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【完結】抗竜記 ~発明少年、竜世界に抗う~  作者: 敷知遠江守
~西府ロハティン~

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第25話 配当

登場人物

・ドラガン・カーリク…人間。ベレメンド村の発明少年。

・アリサ・ペトローヴ…人間。ドラガンの姉。ごく普通の常識人。

・セルゲイ・カーリク…人間。ドラガンの父。竜車の御者。

・イリーナ・カーリク…人間。ドラガンの母。畑を手伝っている。

・アルテム・ボダイネ…人間。ドラガンの友人。

・ナタリヤ・ボダイネ…人間。アルテムの妹。

・ハラン・ゾルタン…ドワーフ。ドラガンの友人。

・ハラン・ドミニク…ドワーフ。ゾルタンの父。桶屋。

・ロマン・ペトローヴ…人間。アリサの婚約者。村長の息子。

・アナトリー・ペトローヴ…人間。ベレメンド村の村長。

・タルナメラ・クリシュトフ…ドワーフ。ベレメンド村の首長。

・イーホリ・ザバリー…人間。教師。ドラガンの担任。

・モナシー…人間。工務店を営んでいる。

・ラスコッド・ザラーン…ドワーフ。冒険者。

・ヘオリー・マイオリー…人間。冒険者。

 ドラガンたちは各々竜券を確認し顔を見合わせた。

払戻金額の札が掲げられると四人は大喜びした。


 ロハティン競竜場で売っている竜券の種類はわずか四種類。

勝ち竜を当てる『単勝式』。

三着以内に入る竜を当てる『複勝式』。

一着と二着に入る竜を当てる『連勝複式』。

一着と二着の竜をそれぞれ当てる『連勝単式』。


 ロマンたちは『初心者の強運』があるかもとドラガンに乗って竜券を購入した。

だが、さすがにそこは連勝複式で最低限の金額に止めている。

オッズは四九・八倍。

掛け金の最低は銅銭十枚であり、それが数分で四九八枚に増えたのだった。



 キマリア王国の通貨は三種類で金貨、銀貨、銅銭。

銅銭五十枚で銀貨一枚。

銀貨二十枚で金貨一枚。

金貨百枚で金行券という紙幣と両替されるが、これは一般には出回ってはいない。

日常的に『銅銭』『銀貨』などと言っているが、一応『グリヴナ』という通貨単位はある。

大体銅銭十枚あれば一回の食事代におつりがくるくらいなので、そう考えると競竜場の最低掛け金である銅銭十枚は、そこそこ高額ではある。



 やったなとロマンはドラガンの背を叩いた。

四人でニコニコ顔で払い戻しに行った。

ロマンとセルゲイは銀貨を九枚見せ、どんな高い飯も食い放題だと大喜びしている。

それを見てラスコッドがニヤリと笑った。


「セルゲイ。お前、もう少し自分ば信じんか」


 そう言うと、ラスコッドは銀貨十七枚を見せガハハと笑い出した。

ラスコッドは、セルゲイの言っていた七番の竜の竜券も買っていたのだ。

ロマンとセルゲイは、勝負師だなあと笑い合った。

そこにドラガンが帰ってきた。

ドラガンはかなり困惑した表情をして首を傾げている。


「どうした、ドラガン。買い目でも間違ってたのか? そうか、レース番号を間違えていたんだな。よくやるんだよ、それ」


 ロマンは、初心者がやりがちなミスだと言って、ドラガンの肩を叩いて慰めた。


「ううん。買い目もレース番号も合ってたんだけどね、その……」


 ドラガンは無言で手の平の中身をこっそりロマンに見せた。

ロマンは焦って手を閉じさせ、周囲をキョロキョロと見回した。


「お前、一体いくら賭けたんだよ!」


 ロマンの焦り顔にセルゲイとラスコッドも何かあったと気づいたらしい。

どうかしたのかと言って寄って来た。


「買う時に『二頭のやつ』って言ったんだよ。そうしたら、どっちが一着ですかって聞くから、十二番って言ったんだよ」


 ドラガンは自分が何か悪い事をしたような気分になっているらしい。

自分の労働の対価ではなく、何もしていないのに大金を渡されたのだ。

後ろめたさに苛まれているのだろう。


「お前、まさか、あれを連単で一点買いしたのかよ……」


 それを聞いたセルゲイとラスコッドが、ドラガンの閉じられた手の中を見た。

そこには金貨が一枚と銀貨十数枚、大量の銅銭が握られていたのだった。

セルゲイは先ほどのレースの払い戻し倍率をもう一度確認した。

連勝単式の倍率は一六四・八倍。


「『初心者の強運』とはよく言ったもんだな……」


 セルゲイは、自分の息子が思わぬ大金を掴み何ともいえない感情がこみあげている。

そんなセルゲイにロマンは、もう稼いだんだからこれで引き上げますかと尋ねた。


「何言ってるんだ! 『ツイてる時は波に乗れ』だろ!」


 馬鹿な事を言うなとセルゲイはロマンの背中を叩いた。


「よく言われる賭け事の鉄則ですね。残りは二レースですから波に乗ってみますか!」


 そう言ってロマンとセルゲイは笑い出した。


 ラスコッドはドラガンに、その金を預かってやると言った。

お前が持ってるより俺が持ってる方がスリに遭いにくいだろうと。

ロマンもセルゲイも、確かにその方が良いだろうと言い合った。

ドラガンは銅銭だけを手元に残し、残りをラスコッドに預けた。



 パドックに向かった四人は、そこでマイオリーの姿を見つけた。

マイオリーは、ああでもない、こうでもないと、ぶつくさ言ってパドックを観察している。

