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恋なんかじゃない。  作者: おたくだが
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意識。


「はぁ…はぁ…っ。」


兄貴に車で迎えに来てもらって車の中で本当に熱が出るなんて思ってもいなかった。サボりのつもりだったのに。


しかもあれから拍の顔が頭から離れなくてすごいモヤモヤする。


「…外うるっさいな……。」

「入る。」

「お見舞いきたよー。」

「病人の部屋に入るときの声のボリュームじゃねぇだろ。」


俺の部屋に入れて、入ると言ったときには片足突っ込んでいるという非常識な奴らはこいつらしかいない。


時計のチクタク音しか聞こえなかった部屋に多数の人の声が増えた。


え、なにお見舞い?俺がサボりなの察してると思ってたんだけど…。察してるとしてもお見舞いだなんてなんて優しい奴らだ!俺のこと大好きなんだな!いつも馬鹿にしてごめんよ…特に杉崎と橋本…!


「え、嘘ほんとに熱あるじゃん。顔赤いし…なんかごめん。」

「杉崎ぃー。最初はサボりのつもりだったけどなんか上がってたんだよぉー。お前の愛のパワーで直してくれぇー。」

「あーもうくっつくなキモいし移るだろ!…あーほらこれやるから!」

「おっまじで?よっしゃ。」


杉崎から袋を受け取ると中にはゼリーと栄養ドリンクと俺が好きなお菓子が大量に入っていた。


こいつらやっぱり天使だ。今日だけ。


「旭に感謝しなよ。旭が行こうって誘わなかったら俺たちここ来てないんだから。」

「旭女神ー感謝!」

「俺男なんだけど。」

「ってあれ?橋本は…あー兄貴か。」


あいつほんと好きだな…。あんなやつのどこがいいのか俺にはさっぱりわからない。


…ん?ちょっと待て?今冷静になって考えてみたらこいつらがいるってことはもちろん…。


「橋くんすごいよね、まだ好きなんだもん。」


やっぱりいるよな!藤野拍さん!


タイミング最悪すぎる。存在を完璧忘れていた。それか思いださないようにしていたのか。


あーくそ…っ。せっかく忘れようとしてたのに実物目の前にしちゃったらどうすればいいかわかんねぇよ…。


「…そ、そうだな……。」

「ん?どうかしたの?」

「んえ!?いや!別に!?」


どうかしたの?じゃねぇよ。どうかしすぎてるわ。


心の声が大きいし多い。多分今まで生きてきた中で今が一番自分が気持ち悪い。


頼むから早く出てけと言いたいけど自分のサボりのせいで、放課後全員でせっかく来てもらったやつらにそんなこととてもでないけど言えるわけがない。


「…ちょっとじっとしてて。」

「え…。」


拍は俺の額に手を置いて体温を確かめている。


待って今何が起こってる?え、待って、え?顔?これ顔?拍の顔面?なぜ目の前でこんなに近く?え?は?しかもこの手なに。俺のおでこにあるの拍の手?触ってるってこと?ん?


理解が追いつかなくなり、脳内が完全に限界オタク化してしまった。流石に自分でも気持ち悪すぎる。


でもそんなことを考えられないぐらい頭の中がはてなでいっぱいでわからなくなる。


「え、熱くない?汗かいてるからかな…。ちょっと服の中手入れるけど冷たかったら言って。」

「は、はぁ!?変態!」

「は?どうしたの…ほんとに変だよ。いやいつも変だけど。」


拍は若干引きながらも俺のパジャマのボタンを上から一つ一つ外していった。


体育の着替えなんか何も恥ずかしくないし、むしろ腹筋とか見せびらかしてたりしてたのに今この状況が恥ずかしくてたまらない。拍に他意はないってわかってるのに…。


拍は俺のパジャマを脱がして背中をさっとタオルでこすった。


「ん…っ。」

「ちょっと変な声出さないでよ。」

「出してねぇから!」

「熱のくせにうるさ…。こういうときぐらい静かにしててくれる?」


俺のことなんかお構いなしに俺の体を拭いていく拍。


もう無理。死ぬ。耐えられない。思春期の健全な男子高校生にこんな卑猥な状況耐えられるわけがない。卑猥って思ってるのは多分俺だけだと思いますけどね!


こんなのどんどん熱が上がっていく一方だし何より俺の心臓が持たない。


自分の心臓の動きがどんどん早くなっていくのがわかる。そしてその音を聞いて更に早くなる。


「…待ってあんたまさかとは思うけど……。」

「…杉ちゃん?」

「拍、俺が吉竹の体拭くから拍はリビングで橋本の様子見てきてくれない?」


自分でもやばいと思ったとき黒川が間に入って止めてくれた。


め、女神!俺のビーナス!男だけど!


「え、なん…。」

「いいから。長居するのもよくないからって橋本に伝えてきてくれる?多分泊まるとか言いそうだからさ。」

「…わかったよ。みんなして楽しいこととかしないでね!僕が戻ってきてからしなよ!」


拍は勢いよくドアを閉めて階段を駆け下りて行った。下から「ちょっと橋くん!」と言っている声がする。


やばい。あと一歩で頭がシャットダウンするところだった。今の頭は多分あつすぎてピザとか焼けちゃう。しかもチーズとろっとろのやつ。


あの謎のスーパー意識状態の空気から開放されて体の力が緩む。


「ふぅ…。」

「なにがふぅなんだよ。」


そうだこいつらもちゃんといたんだった。


後ろで杉崎がニヤニヤと性格の悪い笑みを浮かべ俺にそう聞いてきた。


旭は何も理解していないような顔をしている。いや、ようなじゃない。本気で理解していないんだ。


その一方で、


「説明して。」


今までにないぐらい怖い顔をした黒川が俺の背中をタオルで拭き…いや、擦りながらそう言った。


逃げられない状況で俺ができることは唯一。


「…は、はい……。」


か弱い返事をすることだけ。

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