呪いの対価
ミルドレットとニールとのデートを見守った後、グォドレイは定期的に入る用事へと出かけていた。
木の軋む音を発しながらドアを開くと、埃だらけの暗い室内に光りが差し込み、中に居る者が眩し気に瞳を細めた。
白銀の髪は薄汚れ、且つて自信に満ち溢れていたサファイアの様な瞳は見る影も無く、怯えた様に揺ら揺らと動いていた。
「……誰だ?」
震える声を発して威嚇する様子に、ズキリと心を痛めながらグォドレイは静かに言った。
「ハリエット、俺だ。紫焔だ。グォドレイだ」
「……紫焔?」
ハリエットを安心させようとゆっくりと頷いて笑みを浮かべ、優しく言葉を掛けた。
「ああ、久しぶりだな。そんなに埃まみれになっちまって、大丈夫か?」
グォドレイにつられた様にハリエットもぎこちない笑みを僅かに浮かべた。
「……紫焔、といったか。私は、お前に会った事があるのか? すまない、何も思い出せないのだ」
不安気に怯えるハリエットの服の埃を払ってやりながら、グォドレイは頷いた。
「ああ、心配要らねぇよ。俺達は友人同士だ」
「……友人?」
——ああ、何度目だろうか。このやりとりは……。
ハリエットが「ふぅん?」と、ほくそ笑む様な表情を浮かべ、サファイアの瞳を細めた。余りにも冷たい笑みに、グォドレイは訝しく思った。
「友人だなどと嘯く下賤の輩め、私に触れるな!」
息が止まる程の痛みが脇腹を貫いた。
眉を寄せ、視線を下ろすと、ハリエットが握りしめた短剣をグォドレイの腹に深く突き立てている様子が見えた。
「っ!!!!」
ハリエットを突き飛ばし、あまりの痛みに耐えきれずに膝をつき、グォドレイは脇腹を押えた。
真っ赤な鮮血が衣服を濡らし、血なまぐさい匂いが埃っぽい室内に充満した。
◇◇◇◇
あれは、もう随分と昔の事だ。
いつもの様にハリエットに強制召喚されて、人里に作られた新しい住処へとグォドレイは不貞腐れた顔のまま現れた。
「紫焔! 久しぶりだ。元気にしていたか?」
嫌に機嫌良さげにハリエットは笑うと、グォドレイの肩に腕を回して強引に抱き寄せた。
「止めろよ鬱陶しい!」
ハリエットの顔をぐいと引き離して、うんざりした様にため息を吐くと、ぐるりと周囲を見回した。
以前強制召喚で拉致された氷の城とは打って変わり、お世辞にも広いとは言えない邸宅の一室で、簡素な家具に使い古したカーペットが敷かれていた。
降りしきる雨が屋根を叩きつけ、水たまりに落ちる音に耳を傾けて眉を寄せた。
「良い家だろう? 私は雨音が好きでね。賑やかで心が安らぐ。もう雪は見飽きた」
ハリエットは無邪気な笑みを浮かべ、自慢げにさっと手を広げた。グォドレイはやれやれとため息をつきながら頷き、周囲を見渡した。
「ああ、温かくて快適そうだな。確か、人間と結婚して随分経ったんだよな? どうだ? あんなさみぃだけの寂しい城から出て良かっただろ?」
「まあ、そうだな。まずは座ったらどうだ?」
「長居する気はねぇんだが。家族は出かけているのか? お前さんが魔導士だってこと、秘密にしてるんだろ? 急に俺が来たら驚いちまうんじゃ……」
椅子に腰かけながらグォドレイが言うと、ハリエットは満面の笑みを浮かべて見せた。
「紫焔、私はもう何人もの孫が居るよ。ひ孫だって沢山居る。お前は結婚しないのか?」
「……あのな、結婚は独りじゃできねぇだろうが。嫌味か!?」
「すまない、そんなつもりは無かったのだが」
ケラケラと笑いながら、ハリエットはグォドレイの側の椅子へと腰かけて、パチリと指を打ち鳴らした。木製の小さなサイドテーブルの上にワインの瓶とグラスが現れて、トクトクと良い音を発しながら注ぎ入れた。
赤い液体が揺れる様を見つめ、グォドレイはその視線をハリエットへと向けた。グォドレイからの視線に気づいてハリエットは笑みを浮かべる。