ラスコッドは苦笑いし無言で首を横に振った。

ロマンたちも苦笑いしマイオリーに関わらないようにした。


「どうだ、ドラガン。さっきみたいに睨んでくる竜はいるか?」


 セルゲイは、そうドラガンに聞いたのだが、残念ながらこのレースではそんな竜はいないらしかった。

セルゲイが様子見と言うと、ロマンもラスコッドも様子見する事にした。


 さっきの払い戻しで何か食べに行こうとロマンが言うと、そうしようと言って四人は食堂通りに行き、ベリーのパイとコーヒーを購入。

空いた席に座って甘食を頬張った。


 コーヒーを口にしたセルゲイは、お金が手に入ったというにどこか晴れない表情をしている。

それにロマンが気付き、どうしたのかと尋ねた。


「いやあ。イリーナに何て言って誤魔化そうかと……」


 セルゲイの言葉にロマンも食べる手をぴたりと止める。


「義母さん、競竜場に行ってる事、知らないんですか?」


 父の口から突然母の名が出て、ドラガンも、しまったというような表情をしている。

 

「言えるわけないだろそんな事! バレたら小遣い抜きだわ。そういう君はアリサには言ってるのか?」


「……言えるわけないじゃないですか」


 セルゲイとロマンは、二人で大きくため息をついた。

ドラガンまで困り顔をしており、ラスコッドは困惑した。

まるで優しさの塊のように見えるイリーナさんとアリサさんだが、一歩家に入ればそんなに怖いのかと。


 セルゲイは、素直に競竜場の話をして、何か買って帰ってご機嫌を取るのが最良かなと苦笑いをした。

どういうわけか、隠し事をしてもイリーナにはすぐにバレてしまう。

バレれたら怒られる必要の無い事でも怒られる。

そうですねと、ロマンもアリサを思い出し渋い顔をした。


「でもドラガンのはどうするんです? あれ、ちょっと競竜場で儲けたと言って信じてもらえる金額じゃないですよ?」


 ロマンはセルゲイと二人でドラガンをチラリと見てため息をついた。


「だから参ってるんだろ……」


 セルゲイが額に手を置き困っていると、ラスコッドが、このまま預かっておいてやっても良いと言って笑った。

多少飲み代に消えてもそこはご愛敬だと言うと、セルゲイは爆笑だった。

だがそれが良いだろうという事になった。



 コーヒーを飲み終えると、四人はもう一度パドックへと向かった。

まだ周囲に人はまばらで、最終戦の竜が静かなパドックをカポカポと音を立てて歩いている。


「四番が睨んだ……」


 ドラガンの言葉に、セルゲイたちは慌てて出走表を確認した。

この竜かと三人は過去の戦績を見て唸っている。


「……九番も睨んできた。睨んできたのはその二頭」


 ドラガンの言葉に三人は耳を疑った。

出走表を見て大きく動揺した。


 十四頭立てで四番の竜は三番人気。

三番人気までは差の無い倍率である。

一番人気から三番人気の三頭の実力が抜けている。

そんな感じの倍率であった。


 問題はもう一頭の九番の竜。

この竜が十三番人気だったのである。

もしこの二頭で決まれば配当金はさっきの比ではない。


「まあ遊びだと思って、裏表で一口づつ買ってみますか?」


 ロマンは若干顔を引きつらせセルゲイとラスコッドに言った。

ラスコッドも、夢を見るなら面白いかもしれないと笑い出した。


「倍率考えれば、表三口、裏一口が妥当じゃないか? それくらい余裕はあるんだし」


 セルゲイの発言にロマンは、賢い買い方だと頷いた。

 

 四人はパドックを見に来た観客の波に逆らって竜券売り場へと向かった。

買い目の印を押してもらい竜券を購入すると、再度先ほどの観覧席へと向かった。



 ハズレてもこの先数年、行商の期間中は旨いものが食えると四人は笑い合っている。

今日は一枚肉を食べに行きませんかとロマンが言うと、ラスコッドが良いねえと乗ってきた。

セルゲイも一枚肉なんて久々だと頬を緩めた。


 暫くすると周囲から歓声があり、発走時刻が迫っているらしい事を四人に知らせた。

十四頭中半分が枠に収まったところで、例の九番の竜が枠入りを嫌がった。


「これ、九番はかなり気性が悪いんですね。成績もかなり波がありますし」


 ロマンの言葉にセルゲイは、だからドラガンを睨んだのかと納得した。

つまりドラガンに何か能力があるわけじゃなく、単に気性の問題だと。

恐らく先ほどのも、気性の悪いさが邪魔をして成績が低迷していた竜が、たまたまそれが良い方に出ただけなのだろう。



 何とか枠入りが完了し綱が降ろされ発走となった。

だが、九番の竜は他の竜からかなり遅れての発走となった。

正面右手にその光景を見たセルゲイたちは、まあ、そう上手くはいかないよなと笑い合っている。


 先頭集団は先陣を争うように抜き合いをしている。

その集団から少し離れて数頭が固まっており、後方集団の先頭に四番がいる。

最後方でぽつんと九番が追走している。


 四コーナーを回った段階で、先頭集団は完全にバテていた。

それをあざ笑うかのように、外から四番が伸びてくる。

坂を登り切り四番が独走かと思われたところで、一頭大外を豪快に追い込んでくる竜がいた。

例の九番の竜である。

ゴールまで残り少しというところで二頭が並ぶ。

そこから九番の竜が一気に四番の竜を抜き去ったのだった。

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