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【完結】抗竜記 ~発明少年、竜世界に抗う~  作者: 敷知遠江守
~西府ロハティン~

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第21話 露店

登場人物

・ドラガン・カーリク…人間。ベレメンド村の発明少年。

・アリサ・ペトローヴ…人間。ドラガンの姉。ごく普通の常識人。

・セルゲイ・カーリク…人間。ドラガンの父。竜車の御者。

・イリーナ・カーリク…人間。ドラガンの母。畑を手伝っている。

・アルテム・ボダイネ…人間。ドラガンの友人。

・ナタリヤ・ボダイネ…人間。アルテムの妹。

・ハラン・ゾルタン…ドワーフ。ドラガンの友人。

・ハラン・ドミニク…ドワーフ。ゾルタンの父。桶屋。

・ロマン・ペトローヴ…人間。アリサの婚約者。村長の息子。

・アナトリー・ペトローヴ…人間。ベレメンド村の村長。

・タルナメラ・クリシュトフ…ドワーフ。ベレメンド村の首長。

・イーホリ・ザバリー…人間。教師。ドラガンの担任。

・モナシー…人間。工務店を営んでいる。

・ラスコッド・ザラーン…ドワーフ。冒険者。

・ヘオリー・マイオリー…人間。冒険者。

「頼む! 借金は払ったことにしてくれ!」


 竜車の中でマイオリーは、情けないことにそうドラガンに頼み込んでいた。

ドラガンも、別にお金を払ってもらおうなんて全く思っていない。

だがラスコッドは、賭けというものは当初の約束が果たされて初めて成り立つものなんだとドラガンに説明した。

ロマンもそれに賛同だった。

競争中の落竜で掛け金が払い戻されると明言されているのに、払い戻されなかったら賭けた人は暴れだすだろうとロマンは説明した。


 マイオリーの順番で弩が壊れたのはたまたま運が悪かっただけと、ドラガンはマイオリーを庇った。

だがラスコッドは運も賭けの重要な要素なんだと譲らなかった。

それも含めての賭けだったのだから、そこに温情を見せるのは賭けへの冒涜だとロマンも譲らなかった。


 結局、この先の滞在費の問題があるから村に帰ったら支払う、そういう仕切りになった。

ドラガンがそういうことにしておこうと言うと、マイオリーは哀れみを受けたと感じたらしく怒りだした。


「帰ったら払う! 貸し借りは無しだ!」


 ドラガンはかなり困惑した顔をしている。

ラスコッドとロマンは小さい男だと笑い合った。



 お昼頃、行商の一行は最後の休憩所『ビフォルカティア』へ到着した。

ビフォルカティアは、これまでの街道の中にポツンと営業する休憩所とは異なり、周囲はそれなりに発展しており、町の中の休憩所という趣の場所だった。


 休憩所の前の街道は東の『ベルベシュティ地区』からの街道と交わっている。

その為、多くの行商がこの休憩所を利用するのである。

キンメリア大陸の西街道の中でも一番発展した休憩所となっている。




 キンメリア大陸を治める『キマリア王国』は三つの大都市を統治の基軸としている。


 一つは『王都アバンハード』。

ここにはパラーツ宮殿という王宮があり、世襲王が君臨している。

現国王はユーリー二世というかなり高齢な国王。

歴代の国王は君臨するが統治せずという態度を取っており、内政は宰相によって執り行われている。

宰相は貴族の中から選挙によって選ばれる。

貴族たちも『元老院』という議会に参加し、内政に対し口出しができるという制度になっている。

また元老院にはドワーフなどの亜人種も参加している。

亜人種は五つあり、その部族代表を全員合わせるとそれなりの人数になる。

その為、亜人種たちの発言権は中々に強いと言えるだろう。


 国内第二の都市が、今ドラガンたちが向かっている『西府ロハティン』である。

ここは経済の街という位置づけとなっている。

南のキシュベール地区、東のベルベシュティ地区、北のサモティノ地区から、逐次生産物が輸送されてくる。

さらに王都アバンハード、海府アルシュタとは海路で繋がっている。

ここに無い物はどこの町に行っても無い、そう言われている。

『大陸の台所』そのように評されているほど流通の心臓なのである。


 国内第三の都市が『海府アルシュタ』。

大陸北東部にあるこの都市は、一大海軍都市となっている。

キンメリア大陸の中央部には、ベスメルチャ連峰という非常に険しい山脈が東西に長く横たわっている。

王都アバンハードのすぐ東側にはソロク川という大きな川が流れていて、ベスメルチャ連峰を挟んだ反対側にもオスノヴァ川という大河が流れている。

その為、大陸は大河で東西に分断されたような状況になっている。

