気まずい次の日。
「……。」
「……。」
「…ねぇあの二人朝からどうしたの?」
「喧嘩だよ喧嘩。」
「やっぱり…。」
「珍しいよね、本気の喧嘩。なんか今回ガチっぽいよ。」
「なんで喧嘩してんの?理由は?」
「まぁ橋本の嫉妬…だけじゃない気するけど。まぁそんな感じ。よくわかんね。」
「聞いても二人とも絶対に教えてくれないの。」
「言いたくないんでしょ。」
全部聞こえてる。小声で話してんのかもしれないけど声がでかい。
昨日の放課後、俺と杉崎は大喧嘩をした。
そして、
「…まさか仲直りのキスでもしたんじゃね!?」
「はぁ?もう馬鹿じゃないの?どっからどう見ても仲直りしてないでしょ。」
「キスして気まずいとかあるだろ?」
「ないないないない!あの二人はないから!」
「はいキスとかそのへんで終わり。そもそも付き合ってないでしょ。」
「わかってるって!」
俺は杉崎にキスをした。
杉崎が菊池にキスをした。杉崎が俺に隠している内容を菊池には言った。
この二つが原因で俺の嫉妬が爆発してブチギレ&メンブレをして、それに杉崎が反論してキレるという負の連鎖。
そして杉崎が少しも俺を意識してないとわかった。
何かが吹っ切れた俺は、杉崎の肩を掴み壁に押し付け、逃げられないように手首を掴んでキスをした。
このように超絶ハイスピードで出来事が進んだ次の日の朝が今。
「…旭?」
「な、なに!?」
「…なんで顔赤いの?」
「さては誰かとキスしたなぁ!」
「そうなの!?誰!?誰なの!?」
「お、俺じゃないよー!」
「へぇ、じゃあ誰?」
「それは…んー!」
「あー!言わない気だな!」
うるせぇ。
四校時終了のチャイムが鳴った。
「黒川、昼…。」
「黒川昼飯一緒に食べよ。」
杉崎が黒川に昼飯を誘うのを横入りして阻止した。杉崎はめちゃめちゃイライラしている。顔に出すぎ。
名付けて【やっぱり橋本じゃなきゃだめ大作戦】だ。
1,杉崎をぼっちにする。
2,杉崎は菊池のところへ行く。
3,いつもとの違いに気づく。
4,『橋本がいないだけでこんなに違うんだ…。』と思わせる。
5,『やっぱり聖じゃなくて橋本がいい!』と言わせる。
我ながら完璧すぎる作戦だ。
「あいつまた子供っぽいこと考えてんな…。」
「ねー。」
「よし…。」
「吉竹も!な!あさ…。」
「旭と拍は俺と一緒な。」
反撃開始モード突入。杉崎は旭と拍の腕を引っ張って自分の方に寄せた。
うわこいつきったな。どうしようこのままじゃ俺の最高傑作の作戦が…。
「み、皆で食べよ!ね!」
旭の提案で結局一緒に食べることになった。
今日のところは作戦失敗。この調子だとしばらく喧嘩が続く。もっといいのを考えなきゃ。
「でさー!恐竜の卵かと思ったらうずらだったんだよ!」
「それ馬鹿なだけでしょ。」
「……。」
「……。」
「…なんで喧嘩したか聞いていい?」
「…言いたくねぇ。」
「…ん。」
「じゃあ…どっちが悪いの?」
「こいつ。」
「あいつ。」
俺達は二人同時にお互いを指さした。
こい…つ、マジでさぁ…!
「あぁ!?元はと言えばお前が原因だろ!」
「お前が変にキレるからだろうが!人のせいにすんな!」
「…めんど。」
こっちだって喧嘩したくてしてるわけじゃ…いや、変に意地悪いことをして喧嘩を悪化させてるのは俺…?どっちかが謝れば済む問題を謝る雰囲気を作らせないように俺が無意識にしているのでは?
待て待て待て。そもそもこの問題ってよく考えれば悪いのって…俺じゃね?ん?…ん?