「では、紫焔は相変わらず独りなのか」
「ああ。そう言ってるじゃねぇか。嫌な奴だなっ!?」
「私が愛してやろうか?」
「遠慮するぜ」
即答したグォドレイに、ハリエットは「そう言うな」と言って顔を近づけた。
「毎度毎度止めろっての!」
ハリエットの顔面を鷲掴みにして引き離すと、グォドレイはうんざりした様に舌打ちした。
「お前さんは伴侶を持って順風満帆なんじゃねぇのかよ。俺なんかを相手にしてる場合じゃねぇだろうが」
氷の城から人里へと降りたハリエットは、住処を転々としてはその先で伴侶を持ち、自分が魔導士であるということを明かさずに暮らしていた。
「相変わらずつれないな、紫焔は。私のどこが気に入らない?」
「そういうところだっ!」
グォドレイの耳元でピアスがシャラリと揺れた。ハリエットは気まずそうに視線を逸らして、サファイアの様な瞳を細めた。
「……まだ、そのピアスをつけているのか」
「俺様は他人から貰った物は大事にする性質なんだ」
「へえ? それは光栄だね」
ハリエットはグラスを手に取って、グォドレイの真向かいにある椅子へと腰かけた。微かに軋む音を発したが、雨音が騒がしくグォドレイの耳には届かなかった。
押し黙ったまま、グラスを口にしてワインを味わうハリエットは、どこか落ち着かない様子だった。
トントンと、人差し指で椅子のひじ掛けを叩きながら、グォドレイは間が持たないなとため息をつく。
「で? 今日は何だって俺様を強制召喚しやがった?」
ハリエットは白銀の髪を肩から零し、ニコリと微笑んでみせた。
先ほどからその笑顔が妙に違和感を覚えてならない。どうにも『幸せぶっている』様に見えるのだ。
笑みを浮かべたまま何も言おうとしないハリエットに痺れを切らし、グォドレイは眉を片方吊り上げた。
「ハリエット?」
「……ああ、私の作った新しい魔道具を見てもらいたいと思ってね」
取り繕う様にそう言って笑みを浮かべた後、ハリエットはすっと掌を上へと向けた。僅かに光が発せられ、その掌の上にネックレスが現れた。
ハリエットの瞳の色に良く似た大粒のサファイアで作られたそれは、どこか禍々しさを感じてグォドレイは眉を寄せた。
「そいつは、なんだ? どういう代物なんだ?」
訝し気に見つめるグォドレイの目の前で、ハリエットはそのネックレスを自ら身に付けた。
胸の上で揺れる大粒のサファイアが鈍い光を発している。
「……おい。ハリエット?」
笑みを浮かべるハリエットの頬を、つ、と涙が伝った。
「皆死んでしまうのだよ。子も、孫も……。もう、沢山なんだ」
「待て、その魔道具は一体どんな代物なのか答えろ!!」
慌てて立ち上がり、グォドレイはハリエットのネックレスへと手を伸ばした。だが、ハリエットはパッと後ずさって、首を左右に振った。
「紫焔。どうしてお前は私を愛してくれなかった?」
グォドレイはハッとして眉を寄せた。
外で降りしきる雨音が耳障りでならない。
言葉が出て来なかった。
「私は何度もこの想いを伝えた。お前を愛していると! なのにどうして……」
絶句するグォドレイを見つめながらハリエットは狂った様に笑い声を上げ、その瞳からポタポタと涙を零した。
「私はどれほど願ってもお前に愛されなかった。そんな対象だとすら思われていなかった! 永遠に生きる同士だというのに、悲劇でしかない!!」
ハリエットのネックレスからどす黒い靄がゆらりと沸き上がった。グォドレイは床を蹴って素早く飛び掛かり、逃れようとしたハリエットは足がもつれて床へと倒れ込んだ。
「答えろ、ハリエット! その魔道具は一体何だ!!」
ハリエットの上に覆いかぶさる体制でグォドレイは怒鳴りつけた。
