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【完結】抗竜記 ~発明少年、竜世界に抗う~  作者: 敷知遠江守
~西府ロハティン~

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第38話 夢幻

登場人物

・ドラガン・カーリク…人間。ベレメンド村の発明少年。

・アリサ・ペトローヴ…人間。ドラガンの姉。ごく普通の常識人。

・セルゲイ・カーリク…人間。ドラガンの父。竜車の御者。死亡。

・イリーナ・カーリク…人間。ドラガンの母。畑を手伝っている。

・アルテム・ボダイネ…人間。ドラガンの友人。

・ナタリヤ・ボダイネ…人間。アルテムの妹。

・ハラン・ゾルタン…ドワーフ。ドラガンの友人。

・ハラン・ドミニク…ドワーフ。ゾルタンの父。桶屋。

・ロマン・ペトローヴ…人間。アリサの婚約者。村長の息子。死亡。

・アナトリー・ペトローヴ…人間。ベレメンド村の村長。

・タルナメラ・クリシュトフ…ドワーフ。ベレメンド村の首長。

・イーホリ・ザバリー…人間。教師。ドラガンの担任。

・モナシー…人間。工務店を営んでいる。

・ラスコッド・ザラーン…ドワーフ。冒険者。死亡。

・ヘオリー・マイオリー…人間。冒険者。

「どこ行ってたんだよ、ドラガン! 皆待ってるんだぞ!」


 そう言ってロマンが肩をポンと叩いた。


「え、ロマンさん?」


 どうして?

ロマンさんは死んだはずなのに。


「お前が何か作ったって聞いて、村の皆、楽しみに待ってるんだぞ」  


 ロマンはドラガンの肩に手を置き、どこかに連れて行こうとしている。


 ここはもしかしてベレメンド村?

間違いない!

あの井戸はうちの近くのいつもの井戸だ!

ただ水汲み器が付いていない。

壊れて撤去されてしまったのだろうか?