聞きたくないからって理由で杉崎の理由をまともに聞こうとしないで…で、それに杉崎がキレて…俺は杉崎にキス…。
俺ただのやばいやつじゃね…!?しかもあれはレイ……いやいやいやいやいやいや。
ずっと杉崎が悪いって一方的に思ってたけどよく考え出ればこれは完全に俺が悪いことがわかってしまった。
…よし謝ろ。後でめんどくさいことにならないように。俺はやればできる子橋本信也。よしっ。
「…杉崎。」
「…なに。」
「…はっ!キスもしたことない童貞がなんか言ってて笑っちゃいますわ!」
「キ…スは…っ!」
やってしまった。
いや無理無理無理。あんだけやっといていきなり謝るとか絶対無理だし。しかも昨日のことわざわざ掘り返したし。あーもう最悪馬鹿すぎ早退したい。
というか俺だって初キスだし童貞だし、人のこと言えねぇし。やばいいきなり罪悪感増大で死にたい。
…でもこいつ顔めっちゃ赤くね…?昨日を思い出してる…?単純にキレてるだけ…?
もし思い出してたとしたらそれって意識して…。
「お、俺のこと好きなくせに!」
「は、はぁ!?なわけねぇし!嫌いだし!」
「よく言うよ。なんで…なんでなの!?って言ってたくせに!」
「んなこと言ってねぇよ!この童貞!」
「童貞はお前もだろ!」
「食事中です。」
「えーなに付き合ったん?」
「ねぇから!」
「馬鹿じゃねぇの!?」
「なんで俺がキレられてんだよ。」
売り言葉に買い言葉でくだらない言い合いが続いてしまった。
俺達が喋れば余計状況が悪化する。そう思った。
てかやっぱりこいつ俺が自分のこと好きなの気づいて…っ。
「…キスって早くない?高校生で。」
「…何急に。」
ずっと無言だった旭がいきなりピンポイントな話題を口に出した。
「いや、考えたんだけどやっぱり早いよねって。だって高校生ってまだ子どもなわけで、そういうのって大人、せめて高校卒業してからがいいんじゃない?」
「えー旭遅れてるよ。キスぐらい高校生にでもなれば経験してる人多いよ?」
「それはわかってるけど…うーん。」
「そんなに真面目に考える?」
「だって高校生だよ?自分のことしか考えないで強引にする人だっていそうじゃん。」
「う…っ。」
心が痛い。グサッと言葉の矢が刺さる。
ごもっともすぎてもはや何も言えない。
「成人でもいそうだけど。」
「あとキスされてしばらく気まずそうじゃない?高校生だと。」
「まぁそれはあるかも。」
「クラス同じとかだったら最っ悪。俺怖いもん。」
「ん…っ。」
やっぱり杉崎にも効いてる。
というか旭まさか昨日の黒川と拍のキスまた疑って…さてはずっと考えてたな。
でも二人の反応を見るからにキスをしたようには思えない。もっともじもじしてそうだし。特に拍。
そうなるとこれは今の俺達にヒットする話題になるんだよな!本当に気まずいったらありゃしない!杉崎なんか自分のこと手であおいでるし!
…この反応はやっぱり俺のこと意識…いや変なこと思うのはやめとこ。後で違うってわかってて病むの目に見えてるし。
そもそも一回キスしたぐらいで意識とかチョロすぎる。杉崎めっちゃ一途なタイプだから、もし本当に菊池のことが好きなんだとしたら絶対に違う。
…好きなのかなやっぱり。
だーーー!考えたくねぇよこんなこと!
「だから卒業後のがいいってこと。」
「そんなの人によるでしょー。」
「わ、わかってるけど!もー!」
早く旭からキスへの探究心を離さなきゃ。じゃなきゃ俺たちがずっと気まずい!
その日の放課後、俺は黒川に呼び出された。
「なんだよ黒川話って。」
「…したでしょ。キス。」
「……。」
…まぁそりゃバレるよな。わかりやすかったし。
一方その頃。
「お前らやったな。」
「は、はぁ?何を。」
「…キス。」
杉崎は吉竹から呼び出されていた。
そして当然のようにこちらもバレる。




