現生徒会。
「おはざっす。」
「空良さん!おはようございます!」
「おはよ。」
「先輩おはようございます!」
「おはようございます。」
「おはよ。ごめん少し遅れた。」
廊下に邪魔な奴らをとりあえずおいておいて生徒会室へ行くとおなじみのメンバーが挨拶をしてくれる。
はぁ…部活ない日の休日の学校ほど鬱なものってない。今日は学校一斉部活ない日だったのになんでこなくちゃいけないの…。
「はぁ…ここの学校生徒会六人とか少なすぎです。他の学校だと議長とか庶務とかいるからこんなに仕事たまらなそうなのに。」
一年生で書記の優稀が資料を整えながらそう言った。
「まぁそれはそうだな。」
「同感です…。ま、まぁでもこうやって集まってお仕事するのも青春って感じして楽しいじゃないですか!ね!」
「予算で人増やすとかできないんですか?」
「予算とかの問題じゃないなこれは。学校側の問題だな」
執行部もいるけどうちの執行部はだめだ。性格がひん曲がっていて自ら何もやらない。正直宛てにしてないし俺たちは苦手。
まぁ特に百合先輩と俺が執行部を大嫌いなんだけど。
「あの…廊下に誰かいません?」
一年生で広報の涼がドアの方を指さした。
まぁきっとあいつらだろう。そろそろ呼ぶか。
「あー…なんか色々事情あって着いてきた俺の友達とここのOB。」
「どうもー。」
「うわすごい資料。これ全部やるの?」
「は、はい!」
「えらいこっちゃえらいこっちゃ。」
「旭くん!」
「聖くん!ごめんねぇいきなり押しかけて!迷惑じゃない?」
何年か越しの再開かのように抱きつく旭と聖。
部活も委員会真クラスも全て違うのになぜかここは仲が良い。
「ううん、そんなことないよ!」
「ほんと!?よかったぁ。今日は俺たちが生徒会の仕事お手伝いするから何でも言ってね!」
「えぇ!いいの?」
ここだけ少女漫画の世界みたい。きゃぴきゃぴしててかわいい。これが萌。
「じゃあ皆さん宜しくお願いします!」
「力仕事なら任せな!」
「何でも頼れよな!」
橋本と吉竹が腕を曲げ筋肉ポーズをした。
「空良さんあのOBの方って…。」
「あれ、あんたたちあの馬鹿二人どこにおいてきたの?」
「先生に挨拶行ってる。」
その時ドアがカラッとあいた。
「よっ。聖。」
「久しぶりだな。」
「うわぁっ!会長!副会長!」
また聖は二人に勢いよく抱きついた。シンプルかわいい。
「うおぉっ派手なお出迎えだな。」
「私二人に会いたかったです!」
「そう言ってもらえて、うれ、し…。」
「あーあーちひろ泣いちゃったよ。なになにそんなに現会長・副会長がいやかぁ。わかるわかる。」
「そ、そんなことはないです!二人とも優しいですし…そろそろ引退しちゃいますけど……。」
「冗談冗談。聖お前は優しいな。」
「えへへ、先輩方の後輩ですから。」
「ん…っと、えー…っと?」
「あ、この二人が一年生。広報の涼と書記の優稀。」
「ど、どうも…。」
「こんにちは…。」
二人は俺の後ろに隠れた。
人見知りするタイプでもないしただ単に知らないでかい人がきたのが怖かったのかも。敬先輩は金髪だしちひろくんは服柄悪いし最悪な状況。
「ねぇ俺たち警戒心マックスなんだけど。」
「そりゃ知らないんだからそうですよ。涼、優稀、この金髪の人が去年の生徒会長の松田敬先輩。適当に馬鹿って呼んでいいから。」
「おい。俺成績トップでしたけど。」
「この眼鏡のインテリぶってる人は去年の副会長の吉竹ちひろ先輩。そこにいる眼鏡の人のお兄さん。」
「誰がインテリぶってるだ。」
「よろしくお願いします!広報の清水涼です!」
「よろしくお願いします。書記の遠藤優稀です。」
俺の前に出てしっかり挨拶をした涼と優稀。
涼と優稀は現生徒会で一番まともな二人。仕事も早いから皆から頼りにされている。
「清水涼くんっていうの?すごい綺麗な名前だね。」
「ほ、ほんとですか!?ありがとうございます!」
「部活は?」
「野球部です!」
「茶道部とかだと思ったよ。」
「優稀くんだよな?なんか雰囲気百合に似てるな。」
「…っ!」
「あ、地雷だった?」
「んー?違うよねぇ優稀ぃ。」
「…うるさいです。」
優稀はそっぽを向いた。
何にせよ優稀は百合先輩を追いかけてこの高校に入ったらしい。百合先輩は知らないらしいけど。この話を聞いて大和先輩が優稀を警戒しているのが何より面白い。
「じゃあ早速始めますか。先輩、その他今日はよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします!」
「おい今その他って言われたな。」
