絡まる。
みんなで近くの銭湯に来た。全員が一人ずつよっしーの家のお風呂に入るってなると色々大変だから行ってこいと言われた。
夕飯はちひろくんを手伝いながらカレーを作った。ちなみに創ちゃんは料理ができないからよっしーの体調を見てもらっていた。
創ちゃんは基本何でもできるけど料理というか、家庭はめっぽうだめ。でも家庭科の調理実習でその不器用さがギャップ萌えで女子からの人気を増やしてしまった。
「ふぅ…。いい湯すぎる。」
「お前何もやってないだろ。」
走って湯船に飛び込みおしりを浮かせて泳いでいるはっしー。すいてて誰もいないのが幸い。
はっしーは今日ずっとちひろくんに甘えていた。俺は正直そこがどういう関係なのかよくわからない。
「ていうかそれよく買ったね拍。」
「銭湯のソープ類なんて怖くて使えない。逆によく使えるね。」
拍は銭湯に来る前、近くのドラッグストアでいつも使っているスキンケア用品を買っていた。一回分だけ入っている小さいやつ。
「さすが潔癖症。こえぇ。」
「あのねぇ、みんなが気にしすぎないだけだから。今は男も美容に気を使う時代だよ。」
「双子でなんでこうも違うんだろうな、旭。」
「俺が不潔みたいに言わないでよ。あとはっしーこっち見ないで。」
僕とはっしーと創ちゃんは備え付けの洗顔フォームを使って、杉ちゃんとよっしーは家から持ってきたものを使っている。
割と杉ちゃん、よっしー、拍は美容に気を使うタイプ。俺とはっしーと創ちゃんはそういうのよくわからないタイプ。あるものを使うって感じ。
「まぁでも洗顔とかはあんま使いたくないわ。肌荒れそう。」
「でしょ!?さすが空ちゃんわかってる!」
「なんだお前ら二人して潔癖かよ。」
「別に俺潔癖じゃないし。関係ないし普通にやだ。」
「わかんねぇ…。」
「…ってかなんで吉竹はずっと体洗ってんの。」
「……。」
お風呂に入る前全員体、髪、顔は洗った。でもよっしーはその場から移動せずずっと背中を洗っている。
背中赤くなってますけど…。何分洗ってるんだろ。多分拍がいるから変に意識しちゃってるんだろうなぁ。まぁ確かに好きな人の目の前で堂々とお風呂に入るって難しいけど。
きっとそれを察しているであろう杉ちゃんとはっしーが湯船から出てニヤニヤしながらよっしーのいる洗い場へ向かった。
「ほぉん。…ねぇねぇ吉竹くぅん体調悪いのぉ?俺お話聞かせてぇ?」
「俺もまぁぜぇてぇ?」
「だぁぁぁぁぁ!!!来んな!死ね!!」
「悲惨…。」
何故か男にはない胸を揉む杉ちゃん。よっしーの腰に巻いてるタオルを取るはっしー。その場に転げ落ちるよっしー。
地獄絵図すぎる。
「ねぇ黒くん、あの人風邪治ったの?」
「なんかすぐ下がったらしい。いつも対して使わない頭使って知恵熱でも出したんでしょ。」
「ぶはっ!なにそれ馬鹿じゃん!」
「馬鹿じゃないの?」
「確かに馬鹿だけど!」
「馬鹿馬鹿うるせぇ!聞こえてるぞ!それに俺は病人だ!いたわれ!」
「もう治ったならいいでしょ!」
こっちとむこうで楽しそうに言い合いをする拍とよっしー。
一見微笑ましいけどやっぱり微笑ましいって気持ちだけじゃいられないところがある。
「……。」
「…創ちゃん。」
「ん?」
「…俺どっちを応援したらいいかわからない。」
ついさっきよっしーの気持ちに気づいてからずっとこればかりが頭をもんもんとさせる。
二人が心配とかそういうのじゃない。なんかこう、色々考えていたら自分の気持ちが難しくなってしまった。
「二人のことは友達としてすごい好き。でも家族の、双子の弟の拍も大好きなの。だからその拍が原因で二人の仲が悪くなってほしくないっていうか…そんな感じ。」
「悪くなんてなるわけない。てか元々よくないしね。」
「そ、そんな…。」
「安心して。俺達は正々堂々戦うし、拍を傷つけたりしないから。最終的に決めるのは拍だし。」
創ちゃんは俺が拍の心配をしていると思っている気がする。
なんでうまく伝わらないんだろう。
拍がどっちを選んでもそれは拍の自由だし祝福したい。拍が選んだ人ならいい人に決まってるし別に正直拍のことは心配していない。
でも……。
「…そっか。創ちゃんがそう言うなら安心かも。」
「うん。安心して。」
大丈夫。きっと大丈夫。むかしみたいにはならない。だってもう高校生だし…。大丈夫…大丈夫。
そう心に言い聞かせた。
「…ってなんか拍静かじゃない?」
そういえばさっきまでよっしーと言い争いをしていた拍の声が聞こえない。
「ねぇ杉崎そっちに拍いる?」
「拍?いないけど。」
「…あーーーっ!?」
出口前で拍が倒れていた。
そうだ拍はのぼせやすい体質なんだった…っ。きっと出ようとしたときにはもう倒れちゃってたんだ。
拍は家のお風呂でもすぐにのぼせる。5分も浸かっていなくてもすぐばたりだ。だからいつも拍はシャワーだけにしている。
「ちょっと…がっつりのぼせちゃってるじゃん。」
「ん゛…。」
拍のことを創ちゃんはお姫様抱っこをして運ぶことにした。とりあえずロビーで涼ませて飲み物を飲ませなきゃ。
「拍のこと休ませるから上がったらロビー来て。」
「急がなくて大丈夫だからね!」
そう言って俺と創ちゃんは早めに上がった。