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恋なんかじゃない。  作者: おたくだが
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体育祭。


雲一つ無い快晴!澄んだ空気!クラスTシャツ!


今日は気分がいい。なんてったって今日は…。


「来たぜ体育祭!」

「おーっ!」

「おー…。」

「はぁ…。」

「…。」

「ふぅ…。」

「ってお前ら覇気ねぇな…体育祭だぞ!しかも最後の!」


この体育祭日和に毎度の事ながら暗い顔をしているやつが三人いた。


「運動嫌いなやつからしたら地獄のイベントだっつーの。」


体育座りをしてもう動く気のない吉竹。


「日焼けしそー。」


アームカバーをして日焼け止めを塗っている拍。


「あっつい…終わってる。」


あまりの猛暑で顔が引きつっている空良。


「お前らな…。」


別に運動ができないわけではないのになと俺は思う。まぁでたくない競技に出ることになったやつは可哀想だと思うけど。


後ろの方で出たくない競技に無理やり出されることになり嫌だと吐く何人かのクラスメイトに同情した。


「ほら体育委員呼ばれてるぞ行けよ。」


開会式が始まる。俺はラジオ体操を全国の前でするため、前の方に集まった。


間もなくして始まった開会式。


ラジオ体操、校長の挨拶、色対抗だからそれぞれの組からの宣誓。長々として、そして最後の最後で待っているのは…。


「生徒代表 開会の言葉。三年一組杉崎空良。」

「…はい、俺たちは…今日から三日間…正々堂々とぉ…勝負することを誓います…。」


台に上がって右手を上げながら低い声を上げたのはびっくりするぐらい顔色の悪い空良。


周りから「杉崎やべぇな…。」「あいつ大丈夫かよ…。」と心配の声が上がっている。それぐらい目が死んでいる。


「俺じゃなくて私でしょ。」

「空良さん…!私!私です…っ!」

「菊池くんも同じこと言ってるけど。」


拍と前に出ている聖が同じことを言った。


「なぁ空良はなんてあんなテンション低いの?」

「杉崎騎馬戦の騎手だから。」

「足が良かったんだろうね。可哀想に、ねぇ吉くん。」

「俺が悪いのかよ!」


そうだった…!あいつ色対抗の騎馬戦の騎手になっていたんだった。


俺と旭と拍が白組で、空良と吉竹と黒川が赤組。


騎馬戦は足三人に騎手が上に乗って別の組のハチマキをとる競技だ。


空良は正面から来るのが怖いから騎手は嫌らしかったけど誰も騎手をやりたがらなくてじゃんけんで負けて騎手になったらしい。


「杉ちゃん全然背ネーム合ってないね。」

「はは…ほんとだわ。」


絶対に『スーパースター』って顔ではない。


「これより海星高等学校体育祭を開始する!」


校長がそう言ってピストルを鳴らし、体育祭が始まった。


俺達は暑すぎるグラウンドから真っ先に体育館へ向かう。


「ねぇねぇ今日外競技なんかあったっけ?」

「ない。今日は球技とかオセロとか。」

「外競技明日からかぁ。日焼け対策しなきゃ。」

「拍もう焼けてる。」

「嘘!?」

「ウソ。」

「もう!ふざけないでよ!」


痴話喧嘩もいいところだ。


「お前らちゃんと熱中症対策しろよ。」

「七瀬くん!?その格好…。」


自販機の前を通ると、七瀬がいた。七瀬はコーヒーを二本買っている。


しかし珍しく肌を出している。黒いTシャツには目立つ細くて白い腕。ちゃんと食ってんのかよと学生が心配になるレベル。


「七瀬、俺達に奢りでジュース。」

「ふざけんな。俺にそんな金はない。」

「教師って稼げるんでしょ?」

「俺達だってジュース買う金ぐらいあるのに公務員様がないわけないよなぁ?」

「黙れ眼鏡。おい創太、双子、こいつらを黙らせろ。」

「無理、僕もジュース欲しいもん。」

「俺は炭酸でいいよ。」

「馬鹿お前一番高いやつ頼んでんじゃねぇよ。」

「いいな黒川!俺もコーラがいい!」

「買わねぇって。」


七瀬に乞食したところで絶対に買ってくれねぇし。それをわかっててこれをやっている。


というか旭は毎回このノリに入ってこない。なんでだろ。呼んでみるか。


「あさ…。」

「…双子って…名前で呼んでよ…。」

「…っ!?」


なんだなんだなんだ!?なにが起こっているんだ!?いつも双子って呼ばれていたのにいきなり個人名呼びを希望!?