「言われたな。まとめられたな。」
「じゃあそれぞれ仕事がかなりあるから班ごとに分かれてもらおっか。んー…優稀今自分の仕事ないよね。」
「はい。」
「えーっとじゃあ、橋本、吉竹弟、敬先輩は優稀と一緒にここにあるものそれぞれのクラスに持っていってくれる?ちゃんと別れてるから間違えないように。」
机においてあるのは大量のプリントや資料。一人で運ぶのには一年からしたら少し心細い量だ。
「わかりました。」
「任せろ!ほら可愛い後輩たち!行くぞ!」
「最悪…なんでちひろくんじゃないの…。」
「お前早く歩けよ。」
「あの人達疲れる…。」
優稀はそうぼそっと言って追いかけた。
優稀と橋本には申し訳ないけど残ってるメンバーで力仕事が向いてるのはあんたたちだけ。
優稀は力仕事って感じじゃないけど体育会系のこの三人がいれば安心できる。
「旭は涼と一緒に広報の仕事をしてほしくて…今涼はもう少しあとの生徒会新聞作ってるから手伝ってほしいのとそれが終わったら学校の写真を撮ってきてほしい。」
「写真?いいけどなんで?」
「ブログとかSNSに載せなきゃいけないんだよね。まだ冬の撮ってないから撮ってきてほしい。」
「わかった!涼くん!一緒に頑張ろ!」
「はい!」
旭はセンスがいいからいい写真を撮ってくれるはず。それに涼だけじゃ手が回らないこともあるからそこは旭に頼む。
「黒川、あんた電卓得意だよね。俺と一緒に作業しよう。」
「ババ引いたかも…。」
「待ってババはしぬ。ぷっ、あっはっはっはっはっ!」
「拍笑うな。喜べ。まとめないといけない数字いっぱいあるからこれ一緒にやろ。」
「わかった。」
「拍とちひろ先輩はそこにある資料合ってるかどうか見てください。」
「この時期忙しいもんな…イベント後だったりするしす…それにしてもすごい資料の量だな。」
大量の資料が積み重なっている。落とすと危険なので机を横に並べてギリギリまで落とさないようにしている。
「ほんとに…これ定期的にやらないの?」
「やってはいたんですけど優先しなきゃいけない仕事が次々に入ってきちゃうので…あはは…。」
「生徒会って大変…入らなくてよかった。」
「よし、じゃあ頑張りますか。」
「しっかりリーダーシップ取れててすごいな。」
「ほんとですか?」
席に戻ろうとしたらちひろくんにそう言われた。初めて言われたし自覚なんてなかったから変な感じがする。
「先輩の背中を見て育っただけある。」
「まぁちひろくんはまともだったしそれはあるかも?」
「俺じゃないよ。敬だよ、敬。」
「え、えー…あれ?あんなの見てたらろくな先輩になってないよ…。」
「まぁ気持ちはわかる。」
わかるんかい。心のなかでそう突っ込んでしまった。
かなり前から言われていた。敬先輩の俺がにていると。自分だと全然わからない。
「でもな、お前が率先してリーダーシップとってるところすごい敬に見えた。いつもふざけてるけどちゃんとするときは真面目。周りが見えてるから人選もいい。」
「……っ。」
「嫌嫌入った自分の後輩がこんなに成長していて嬉しくないわけがない。」
「空良先輩って嫌嫌入ったんですか?」
「そうそう、まぁ敬の強引な勧誘みたいな。選んだ部活も敬と同じだったし散々なやつだよ。」
「あーそういえばあったねそんなこと。あの時期空ちゃん顔死んでたよね。」
「そうですね、私最初怖かったですもん!」
「掘り返すな。」
「まぁなんだかんだ諦めないところは大和に似てる。お前生徒会大好きなんだな。」
「本当になんか今日ちひろくんうるさい。早く仕事して。」
「はいはい。」
こっ恥ずかしい。一年生の前でやめろって思う。だから連れてきたくなかったんだよ。
ガン無視で電卓をカタカタ打つ。横で黒川がツボりながら電卓を打っては書いてはをしている。
黒川は無表情でイケメン好きではない女子からは怖がられているけど実際はかなりのゲラ。最初知ったとき衝撃だったのを覚えている。
「ねぇ涼くん。」
「はい?」
「杉ちゃんって口悪いしうるさいけどすごい優しいし涙もろいし可愛いところもいっぱいあるから優しくしてあげてね。」
「はい!俺空良先輩大好きです!」
旭が涼に変なことを教えた。
なにこれ拷問?
普段から褒められなれているわけではないから正直褒められることは得意じゃない。どちらかというと反応に困るから苦手なんだけど…。
「まじで余計なこと言うな。」
「だって誤解してるかもじゃん!」
「はぁ?誤解なんかしてないよな?優しいよな?涼?」
「たまに怖いっす!」
「はぁ…。」
少しだけ話し方を改めてみようと思った。