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恋なんかじゃない。  作者: おたくだが
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第一印象


俺と敬先輩。元生徒会長との出会いは最悪だった。


「生徒代表 松田敬。」


高校の入学式の日。金髪で後ろに髪をくくっているなんともガラの悪い生徒会長がステージに上がった。


よく見るとピアスをつけている。生徒会長があんな格好をしていていいのだろうか。不良学校に来てしまったのではないかとすごい怖かった。


「は、はいっ!」

「…今声裏返ったよね。」

「…うん。」


名字の頭文字が近い黒川が隣でそう言った。黒川がこの高校の制服を着ているのが違和感しかない。


黒川と拍なら隣町の海星高校も行けていたと思うのに。


ふと中三の冬のことを思い出した。







『本当にここにすんの!?』

『まぁね。』

『な、なんで!?拍と創ちゃんなら絶対別の所に…っ!』

『二人で決めたの。…馬鹿馬鹿しいかもだけどやっぱり僕はたった三年間の高校生活は皆といたい。』

『俺も。』

『だからって…自分のレベルわかってなさすぎだろ…。』

『吉竹、俺達別にわかってないわけじゃないよ。ただどうしてもこの皆と一緒にいたいだけ。』

『でも進路がかかってくるんだよ!』

『なら首席でいればいいだけ。俺は中学三年間学年一位を継続できてたんだからいける。』

『進路の選択肢の幅は狭まるけど元の頭の良さならこっちも負けてない。』

『でも…っ。』

『高校では僕が学年一位を取ってやるって勢いで勉強してやる!それに自分よりレベルが下の高校のほうが一位の可能性は上がるしね。』

『俺もいるから意味ないと思うけど。』

『いいの!とにかく頑張って学年一位の座を奪ってやるから!』

『…というわけで俺達進路希望もう出しちゃったから。』

『逆にまだ書いてるの?おそ。』

『はぁ!?出したって…はぁぁ!?』

『もうありませーん。』

『いいか!?返してきてもらえ!それか志願変更を出せ!』

『やだよ!もう出しちゃったもん!』

『馬鹿が…。』

『俺達お前らが将来どうなっても知らねぇからな…。』

『自分の心配しなよ。本物の馬鹿なんだから。』

『でも俺、海月も行けるかどうか…。』

『…旭そのペンちょっと僕に貸して?』

『え、うん…ってなに勝手に書いてるの!?これ進路の…。』

『旭も一緒に行くの!』

『でも…。』

『でもじゃない!いい?六人でいたいから僕と黒くんはこんな底辺の馬鹿校を選んだの!自分の兄がそこにすらいないなんて嫌だからね!』

『そ、そんなぁ…。』

『ほら出しに行くよ!出しに行ったら全員で黒くんの家で勉強会ね!今日から毎日!』

『拍はこういうときだけ俺を使って、どうせこたつ入りたいだけでしょ。』

『当たり前でしょ!あとお汁粉にお餅!』

『…ガチで言ってんの?』

『…なに空良ちゃん。冗談で言ってるって思ってるの?』

『だって…っ!』

『まぁいいんじゃね?こんなに行きたいって言ってるんだからさ。』

『そうそう橋くんの言うとおり!決めるのは僕自身。』

『でもさすがに…。』

『…なんでそんなに執着するの?空良ちゃんは結局は他人なわけじゃん?』

『…他人なんて思ってない…っ。こんなに家族みたいに過ごしてた奴らを他人なんて思えるわけない。』

『…俺も杉崎と同じ。なんか俺達が頭悪いせいで無理してついてくるのかなって思っちゃう。』

『…吉くん、本気でそう思ってるの?』

『……っ。』

『旭は?旭はどう思ってるの?』

『俺、は…。…心配だよ。二人はもっと上にいけるのに。そのチャンスをドブに捨てているようなものなんだよ。』

『旭…。』

『俺は皆より出来が悪いし、弟の拍よりできないし…っ海月にも行けるかわかんないのに…っ。』

『深く考えすぎなんだって。正直僕自分の進路そこまで成績重視しないところ、まぁ専門学校行くし。』

『俺はそもそもいい大学入ろうなんて思ってないし、そもそも進路なんて全然まだわからないしね。』

『……。』

『俺の頭が悪いって言いたいの?』

『そんなこと…っ!』

『旭が思ってる以上に俺達は秀才だよ。』

『そうだよ、いきなり大学行きたいって言っても行ける頭はしっかり持ってるんだから!お金は…わかんないけど。』

『…絶対後悔しないってわかるから。』

『うん、同じ気持ちなのはなんか不服だけど黒くんの言う通りかな。』