いや双子って呼ぶのもどうかと思っていたけど。


しかもこいつの顔完全に恋しちゃってる顔だし、小声でボソッというあたり…今まで何も気づいていなかったし察してもいなかったけどまさか旭って…。


「…旭。」

「っ!なに!?」

「呼んだだけ。」

「な、なにそれぇ!」


めっちゃ笑ってる。


俺これ気づいちゃいけなかったやつかな…知らないフリするべき?聞くべき?というかいつから?どこを?


クソ!試合前になんでこんなの気づいちゃったんだろ俺。こんなの気になって試合に集中できねぇよ。


「まぁパン食い競争のパンでも俺にくれればいいから。」


手を振って保健室に戻っていった。俺らの収穫は無し。


呑気なこと抜かしてんじゃねぇぞこの銀髪頭!


こんな不良のどこにそんな顔真っ赤になるまで惚れちゃったんだよ旭ぃ…。好きな人いるのか気になって聞いても口を意地でも割らなかったのはそういうことかよォ…意外すぎだろォ…。


「あいつ日本語おかしいぞ。」

「人が一回口にくわえたやつを食おうとするな。しかも生徒のを。」

「…今からパン食い競争に変えてもらえないかな。」

「なんで?」

「…お腹すいた。」

「早。」


違うだろ、お前はあいつにパンをあげたいんだろ。…まぁこのふわふわ旭があんなトゲトゲ七瀬を好きなんて知ったら拍は確実に大暴れ。


今は言わんどいたほうが絶対にいい。先生に恋とか普通に言える話じゃないし。俺からも触れないどこ。


「最初は女子バレー、その次は男子バレー…バスケ、オセロ、ドッジ…。ハードスケジュールだな。」

「橋本がオセロ以外全部にエントリーしてるだけ。俺達は別に普通。」

「逆に黒川はなんで動けるのにオセロしかエントリーしてないんだよ。」

「俺リレーだからさ、頭脳戦だし。」

「俺が脳筋って言いたいのか!俺もリレーだし!」


俺オセロ超苦手だからそもそもボードゲーム系の競技オール無理だけど…。


リレーってことはこいつは絶対にアンカー…俺がアンカーの座を奪ったはずなのに結局同じかよ。緑と青も陸上部のやつだし、勝てるかわかんねぇな。


「今まで学年対抗だったのに色対抗になっちゃったからね。二人共頑張って!」

「旭以外は応援無しかよ?悲しいぞ?」

「色違うし。」


室内にいるのにハンディファンを使う三人に俺は指をさして大声で物申した。いや、宣言した!


「いいか!?俺は絶対にお前ら赤組に勝利する!白組とかいう弱そうな色の組に配属されてちょっと悔しいからな!」

「白組に謝れ。」

「そうだよ!絶対に黒くんには負けないから!この体育祭は僕達白組…じゃなくて僕が勝つ。」

「チーム戦だし…。」

「うるさい!とにかく絶対に勝ってやる!ね、橋くん!旭!」

「おう!当たり前だ!」

「う、うん!頑張ろ!」


負けず嫌いの拍がいてくれて非常に心強い!旭もスポーツ万能だしバスケにかかれば旭にかなうやつは中々いない。


ここの二人だけで十分に期待ができる。これは白組一丸で頑張るしかない。打倒赤組緑組青組!


「はーっはっはっはっ!」

「ここらへんあっつ…。」

「それな…。」

「日ないのに日焼けしそー。」

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