ネックレスを引き千切ろうとしたものの跡形もなく消えている事に眉を寄せ、慌ててハリエットの服を引き裂いた。
どす黒い痣の様にネックレスと同じ形が胸元に刻みつけられているのを見つめ、グォドレイは青ざめた。
「どうした、紫焔。今更私に欲情でもしたのか? 勿論、性欲の捌け口として使って貰っても構わないよ」
「こんな時にふざけてんじゃねぇよ!!」
「煩い!! ならば私に触るな!!」
振り払おうとしたハリエットの手を掴んで押さえつけると、グォドレイは「いいから答えろ!! こいつは一体何だ!!」と叫んだ。
涙でぐちゃぐちゃになった顔に白銀の髪が張り付き、ハリエットは自分の醜い様子を見られたくはないと顔を背けた。
「私が何故氷の城に閉じこもったのか、解っていないだろう?」
グォドレイは悲し気にアメジストの様な瞳を細めた。
「……ああ、深くは聞かなかった。俺と同じように人間に裏切られ、傷ついたのかと」
「裏切ったのは私の方だよ。お前とよく似た人間を見つけては、お前ではないと寂しくなって離れた」
呼吸が乱れ、ハリエットの瞳から幾筋もの大粒の涙が零れ落ちた。
「また私は同じことを繰り返しただけに過ぎない。お前に掛けてしまった呪いの罪を償わなければと。けれど……もう、疲れたのだ。私の心の穴は、お前でなければ埋まらないというのに、罪を重ねていくだけだ。逃げる場所もない。私は消えてしまいたい」
「そんな事を言うなよ。俺を一人にする気か?」
ハリエットはケラケラと笑った。
「私がこの世に存在していても、お前は独りで寂しいと言うくせに!!」
その言葉にズキリと胸が痛んだ。
愛した者が自分の気持ちに気づきもせずに『寂しい』と何度も繰り返されれば、当然傷つくことだろう。
何度『私を見ろ、私はここに居る』と心の中で叫んだことか知れない……。
「分かった、もう言わねぇよ。だから教えてくれ。その魔道具は一体何なんだ?」
ゆっくりと解析している時間はない。だが、効力が解れば解除方法が見つかるはずだ。
押し黙るハリエットに、グォドレイは懇願した。
「頼む、教えてくれ。俺は、お前を失いたくない!」
悲し気に眉を寄せて言うグォドレイを見つめながら、ハリエットは僅かに笑みを浮かべた。
「心配要らないよ。死ぬわけではないのだから。お前はなにも失わないし、責任を感じる必要もない。ただ、全ての記憶を失う魔道具だというだけだ」
「……記憶、だと……?」
——それなら、記憶を失った後にもう一度……。
グォドレイがそう考えた時、ハリエットは笑った。
「無駄だよ、紫焔。三十年毎に消える様に設定してあるのだからね」
愕然とするグォドレイを見上げながら、ハリエットは悲し気に眉を下げた。
「どうして傷ついた顔をする? お前のそんな顔を見たかったわけではない。私から解放され、清々するはずだろう? もう二度と強制召喚をすることはないから安心しろと言いたかっただけだよ。だから、もう帰って貰って構わない。私は三十年毎に新しい一生を迎えるのだ。お前の事も自分の事も、何もかも全て忘れてね」
ちゅ、と、グォドレイが口づけをした。舌を絡め、まるで愛情を注ぎこむかのような濃厚なその口づけに、ハリエットは恍惚として瞳を閉じた。
「……どうしてそんな事をする?」
涙を零しながら問いかけたハリエットに、グォドレイは優しく白銀の髪を掻き分けてやりながら言った。
「俺がお前を愛した記憶も忘れちまいたいって思うのか?」
——魔術が発動したばかりの今ならまだ間に合うはずだ。
ハリエットが、魔道具の受け入れを拒否すれば……。
「無駄だよ。私はもう、お前の事が大嫌いだ」
ハリエットは、自分に愛情が向けられていない事などとっくに理解している。これ以上、グォドレイに苦痛を強いることなどできなかった。
「ハリエット……」