『……っ。』

『もう三人ともそんな顔しないでよ!らしくないなぁ!』

『そうだぞ三人とも!』

『開き直ってるみたいだけど橋本もそこまで頭いいほうじゃないからね。』

『拍…。』

『なに?』

『……。』

『…僕は旭といたいの。同じ家にいるとしても学校も同じじゃなきゃ嫌なの。』

『出来なんて関係ないよ。二人とも双子ってだけでぜんぜん違う人間なんだもん。少なくとも旭は拍より可愛げあるし。』

『ちょっと黒くんそれどういう意味!?』

『…で、そこ二人はずっとなんで下向いてるの?』

『…絶対後悔したら俺達のせいにされるし。』

『吉くんたちが頭悪いせいでこんな就職先に!って。』

『君達の中の僕と黒くんってどんなだよ。』

『そんなこと思わないし言わないよ。』

『あーもうなにうじうじしてんの!こんな選択させたくなかったならもっと勉強頑張りなよ!』

『お前成績は関係ないって!』

『そんなこと一言も言ってないわ!いい!?今から成績なんて引き返せないの!全部一年生の頃からの積み重ねなんだから!』

『それはそうだけど…。』

『君たちは僕達の成績と同じレベルの高校には到底行けるわけがありません。だから僕達は君達と同じレベルの高校に行くの!これも全部皆とずっと一緒にいたいから!ここまで言えばいい!?わかる!?返事!』

『は、はい…。』

『すみません…。』

『おっかねぇ…。』

『もうそれ早く出してきて。僕トイレ行ってくる!』

『あー行っちゃった…。』

『悩んでたのは俺だけだったよ。』

『え?』

『俺は皆といたいけどその先の進路が心配でずっと悩んでたけど拍はねすぐだったの。』

『…拍はなんて言ってたの?』

『先のことより今を楽しみたいし、皆と一緒にいれなくなって後悔するのは絶対に嫌だって。』

『拍…。』

『俺は別に皆はどうでもいいけど拍といられなくなるのは困るし、まぁそんな感じ。』

『お前はほんっとに…。』

『あと旭がいないことで寂しそうな顔をする拍も見たくないから。』

『クズだな。』

『なんでこんなのがモテるのかいまだにわからん。』

『まぁ嘘だけどね。本当は皆大事。』

『ほんとかよ。』

『ほんとだって。橋本だってちひろくんと同じ高校に行きたいでしょ。』

『もちろん!はぁ、ちひろくんと同じスクールライフなんて夢にも思ってないけど頑張ればそれが実現してしまうんだな…!』

『ぜんっぜんわからない。』

『まぁ弟からしたらキモいだろうよ。』

『橋本が生徒会に入ればちひろくんと放課後も一緒に過ごせるよ。』

『あー…それはダルいわ。めんどい。』

『お前なんなん。』

『そもそもここの中から生徒会に入るやつがいるとは思えない。』

『お前ら不向きすぎ。』

『いや吉竹お前が一番向いてないから。』

『杉崎だろ向いてないのは。』

『まぁありもしない話するのはやめようや。』

『ふぅ…ってまだ出してないの!?もうとっくに出しに行ってると思ったのに!』

『未来の話をちょっとね。』

『なにそれきもちわる。それ貸して!』

『あ、ちょ!』

『僕が出してきてやる!』

『おい!返せよ!』

『ここまで書いたなら早く出しな!』

『拍!俺まだ第一希望しか…っ!』

『ここ以外には行かせないからいいの!』

『なに言って…っ!』

『僕のお兄ちゃんなんでしょ?かっこいいとこ見せてよ。』

『…もうっ。』







そんな感じで結局拍が出しに行ったんだよな。走った勢いで職員室のドアに五人でダイブしてドア壊してブチギレられたんだった。


よく思い出してみれば六人してキレられた思い出がありすぎる。黒川と旭に関してはほぼ巻き込まれみたいなものだし。


「え、えっと…ほんじ、うっ…。」

「おい敬!敬!しっかりしろ!」

「ちょっとなにしてんの!だから昨日焼肉食べ過ぎだって言ったのに!あ、ちょ!俺の制服に吐こうとしないで!?」

「先生!敬先輩を保健室に…っ!」


会場は大騒ぎになった。ここまでひどいと笑いを堪えるのが大変になる。


一言目で生徒会長が吐きそうになると、ステージ裏から三人の生徒が出てきた。おそらく生徒会メンバーだろう。中には吉竹の兄のちひろくんもいる。


あの時、生徒会どうこうって話をしていたけどなんか生徒会って思ったよりかっこよくない。


生徒会の印象が思いっきり覆された入学式だった。こんな入学式忘れたくても忘れることができないだろう。

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