僕たちの秘密。
「ふぁ…おはよぉ…。」
「拍遅いよ、もう作っちゃってる!」
昨日吉くんの家に泊めてもらったお礼に今日の朝ごはんを僕たちが作ることになった。
僕はソファにコテンと横になった。
「ほんとにお前の弟朝弱いんだな…六回起こしても起きなかったぞ。」
「むかしからなんだよねぇ。四人は地区が違うから知らないと思うけど小学校の夏休みのラジオ体操カードも拍の分も押してもらってたんだよ。懐かしいなぁ。」
あぁもう吉くんが余計なこと言うから僕のだめなところが旭に言われてしまった。お陰ですごいニヤニヤしてるし。
そう。僕は朝に滅法弱い。吉くんが六回も起こしてくれてるなんて今始めて知った。
「まぁ僕料理できないからいても意味ないけど…。」
「もうそんなことないから!創ちゃんだって料理できないけど料理してるよ!」
意外なことに創ちゃんも料理ができない。
小学校の調理実習で軽く事故を起こしてから、中学校の調理実習では野菜を洗う・味見担当になっていた。
このギャップが可愛いとか言われてるのが謎すぎる。結局顔かよって思って一週間創ちゃんと口をきかなかったこともあった。
ほんとに子供。
「文武両道何でも完璧な王子様って呼ばれてるのに料理は無理とかうけるんですけど。」
「何でも得意なんてそんなうまい話無いでしょ。」
ほらこーゆーところ。
大人な対応をされると自分と比べてしまう。それに対してイライラする。だから嫌いなんだ。
「…ムカつく!僕もやる!吉くんそれ貸して!」
「零すなよ。」
「子供じゃないし!」
僕は吉くんからたまごサラダの入っているボウルを奪ってイライラを卵にぶつけた。
このたまごサラダは僕の怨念がつまっている。
「杉崎からし貸して。」
「ん。」
「杉崎マヨネーズ。」
「ん。」
「杉崎ハム…。」
「自分で取りに来い。」
「は、はい…。」
僕は人間観察がかなりすき。その中で最も好きなのは橋くんと杉ちゃん。
親友というか相棒って感じがして見ていておもしろい。僕たちには越えられない壁がある。
口は悪いけど優しい杉ちゃんと、マイペースでハイテンションな橋くん。お互い馬鹿なことすることが大好き同士気が合うんだと思う。
僕には旭という兄がいてずっと一緒にいた。みんなのことは本気で友達だと思っているけど誰が親友なのかはよくわかっていない。だから正直羨ましい。
「ねぇ吉竹目分量ってなに。どのくらい?」
「あー目分量はな…なんて説明すればいいんだろ。杉崎ヘルプ。黒川に目分量教えてあげて。」
「目分量は目で見て大体これくらいかなみたいな。味見で調節するからいきなり多く入れないほういいかも。ちょっと貸してみ。」
「なんかあそこ顔面偏差値つよ…きも。」
「そこ3人がビジュアル担当って感じだよね。俺もあんな顔になりたかったぁ。」
「どこがいいのあの顔の。」
「かっこよくない?」
確かに三人ともイケメンの部類に入るぐらい顔が整っている。認めたくないけど周りから見て黒くんは別格。
ハッキリ言って嫉妬だと思う。頭も良くて運動もできてこれで顔までいいなんてって思ってしまう。
自分はあと一歩で毎回創ちゃんに勝てない。別に創ちゃんが何が悪いことをしたわけじゃないけど僕はずっと小さい頃から創ちゃんのことが嫌い。
だからかっこいいなんて思いたくない。
「……わかんないよそんなの。でも僕からしたら旭のほうが何倍もかっこいいから!」
「拍……っ!」
「なぁ拍俺は?」
「……橋くんは中の中って感じ。」
「うわクソ微妙、なんとも言えねぇ。的確なのが腹立つ。」
「なに話してんの?」
「いやぁ?」
「ねぇー。」
「ねぇー。」
僕は旭と顔を見合わせた。
でも僕は知っている。僕たち六人は一部の女子から人気があるということを。
僕たち三人は可愛い組と呼ばれていて、あそこ三人はかっこいい組と呼ばれているらしい。他にもいろんな組分けがあるらしい。
「顔がどうとか聞こえたんですけど。」
「あの3人の中だと吉くんの顔はあんまかっこよくないねって話てただけ。」
「は?一番かっこいいだろ。」
「もうそんなこと言ってぇ。」
「いやいや普通に。」
「え…?」
「どこからどう見てもイケメンだろ?俺。」
「…ガチかお前。」
「ん?なにが?」
「……。」
「ねぇもういいから早く作ろ。お腹減った。」
「うおぉ…すご。」
「久しぶりにこんな豪華な朝ごはん食べるんだけど!」
ご飯でちょうどできたとき二人が二階から降りてきた。結局自分の部屋で寝たらしい。
作ったものは五種類のサンドイッチ
たまごサラダ・ハムレタス・ハムチーズ・ツナマヨ・
照焼チキン。
「まぁほとんど杉ちゃんですけど。」
「まぁな、リアルに杉崎が一番料理できるし。」
「すげぇじゃん。無人島でも生きていけんじゃね。」
「アホなんですか。」
「違う!そんなことない!ちひろくん!俺も早起きしてちゃんと作ったよ!」
「ははっ、なんだよ必死だな。そんなの言われなくてもちゃんとわかってるよ。」
「ちひろくん!」
ちひろくんは橋くんの頭を撫でた。橋くんはすごい嬉しそうに顔を赤らめている。
橋くんはちひろくんが好きなのだろうか。そこも謎なんだよね。憧れなのかそういう意味で好きなのか。
「起きる一時間前からマキシ〇ムザホ〇モンの曲アラームで五回もかけてたらそりゃわかるよね。」
松田先輩が余計な一言。でも本当にそう。うるさかった。
「んぐっ。」
「まじであんたうるさい!あと黒川笑うな。」
「これ食べたら俺先帰るんで。」
「は?なんで?」
「生徒会の仕事結構残ってるので行かなきゃいけないんですよね。」
「杉崎だけ?」
「いや、聖と一年も来ます。」
「なにそれ楽しそう。俺達も行っていい?」
「OBが来たところで何もやることないです。」
「いやいやOBだから行きたいんだよ。俺一年生知らないし。」
「知らなくていいです。」
「でも確かにそうだな、聖と杉崎の関係も気になるし見に行くか。」
あ、また菊池くん。
「菊池と杉崎?」
「だから聖とはなにもないんですって!」
「杉ちゃん聖くんとなにかあったの?」
「ない!」
「なんで菊池さんと?」
「断じて何もない!」
「…怪しい。」
「僕たちに言えないことなんてないよね?」
「杉崎いつからそんな秘密主義だっけ。」
卑怯な真似かもしれないけど皆で杉ちゃんを壁まで追い詰めた。
昨日の夜から気になってたんだよね。なんであんな夜に菊池くんと電話していたのか。きっとあの二人がノリでかけたんだろうけどその後の杉ちゃんの反応が気になって仕方がない。
やたら隠そうとするし布団に潜るし。いつもの杉ちゃんじゃなかった。
「よし!こうなったら皆で行こう!」
「迷惑!」
「どうせ仕事も冬休み明けに向けてのだろ。手伝うって。」
「いいです!」
「よしお前ら制服着て準備しろ!」
「アイアイサー!」
勝手に指示を出す先輩たち。
杉ちゃんには申し訳ないけど気になるものはどうしても気になる。
「しっかり観察させてもらうからね!」
杉ちゃんにそう言って僕は学校に行く準備をした。