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第2章 通報

第2章 通報


 ともかく、このような、異常な動画は、即、警察に報告しなければ……。



 しかし、地元の極田舎の警察署に言ったところで、どうにもならないだろう。犯罪など、交通事故以外は、ほとんど起きた事の無い田舎の警察署には凄く迷惑な話だろう。



 確か、東京の警視庁には、サイバー犯罪対策課があったと記憶している。そこに言うのが適切なのだろうか?



 刑事訴訟法239条第1項の条文に、「何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる」と言う、刑事告発の条文があった筈だ。この条文に基づき、刑事告発をするかだ。しかし、いきなりの刑事告発は、この私にはハードルが高過ぎる。



 いくら、猟奇的場面の動画だとは言え、必ずしも殺人だとは、言い切れないのだ。まずもって、全く、証拠が無い。つまりは、いきなり、警視庁捜査一課に、連絡は出来きる筈も無い。



 ここは、ともかく、まずは、通報するしか無いであろう。



 そこで、話の要点をメモ用紙に書いて、警視庁サイバー犯罪対策課に通報したのだ。刑事告発をするには、告発状を書く等、結構、私には面倒だ。



「あのう、今日、朝、ユーチューブで、幼児殺害を思わせる動画を、ユーチューブで見たのです。動画では、夫婦らしき大人二人の大きなケンカがあった後、ホッケー・マスクをかぶった男が、大きな包丁らしき物を、多分、幼児に振り落とし、その後、幼児の肉を鍋で煮て、喰っていた、と言うオドロオドロした、動画だったのです」



 この、私の、通報に、一旦確かめて見るとして、私の、携帯ガラケーの番号と、住所、氏名、職を聞かれた。



 しかし、数分後、警視庁から、かかって来た電話は、私の予想外のものであった。



 この私が、言った『私は、遂に、我が子を食べてしまいました!』と言う、投稿動画は、どうしても見当たらない、と言うのだ。



 んな、馬鹿な?



 で、私も、同じようにユーチューブを開いてみたが、確かに、先ほどの動画画面は見当たらない。



 これでは、警視庁の刑事も、怒るのも、無理は無いのだ。



「あの、○○(私の本名)さん。私達は、サイバー犯罪対策で、毎日、忙殺されているのです。今回は目をつむりますが、今後、こう言う偽の情報を言って来れば、こちら側も、「偽計業務妨害罪」で、厳正に対処致します」



 何と、この私が、犯罪者扱いされているのだ?



 では、一体、どうやって、この状況を打開すれば良いのか?既に、私は、本名、住所、年齢等は、警視庁にサイバー犯罪対策課に知らせてあるのだ。逃げも隠れも出来ないのだ。



 これは、弱った。



 これじゃ、まるで、私が、デタラメの情報を、警視庁にサイバー犯罪対策課に伝えた事になっているのだ。



 しかし、ふと、思い出したのだ。私が、ユーチューブ動画を見たのは、自宅の液晶テレビでは無くて、私の愛用のパソコン上での、ユーチューブ動画である。このユーチューブ動画をそのまま、パソコンのHDDに取り込むには、実は、特殊なソフトが必要なのだ、



 例えて言えば、ヤフー検索での「お気に入り」に登録するような、ソフトの事である。

 私は、かって、お気に入りのユーチューブを録画しようとしたが、どうしても、既存のソフトでは、パソコン上に、当該動画を、残す事が出来なかった。



 そこで、色々とネットを検索して、この「特殊なソフト」を、パソコンに組み込んでいたのだった。確か、例の、異常な児童殺害の動画を見た時、無意識に、そのソフトを起動していた筈だ。多分、そのソフトにより、奇跡的・偶然的に、私のパソコン上に、あの動画が残っている筈なのだ。


 

 私一人の力では、難しかったので、かっての職場の同僚で、パソコンに詳しい友人に手伝ってもらった。これで、一般の、DVDレコーダーに焼き付け、かつ、再生できる筈だ。



 友人の家で、確かに、再生出来る事を確認後、再度、本名・住所・年齢・電話番号と、簡単な手紙を書いて送った。勿論、事前に、警視庁サイバー犯罪対策課に電話した。



 今回は、今では、既に消えていると言われているユーチューブ画面を録画した、DVD-Rも送ると言ったので、警視庁のほうも、



「それでは、一度は、見て見ましょう」と、今回の返事は、感じは良かった。



 そのDVD-Rには、録画した日時が、記録されている。つまり、ほんの1時間かは、この、キチガイじみた動画が、ユーチューブで流れていた事は、ハッキリと証明できたのだ。



 また、かようなキチガイじみた動画は、ユーチューブ側でも、遅かれ早かれ、削除される事になっている筈だ。



 しかし、警視庁は、「小説家になろう」で、思うように読者ポイントが取れないこの私が、この動画を作った真犯人ではないかと、まず、疑ったらしい。



 何と、次の日、パソコンで下手な小説を書いているこの私の自宅に、地元の刑事が探りを入れに来たのだ。しかし、動画上では、幼児殺害を実行したと思われる男性は、身長は、画像等から推計して、最低でも175センチ以上はある。



 しかるに、私は162センチしかなく、かつ、既に、定年後の身であり、年金生活者であって、例の動画の男性とは似ても似つかないのだ。この私とは、大違いだったのである。

 当該刑事は、残念そうな顔をして、帰って行ったのだ。 



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― 新着の感想 ―
[良い点] こんなに早く直してしまわれるなんて、凄いです! 現時点ではこの形で十分なのではないでしょうか。多分、時を経てベターな方向が見えてくる事もあるかと思いますし。 [気になる点] 凄く良くなった…
[良い点] いわゆる「メタ」ジャンルの小説になるのでしょうが、作者自身も登場している点が独自のリアリティを高めていて、惹き込まれます。 [気になる点] YOUTUBEの動画が「テレビへ繋いだHDに録画…
[一言]  「 残念そうな顔をして、帰って行った 」刑事さん、感じ悪いですね。  逮捕する気満々で来られたんですね……。  主人公が誤認逮捕されなくて、ホッとしました。
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