「愛してなんかいないくせに。お前のことなど、永遠に忘れてしまいたい程大嫌いだ」
ハリエットの胸に刻まれたどす黒い痣が、焼きつく様に禍々しく紅い色を放った。
「駄目だ!! 魔道具を受け入れるなっ!!」
「煩い!! 二度と私に『愛している』だなどと、嘘をつくな!!」
「それなら俺は、誰の事も愛さない! お前の側にいると誓う!!」
ハリエットは笑みを浮かべると、グォドレイの頬に触れた。
いつもは直ぐに振り払われるというのに、無抵抗でいるグォドレイが堪らなく愛しく思った。
「それは駄目だよ。私はお前の為に消えるのだから。約束したはずだろう? そのピアスを欲した相手には、必ず渡すと」
「我儘も大概にしやがれ!! やっぱりお前さんの事なんか大嫌いだっ!!」
叫ぶグォドレイを見上げながらハリエットはクスクスと笑うと、手を伸ばし、唇を親指で撫でた。
「それでいい。紫焔、別れのキスを有難う。さようなら」
「俺を、忘れないでくれ……。頼む……」
降りしきる雨は屋根を叩きつけ、悲しみに暮れて漏れる嗚咽を掻き消した。
◇◇◇◇
息を切らせながら必死に脇腹の痛みに耐えるグォドレイを見下ろしながら、ハリエットは鼻を鳴らした。
「お前の事など覚えていないが、メモくらいは残しておく事は可能だ。過去の私は、どうやらお前を憎んでいた様だな」
ハリエットが手を翳すと、暗い室内に魔法文字が浮かび上がった。
『忘れるべき相手。紫焔の魔導士グォドレイ・コート・フォルシュナー』
翳した手を握り締めると、ハラハラと火の粉が散る様に文字が消えていった。そしてグォドレイに向けて人差し指と中指を揃えて向けた後、くいと手招きをするような仕草をした。
凄まじい力がグォドレイの身体を捕らえた。床の上を引きずられ、脇腹の傷口の痛みに眉を寄せて耐えた。
そのまま埃だらけの家屋から外へと放り出されて、ハリエットの高笑いが耳に響いた。
「何が友人だ。本当に友人ならば、過去の私がお前を忘れるべき相手であるとメモに残しておくと思うか? つまり、お前は敵だ!!」
「そいつは違う」
痛みに耐えながら、グォドレイが声を放った。
「本当に忘れたきゃ、メモになんか残さねぇはずだろう? お前さんは、俺が来るのを待ちわびていたはずだぜ?」
脇腹を押えながらゆっくりと立ち上がった。空は微かに白んできたものの、眩い程の月が闇夜を照らし、足元に落ちる影がグォドレイの呼吸の粗さをしっかりと映し出している。
静けさが辺りを包み込んでいた。ハリエットは混乱する脳の痛みを押さえつける様に額に手をあてると、懇願するように言った。
「……もう、終わりにしたいのだよ。頼む、殺してくれ」
三十年という周期を幾度となく繰り返し、その度に真っ新に消えてしまう記憶に恐怖を覚えるのだ。
無論、以前の事は全く覚えていないはずだ。
それでも、恐怖という感情が心の痛みとして蓄積されていく。
「私が忘れても、周囲は私を覚えている。お前も含めてね。それだというのに、私は誰の事も覚えていないのだ。私だけが孤独だ……」
ハリエットはサファイアの様な瞳から涙を零した。
「紫焔!! 私はきっと、お前を愛していたのだろう? だが、お前は『友人』だと言った。永遠にこの痛みに耐えられず、私は逃げた。その結果がこれだ!! 自業自得だと嘲笑って貰っても構わない。だからどうか、私を殺してくれ!! お前を殺そうとしたのだ。憎しみは足りているはずだろう?」
月明かりに照らされる白銀の髪と、宝石の様な涙を零すサファイアの瞳を見つめながら、グォドレイは唇を噛みしめた。
何故、自分が愛したのはハリエットでは無かったのだろうか。
ハリエットの血を引く子であるオーレリア。そして、その娘であるミルドレット……。
狂おしい程に彼女らの事は愛したというのに、何故……?
