俺らの恋人。
キーンコーンカーンコーン
一日が終了のチャイムが鳴った。きっと学生にとって一番嬉しい瞬間な気がする。
「んぁ〜〜っ!終わったぁ!」
橋本が大きく伸びをした。
「橋本バイトなんだぁ。かわいちょ〜。」
「うるせぇな。赤点取って無断でバイトやってるやつに煽られたくないね!」
「はっしーも赤点だし無断バイトでしょー。」
「そう言う旭もね。」
「う…っ。」
この六人は黒川と拍以外成績が絶望的に悪い。
順位をつけて並べるのであれば、
黒川 拍 橋本 吉竹 杉崎 旭
といったところだろう。
ぶっちゃけ俺は学歴で決まる世の中なんてくそくらえだと思っている。これは勉強をしたくないがための言い訳にすぎない。
「全くもう、君たちももっと僕を見習うべきだね!」
「そう言ってお前いつも黒川に負けてるけどな。」
「は?杉崎くん?」
あ、やべ地雷踏んだ。まぁいっか。
拍はプライドが馬鹿みたいに高い。もう一周回って馬鹿なのではないかと思うときが多々ある。
自分より上の黒川をライバル視してちょっかいをかけて煽る。俺からしたら好きな子にいじわるする小学生にしか見えない。いや、多分拍以外みんな思ってるな。
「黒くんは無表情だから可愛げがないなぁ。僕を見て!この洗練された見た目に完璧なまでの愛嬌!」
「おい旭、あれお前の弟だろなんとかしろ。」
「よっちゃんだめだよ。あーなったら俺だって止められないんだから…。」
旭もお手上げな程自信満々な拍。自分の見せ方をわかってるっていうか上げるのがうまいっていうか。
「こんなに可愛い僕があんなチベットスナギツネみたいな目してるやつに負けるなんてありえないんだから!」
「…チベ?」
「ぶふっ。」
やばい吹いちゃった。
例える動物がマイナーすぎて理解が追いついていない黒川の間に耐えれなくなり盛大に吹き出してしまった。なんなら似てるのもわかる気がする。
「待ってチベットスナギツネってこれ?」
「あーわかる!わかるわ!!!」
「えぇ…全然俺に似てないけど。」
「お前こんなにそっくりな動物中々いないぞ。」
「杉崎には俺がこんな目つき悪く見えてるの?」
「ほら似てるでしょ!」
吉竹がスマホでチベットスナギツネの画像を調べそれを囲うように見る。
男子高校生六人が囲ってチベスナの画像見てるのシュール過ぎるだろ。どんな映像だよ。
「…馬鹿なこと言ってないで帰るよ」
黒川は拍の手首を掴み自分の方へ引き寄せた。
「は、はぁ?今日は別々って…」
「俺の顔を馬鹿にしたから罰ゲームでーす。」
「最っ悪…」
「じゃあ明日ね、旭と橋本はバイト頑張って。」
「おう!」
「拍ー!母さんに伝えておくからね!」
「うるさいっ!」
黒川は拍を引っ張って横断歩道を渡り、雪道を歩き帰っていった。
「…なんか黒川キレてたな。」
「…こわ。」
そうなんだよなぁ…あいつらそうなんだよなぁ……。後姿を見てしみじみ思う。
仲は悪いし、テスト期間中はいつも火花散ってるし、黒川は悪気ないし、拍は強気すぎるけど、
あいつらデキてるんだよなぁ…。