 近所のおばさんたちも集まっている。

ペトローヴ村長もいる。

モナシーさんもいる。

ドワーフのタルナメラ首長もいる。


「おう、ドラガン! 今度は何を作ったんだ?」


 木陰に腰かけた父がドラガンを呼び止めた。


「父さん! 母さんと姉ちゃんは?」


 ドラガンにそう尋ねられセルゲイは、周囲をキョロキョロと見渡した。


「イリーナもアリサも、姿を見ないなあ」


 ドラガンは状況が飲み込めず辺りをキョロキョロしている。

井戸を離れ村を散策しようとすると、ロマンと父からどこに行くんだと聞かれた。

とりあえず村の中央広場に、そう言うととぼとぼと歩き出した。


 広場では三人のドワーフがアクアビットを飲んで歓談している。

ラスコッド、ゾルタンの父ドミニクと鍛冶屋のタイマー。


「おう! ドラガン坊やないか」


 ラスコッドが気さくに声をかけてきた。


「ラスコッドさん! ゾルタンはどうしたんですか?」


 ラスコッドはドミニクとタイマーを見て首を傾げた。


「ゾルタン坊の姿は、まだ見とらんなあ」


 ラスコッドの声にドラガンは、胸の奥から何か熱いものが込み上げてくるのを感じた。


「ラスコッドさん、僕……」


 急に泣き出したドラガンにラスコッドは心配になり、焦って困り顔で背中を撫でている。


「どげんしたと? 何で泣きようと? どげんした? どっか痛かとか?」


 ドラガンが泣きながら首を横に振ると、ラスコッドは非常に困った顔をしてドラガンの頭を撫でた。

そんな姿を見て、ドミニクとタイマーもかなり困惑した顔をしている。

三人は泣いているドラガンを宥めセルゲイの元に向かった。


 泣いているドラガンをセルゲイは優しく抱きしめ、ドラガンが幼い頃のように頭を撫でた。

それでも泣き止まないと、セルゲイはしゃがみ込んでドラガンの顔を覗き込み、どうしたんだと尋ねる。

なぜ泣いているのかドラガンにもわからない。


「ごめんなさい……」


 やっと口をついた言葉がそれだった。


「そうか、今回のやつは、まだ完成してないんだな?」


 セルゲイは、そう言って笑った。


「そんな事でそんなに泣く必要なんか無いさ。ちゃんと完成した時に見せてくれれば良いから」


 そう優しく言って頭を撫でた。

ロマンもドラガンの頭を撫で、泣かなくて良いと優しく言った。



 タルナメラ首長が、腹が空いたんじゃないかとセルゲイに言った。

そう言われてみれば俺も腹が空いたと、セルゲイは笑い出した。

じゃあ『ほうき星亭』に行こう。


 セルゲイはドラガンを連れて酒場に向かった。

ロマンも一緒である。




 酒場に入るとセルゲイはビールを注文し、ドラガンに何か食わせてやってくれと頼んだ。

主人は、さっきスープが煮えたところだから、まだ煮込みが足らんかもしれんと笑った。


 運ばれたスープを口に運ぶと、その温かさが体に沁み、また涙が溢れてきた。

徐々にだが、自分が何で泣いているか何となくわかってきた。

身を挺して守ってもらったのに結局倒れてしまって、申し訳なさで後ろめたいのだ。


「どうしたドラガン。何だか変だぞ? どこか具合でも悪いのか?」


 セルゲイはそう言って、またドラガンの頭を撫でた。

黙って首を横に振るドラガンに、セルゲイは、泣いてたらわからないと困り顔をする。


「僕、せっかく助けてもらったのに……」


 そこまで言うのが精一杯だった。

またドラガンの瞳から涙が零れ落ちた。


「助けてもらったって、誰に?」


 セルゲイはそうドラガンに尋ねる。

ドラガンは無言で父を指差した。


「何を言ってるのか、いまいち要領をえんなあ……」


 そう言ってセルゲイはロマンの顔を見て苦笑いする。


「あの……行商で……」


 ドラガンは鼻をすすりながら何とかそこまで口にした。


「行商? ああ、そろそろ次の行商の準備をしないといけないなあ」


 なあロマン君と、セルゲイは人の良い笑顔でロマンに微笑んだ。

ロマンも、次の行商はがっつり稼いでやりましょうなどと言っている。

それを聞いてドラガンは、また大泣きしてしまった。

セルゲイは、今日はどうしたんだと言ってドラガンの頭を抱き寄せて優しく撫でた。


 ロマンはそんなドラガンを見て、食事を取ったら帰って寝かせた方が良いかもしれないと言って困り顔をした。

セルゲイもドラガンの頭を撫でながら、しょうがない、今日は休肝日だなあと笑い出した。

タルナメラ首長は、一杯呑んでおいて休肝日も何もあるかと笑い出した。



 酒場を出るとドラガンは、セルゲイと共に家に帰った。

父にあやされながら家に帰ると、家は明かりが消え真っ暗だった。

セルゲイは燭台のろうそくに火を灯していくと、泣き続けるドラガンを部屋に連れて行った。


「どうしたんだドラガン? 何をそんなに泣いているんだ?」


 二人きりになりセルゲイは、再度優しくドラガンに尋ねた。

二人だけという状況がドラガンを少し安心させたのか、ぽつりぽつりと話し始めた。


「行商の帰りに竜産協会の奴らに襲われて、父さんたちに助けてもらったんだ」


 セルゲイは極めて真面目な顔で、ドラガンの話を聞いている。 

 

「ああ。そういう事もあったかもしれんなあ」


 そう言って涙ぐむドラガンの頭をそっと撫でた。


「だけど僕、何もできなくて……」


 ドラガンは、ぎゅっと唇を噛んだ。


「仕方ないさ。世の中そんなもんだ。おとぎ話と違って、必ずしも悪者が退治されるわけじゃないんだよ」


 セルゲイはそう言ってドラガンを諭した。

だがドラガンは、そんなの間違ってると悔しがる。


「……僕、あいつらが許せない」


 珍しく怒りを露わにするドラガンに、セルゲイは困り顔をする。


「どうしても許せないと思うなら、やり返すしかないだろうな」


 ドラガンは父の言葉に、無言でうなだれている。


「……どうすればいいの?」


「そこは頭を使うしかない。ただ闇雲にやっても反撃を受けるだけだからな」


 セルゲイがそう言うと、ドラガンは少しがっかりした顔をする。


「でも、僕、頭弱いから……」


「お前は絶対的に経験が不足しているだけなんだよ。そもそも、お前が頭が弱いわけないんだ。あれだけのものが作れるんだから」


 父にそう言われドラガンは静かに頷いた。


「父さん。僕、絶対にあいつらを懲らしめてやる」


 ドラガンは両拳をぐっと握りしめた。


「俺はできればお前には、そんな事より、もっと人の役に立つ事にその賢い頭を使って欲しいんだがなあ」


 セルゲイはドラガンを布団に寝かせると、赤子を寝かしつけるように布団をゆっくりポンポンと叩いた。

ドラガンも少しづつ落ち着きを取り戻してきたようで、セルゲイの顔を見て笑顔を見せる。



「いいかいドラガン。人に感謝される人になりなさい。いいね」


 ドラガンが幼い頃眠りに付かせていた時のように、セルゲイはゆっくりと語りかけた。


「どうしたら感謝されるかな?」


「一番は相手の悩みを聞いてあげる事だよ。そうすれば、少しの事なら目を瞑ってくれる。困った事があったら手を差し伸べてくれる」


 ドラガンは無言で父の話を聞いている。


「なぜ国王が国王でいれるかわかるかい? それはね、最初の国王がたくさん感謝されたからなんだよ。それだけ感謝というのは強力な力なんだ」


 それを良い方に使うか悪い方に使うかはお前次第だとセルゲイは言った。


「僕はみんなを守ってやりたい……」


 お前は心の優しい子だと微笑んで、セルゲイはドラガンの頭を撫でた。



 いつの間にやらドラガンは、静かな寝息をたてて眠りについている。

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