「失恋ってのは、キツイもんだ。痛い程よく分かるぜ」
ため息を吐くと、グォドレイは寂しげに瞳を細めてハリエットを見つめた。
「悪いが、俺はお前さんを殺す気なんかさらさらない。勿論、ここで殺されちまう訳にはいかねぇ。まだ、やるべきことが残ってるからな」
——さて、魔力低下も著しい上に、この傷を負ってどう対処するか……。なんとしてもミリーの所に帰らねぇと……。今頃ツリーハウスで寂しがっているだろうからな。
グォドレイは幅の広い袖口から煙管を取り出すと、おもむろにぷかぷかとふかし始めた。
「……紫焔、脇腹に穴をあけたままよくそんなものが吸えるな?」
「穴を空けた張本人に言われたかねぇな」
そう言った後、グォドレイはふぅっと煙を吐いた。
「いくらでも詰ってくれて構わねぇさ。それでも、俺はお前さんを失いたくねぇんだ」
「友が苦しんでいるのに、死を与えないつもりか!?」
グォドレイは頷くと、口に煙管を咥えてジロリとアメジストの様な瞳を向けた。
「お前さんは勘違いしている様だが、俺はちっとも優しくないからな。自分が招いた事は自分で責任を取りやがれ」
ふぅっと煙を吐き、グォドレイは煙管の灰を落として幅の広い袖口の中へと仕舞い込んだ。朝日が差し込み、深い紫色の髪を艶やかに照らし、アメジストの様な瞳を神秘的に輝かせる。
耳元で揺れる大きなピアスが心地よい音色を奏でて、そんなグォドレイを見つめながらハリエットは瞳を細めた。
「……美しいな、紫焔は」
グォドレイは笑いながら肩を竦めた。
「ああ、お前さんはこいつが苦手だったな。俺の弟子ですら、最近習得したってのによ」
グォドレイがパチリと指を打ち鳴らすと、埃だらけだったハリエットの汚れが綺麗に取り払われて、白銀の髪に良く似合う群青色の衣服へと変わった。
「ほら、これでお前さんも美しいぜ?」
「……そういう意味で言ったわけではないのだが」
「この方が恰好つくだろう? 来いよ、ハリエット。魔力を分けてやる。少しは昔の事を思い出せるようになるはずだ。俺がお前の呪いを解いてやる」
「私を愛していないのにか?」
寂しげに言うハリエットに頷くと、「責任を取るってのは、痛みを伴うもんなんだぜ」と言って笑みを浮かべた。
頬を染め、ゆっくりと歩を進めて近づいてきたハリエットの身体を引き寄せると、口づけをした。
ただでさえ魔力低下が著しいグォドレイの身体から、寿命が削り取られる程の力が奪われていく。
愛する者の命を削り取る罪を、ハリエットはこうして背負うしかないのだ。
「……何故だろうな。私は、何度記憶を失っても、繰り返しお前を愛してしまう。すまない、紫焔」
茜色の朝日を浴びながら何も言わず寂しげにグォドレイは微笑むと、歌うような詠唱をして姿を消した。