その東側を守護するのが、この海府アルシュタである。


 ソロク川は幅広で水量が多いというだけでそこまで急流では無いのだが、オスノヴァ川は完全に暴れ川でたびたび氾濫を起こしている。

現状ではどちらの川にも橋が掛けられずにいる。


 街道は、王都アバンハードから、西府ロハティンを経て、北西のサモティノ地区を終着としている。

名目上『西街道』と名付けられてはいるものの、東街道が開通する見込みは今のところ立ってはいない。




 ビフォルカティアの休憩所まで来ると、誰の中にもロハティンはすぐそこという思いがこみあげてくる。

ここからすこし行けばロハティンの統治下に入る。

ロハティンには駐屯軍もいる為、非常に治安が良い。

賊もおらず道も舗装されている。

危険生物の出現もほとんど無く、例え出現したとしても、大事になる前に冒険者が討伐してくれる。


 ロハティンの街が近いということもあり、ビフォルカティアの休憩所は食べ物が非常に旨い。

これまでのいわゆる即席料理とは異なり、ちゃんと手の込んだ料理が提供される。

当然その分高価ではあるのだが。



 行商の人たちが扱う商品の中には、行商たちの間でも評判の良い商品というものがあるもので、そういった物は事前に商談が成立してしまう事がある。

特に装飾品にその傾向が強い。

どの行商人も生産者から希望小売価格というものを設定されており、初日はその価格に色を付けて販売することになる。

であればその初期設定額で買ってくれるのならば、市場より仲間に売った方が今後の行商がやりやすくなるというものである。


 当然その事は同じ休憩所を利用するベルベシュティ地区の行商人も知っている。

さらに言えば休憩所の近隣住民も知っている。

その為、ベルベシュティ地区の行商も、キシュベール地区の行商の到着に合わせてこのビフォルカティアの休憩所に集うようになっている。


 ビフォルカティアの休憩所は事前のちょっとした露店になっているのである。



 ロマンはドラガンと共にベルベシュティ地区の行商を見て回った。

アリサがどんな物を好むか一緒に探してくれというのだ。


 ベルベシュティ地区は、『森の民』と呼ばれるエルフの住まう地区である。

『山の民』ドワーフたちは金属細工が非常に得意で、調理器具や釘といった日常の金属加工品のみならず彫金細工品を特産品としている。


 一方でエルフたちは皮製品の加工が非常に得意である。

靴、鞄、財布といった特産品は非常に高く評価されており、かなりの利益をあげている。


 エルフたちは非常に商売が上手い。

ドワーフたちから彫金細工を購入し自分たちの皮商品に組み込み、さらに価値を上げて販売するような事もしている。

そのせいで、人間同士は露店販売しあうほど仲が良いのだが、ドワーフとエルフは非常に険悪だったりする。

ラスコッドもベルベシュティ地区の人間たちとは気さくに話をするが、エルフとは口も利かないし目も合わせない。

比較的温和で大人物なラスコッドですらそれである。

他の者は推して知るべしだろう。



 ロマンは皮細工の中の細いベルトを指さし、これなんかどうだろうかとドラガンに尋ねた。

ドラガンは、それならと別の露店の同じく細いベルトを指さした。

確かにこっちの方が可愛いかもしれない。

ロマンはそう言うとその場でベルトを購入した。


 喜んでくれるかなと嬉しそうに言うロマンに、ドラガンも、姉ちゃんの喜ぶ顔が今から楽しみと笑顔を返した。


「でもアリサ、意外と吝嗇(りんしょく)だからな。こんな高いものをって怒りそうな気もする……」


 ロマンの言葉を、ドラガンは意外に感じた。

二人の年齢やこれまでの接し方を見て、ロマンがアリサをがっちりと制御していると感じていた。

アリサもロマンを慕っている、そういう風に見えた。

普段アリサはよくドラガンを叱るのだが、それはドラガンがアリサのいう事を聞かないからだと思っていた。

今の発言を聞くに、どうやらロマンに対してもそういう態度らしい。 


「姉ちゃんって、貰えるものは何でも喜びそうなのに」


 ドラガンがそう言うと、ロマンはぎょっとした顔をした。


「絶対にそれをアリサに言うんじゃないぞ! 後が大変だからな!」


 ドラガンの両肩を掴んで必死の顔でそう言ってきた。


「そんなに姉ちゃんって怖いんだ……」


 そう呟くドラガンに、お前は怖くないのかとロマンは聞いた。

口うるさいとは思うが怖いとは思わない。

ドラガンはそう感じている。


 なるほどと呟き、ロマンは何かを納得したように何度も頷いた。


「まあ、お前もそのうちわかる日が来るよ」

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