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恋なんかじゃない。  作者: おたくだが
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変化。


「はぁ〜〜〜〜」

「でっけぇため息だなおい。」

「…別に。」

「お前の別にってそれ何、口癖?」

「うるさいな…。」


現在体育の授業中。自由にやってもいいと言われたので寒くてストーブのところに座っていたら突然拍が隣りに座ってきた。


ちなみに俺は拍と二人きりになったことがない。


吉竹賢祐。3月に17になる。

俺の友達の藤野拍は兄の旭に比べて可愛げがない。


見栄っ張り 意地っ張り 毒舌 素直じゃない 怒りんぼう


ぶっちゃけこえぇしなんでこいつがそこそこ女子に人気あるのかわからない。


「俺が嫌なら向こうのストーブのところ行け。ほら黒川と旭いるぞ。」


向こうのストーブでは黒川と旭が手を温めている。旭のにっこにこの横顔が見えた。やっぱりどう見ても旭のほうが可愛い。


まぁ言わないけど。


「行かないよ。動きたくないし。」

「あーそう。」

「…」

「…」


やべぇ会話が続かねぇ。あれ俺いつもこいつとどうやって話してたっけ。


気まずすぎる空間を紛らわすためにとりあえず何回も咳き込みをしてみる。まぁやったところで変わらないのは目に見えてるけど。


「…なんで黒川のとこ行かないん?」

「なんでってなに。僕が黒くんのこと嫌いなの知ってるでしょ。普通に考えて嫌いな人のところになんて行かないから。馬鹿なの?」

「ほぉん。」

「…なに。なんか言いたいことあるなら言いなよ。」


ここで俺は拍にあることを聞きたいと思う。俺どころかみんなが思ってるような禁断の質問。みんな良心があるから聞くに聞けないけど俺にはそんなもの一切ないからここで聞いてやる。


「ていうかお前らぶっちゃけデキてんの?」

「…は?」


お?この反応はもしや…。


明らかに動揺している。照れているとまではいかないけど若干の困惑。


「デキてるわけないでしょ!僕ゲイじゃないし…!」

「口でだったらなんとでも言えるからな。」

「うわ本当に小さい頃から心底性格悪いね。早くそのクソみたいな性格直しなよ。」

「照れるわー。あざす。」

「全く褒めてないよ。」


本気で引いたのか拍は俺と少し離れた。


俺のことを性格悪いとか言うけど俺からしたらこいつもなかなかいい性格してると思うけど。


「お前わかりやすいから誤解されんだよ。」

「は?何わかりやすいって。」


拍は俺を睨んでそう言った。てかなんで俺睨まれてんだよ、悪いこと何一つ言ってねぇのに。しかもこいつ自覚ない感じね、黒川かわいそ。


この際だから伝えてあげよう。友達としてな。


「テストとか体育の試合のたびに競ってその他にも移動教室とかくだらないいたずらとかでもすぐに競うだろ。見る人が見たらマジで好きなのかなって思う。やってること小学生かよ。」


拍は俺を見て固まった。自覚ないそういうのって恥ずい。まぁ言うの止めないけど。


「それに嫌い嫌い言ってる割には一緒に帰ってるし話してるとき楽しそうだし。もう付き合ってるだろ。はーだるいだるい。」


拍はなんだかんだ言って黒川といるときが一番楽しそうな気がする。この前も一緒に帰ってたし黒川の前でしかしない笑顔だってある。


そもそも二人とも態度があからさますぎる。黒川は顔に出てるけど拍は行動に出てる。ここまでわかりやすいのは探してもなかなかいない。


黒川は拍のことをどう思ってるかわかんねぇけど多分こいつら思ってること同じだろ。


俺は最後の一押しをした。


「絶対黒川もお前に気ぃあるって。告ぶふぉっ。」

「〜〜…っ!うるっさい!死ね!」


善意で一押しをしたつもりがクラスの男子が置きっぱにしたバスケットボールを俺の顔に投げつけてきた。


拍は走って黒川と旭のところへ走っていってしまった。ボールが落ちた一瞬見えたときの拍の顔は真っ赤に染まってて若干の涙目。


その顔を見たときなぜかビリビリしたなにかが体中を通った。


そしておまけに鼻血が垂れてきた。小鼻をつまみ、鼻血をおさえる。


「…は〜〜っ」


体育座りをしている膝の中に顔を埋めて大きなため息を一つつくと杉崎と橋本が走って俺の方へ来た。


「おいなにやってんだよ。うわ鼻血!?」

「ちょ、大丈夫?保健室行かなくていいん?」

「…別に。」

「何拍みたいなこと言ってんだよ。てかなんかお前顔赤くね?」

「熱あるみたいだから早退するわ。」

「嘘つけお前暖房の近くいたから熱いだけだろ。サボんな。」

「せんせー俺早退します。」

「は?え、まじで言ってんの?」

「おいサボんなエロメガネー。」


先生に早退の報告をして二人の声なんて届いていないフリをして早足で教室に戻る。


おかしい。気持ち悪い。怖い。心臓痛い。


甘ったるくて気持ち悪い。


絶対この熱さはずっと暖房の近くにいたせいじゃない。


そんなことは馬鹿な俺でもわかった。


「あー…くそ…っ。」


その場にしゃがみこんで思わず独り言が出てしまった。







「んだよあれ……かわいいって思っちゃったじゃん…。」

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