに嘴から小さい火の玉吐いたりしててファンタジーだ~って思って微笑ましかった。
そんな事が数日続き俺は人間、あっ間違えたエルフの赤ちゃんが魔力を練っているのを鳥越しに見詰められる珍しい日常が出来上がっていた。
赤ん坊の体では魔力を身体補助より体外に出して空中で無色透明な属性を帯びていないままで形を変えて練った方が楽だったので色んな形、四角や三角、星形や動物にして遊びながら暇を持て余しつつの日々。
夕方頃、カイネが自室なりに戻り、ゆっくりと昼寝?夕寝でもするかなと思っていると立ち代わるように母親が入ってきて部屋から俺以外を退室させた。
俺に緊張が走る。
俺しか居ないから余計に怖い!!
何をされるのか汗を掻いていると何か甘い匂いがして、なんだろう~と考えていると本能なのか俺の体は知っているようで既に吸っていた。
ウマイ!
なんだコレは!?
世界で1番美味しい!!
世界1!!
母スゴイッ!!!!
背中を、こぎみ良いリズムで優しく叩かれて寝入りそうになる。
眠たくなってきたな~
姉のカイネがいる事だし育児に慣れてるんだろうな~
もしかしたら他にも兄姉がいるのかも知れない。
そうだ、俺ってば眠たかったんだ~
◇
物音というか轟音?
なんか五月蝿いのと酷く粗く下手くそに揺さぶられている気がして目を覚ます。
「へ?
うギャあァぁぁぁぁぁァァァァァ!?
ウゥバっ、フバァウゥバァァァァアア!!!」
視界にはドアップ近距離で鳥の顔があって俺は反射的に泣いてしまう。
大泣きも大泣き。
初めてこんなに有らん限りに泣いた気がする。
力一杯に暴れて叫んだ。
「うばぁ、ウワァ!?
アウアウアウアーーーー!!」
やっぱダメだ、鳥の顔こわっ!!
窓や壁は壊されて夜の冷たい風が室内に入って来ている。
寒い!!
幸いオムツやパジャマ、俺を包むように柔らかい毛布が巻かれてたから良かった物の、って良くねぇ~や!
なんだコイツ!?
なんの用ーだ!
うがーーーー!
「リンネーーーーー!!
リンネ様ーーー!
キャッ!?」
乳母さんは無傷だ。
良かった。
蹲りながら俺を呼んでいる。
その周りには気絶している兵士達。
彼等も、やはり目立った怪我は見当たらない。
「何が有ったか!?」
音、うるさかっただろうし警邏の騎士達がやってきたのか室内を見るなり剣を抜く。
俺は赤子の体では何も出来ず怖くて大人しくするのが精一杯だった。
そこに母親の匂いが風に乗ってきて俺は声を張り上げた。
本能から考えるより先に体が親に助けを求めたのかも知れない。
そして母親の存在に安堵さえしてしまった。
しかしそれが逆効果だったのか巨大鳥は、一鳴きすると部屋に特大の火の玉を放出して俺を咥えている状態で羽搏くのだった。
◆
ミルフローラは部下からの知らせで息子の部屋に急行する。
そこには魔物のファイアーバード種が息子リンネを咥えて宙ぶらりん、に正に今、飛び立つ瞬間だった。
彼女は咄嗟に魔法を発動しようとして手を止める。
リンネに直撃してしまい兼ねない。
そして闇夜では避けられてしまえば反撃で町にも被害が広がってしまう事を瞬時に巡らせるとファイアーバードにマーキングを付けるだけに留まる事しか出来なかった。
「パフェア!
無事か、何が起こった?」
「お姉様、突然に鳥の魔物が現れてリンネ様を拐っていったのです。」
「そうか、………すまなかった。
ゆっくり休め。
ありがとう!」
「申し訳ありません、リンネ様を…………。」
「おい、おい!?
気絶?
‥‥‥眠っただけか。
ん、なんだ。」
「はっ、失礼します。
ミルフローラ様、侵入経路が判明しました。
北の山からの主クラスのモンスターの可能性が高いとの事です。」
「なんてことだ。
此処に至急、騎士を集めろ!!
問題ない。
奴に印は付けてある、急げッ!!
救護班、魔術師を!
治療と警備に回せ!
余は出る!
後からでも連いて来い!!」
渡された大剣を片手に持ち上げて背中に下げるとミルフローラは破壊された壁から城外に飛び出す。
刹那に衣服が武装に変わり気流を無視するように闇夜を魔力と魔法陣が照らし空を翔る姿は、まさに美麗にして優雅の一言に尽き夜空に聳える月さえも嫉妬された。
エルフの成長と年齢設定に苦戦苦難中。
どうしたらいいかな~
そして次回は少しシリアス回になるかも?
次話も1時間後からになります。