寒い。
「さみぃな!」
朝っぱらから吹雪いている中でいきなり橋本がそう叫んだ。周りに人がいたら恥ずかしすぎるやつ。
今は登校中だけど俺と橋本と吉竹が住んでいる地区は割と近く学校までは遠いため、同級生や先輩に歩いてる途中会うということはほぼない。学校が近くなればそりゃあるけど。けど今は周りに人がいないからそれが救い。
「お前ほんとうるさい。」
「寒いっていうほど寒くなるんだぞー。」
「もうその嘘わかってる。保育園の頃から言われ続けてるけどどれだけ言う回数減らしても暑いものは暑いし寒いものは寒い。」
「わかってるなら言うな。こっちまで寒い。」
「だーかーらーどうやっても気温は変えられないし雪は吹雪いてるんだから寒いものは寒いべ。」
俺たちの住んでいる場所は秋田県。確かに何をやったとしても秋田県で雪がなく寒くない冬をなんて無理な話だわ。
この時期になると手袋、マフラーは俺の必須アイテム。これがないと俺は冬生きる術を失ってしまう。よって、この二つがないと俺は死ぬ。
「きゃーさむーい!」
「スカートめくれちゃう!」
「……」
「…かわいいな。」
「嘘だろ。」
冬、風が吹いてスカートを押さえる女子たちに毎年思うことかある。
寒いなら、めくれて困るならタイツを穿け。防寒をしろ。
なんで女子は冬にまであんなに脚を出すのかわからない。スカートは制服だから仕方ないとしてスカートが寒いならタイツを穿けって思う。あれは断じておしゃれではない。断じてな。
「おいあれを可愛いって思わないのかよー。」
「んー、寒そう。」
「うわぁ杉崎つまんねぇー本当に男?ホモ?」
「ホモじゃねぇ。死ねハゲ。」
「まだ禿げてねぇから!」
「いや橋本は後頭部少し禿げてるよ。」
「嘘だろ!?どこ!?」
「まぁ嘘だけど。」
「あぁ!?なんだお前!吉竹お前そんなんだからモテないんだぞ。」
会話がクソ。口が悪い。
お互いがお互いを馬鹿にして蹴落し合える関係ってこういうことな気する。気なだけでただ性格が悪いだけかもしれない。
げらげら笑いながら寒さに耐えながらも歩いてやっと学校についた。玄関には雪を払ったりとりあえず体を温めたりしている生徒がたくさんいた。そして温かそうな耳あてをしている女子生徒を見て羨ましく感じた。
「さみぃ〜よ。」
「今日マイナス6℃だとよ。」
「うわバカみてぇ。」
「杉崎お前、バカみてぇとか言うけどお前の頭よりかはましだろ。」
「その発言がバカみてぇ。」
「おいバカバカ言うなバカが際立つ。」
対して成績良くないくせに俺はいいですよ的なスタンスでいる吉竹。お前もバカだろとはバカみたいに見えるからあえて言わない。
靴棚に靴を入れたらまた普通な一日の始まり。
変な挨拶をして、先生をからかって、移動教室に遅刻して、普通の一日。
何事も普通が一番。
今日も普通にゆるっといきますか。
「おいバカ共行くぞー。」
「うるせぇバカ眼鏡。」
あ、言ってしまった。
橋本のダウンのフードに大量の雪を入れておいたのは橋本も知らない話。