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茶うさぎから白うさぎへの手紙 2022  作者: メラニー
3月
81/365

81 制服

 こんにちは。


 卒業シーズンですね。

 先日、個展を見にお出かけをした時、そこかしこで袴姿の学生を見ました。

 あの日は暖かかったから、良い卒業式になったでしょう。


 突然ですが、私の高校は制服がブレザーでした。

 紺色のなんの変哲もない、どシンプルなブレザーとプリーツが身頃に二つ入った制服。ブラウスも白色の何の変哲も無いもの。ネクタイは紺色。それにローファー。

 中学校はちょっと凝っていて、襟なしのブレザーで合わせがUの字でダブルだった。そしてブラウスの襟も丸襟。ネクタイはえんじ。それに比べたら高校はシンプルで、テンションが上がらなかった。


 でもまぁ三年間も着て、他の学校のブランド制服を見るに、どんな学生でも似合う制服なんだなぁ~と思ってそれなりに愛着があった。


 しかしその制服を私は手元に残していない。

 詳細をよく覚えていないのだけれど、学校に残してきてしまったのだ。


 残してきたのは、卒業式の日じゃない。

 たしか、卒業後に美術室に行く用事があって、制服を着て行った。なんでそうなったんだろう?と思い出そうとするのだけど、全く覚えていないのだ。

 

 まず私は美術部では無かった。二年生くらいまでは美術部だったのだけれど、知らない間に演劇部に入れられていて、いつの間にか美術部ではなくなっていた。三年になると美大志望の生徒がデッサンをしまくっている状態だったので、私は行かなくなったのもあるのかもしれないなぁ。油絵も楽しくなかったし。

 ひぃちゃんは私の逆で、もともと演劇部だったのに、美大志望だったので知らない間に美術部になっていた。ひぃちゃんの受験関係だか……とりあえずひぃちゃん絡みで、卒業後だと言うのに美術室へ行ったのだと思う。

 

 しかも卒業後だと言うのに制服を着て。


 あの背徳感だけはすごく覚えている。

 もう学校に所属していないのに、制服を着てしまっているというフワフワゾワゾワした感じ。

 電車に乗っていても、落ち着かない。町を歩いていても落ち着かない。三年間も着て、馴染みまくっている洋服だというのに、馴染まないというか着心地……居心地が悪いというか。すごく悪い事をしてしまっているような、詐欺師のような。

 制服を着て行かないと、学校に入る時に守衛さんに申請するのが邪魔くさいからそうしたのかもしれないなぁ……と今さらながら予測はするけれど、正確なことはやっぱり謎。なんで制服を着たんだろう。


 で、なぜか私服に着替えて、制服を美術室に置き去りにして帰ったのだ。

 また取に来たらいいか、くらいに思っていたと思う。私は大学も同じ敷地内だったので。

 

 多分、これらは起こったことで間違いが無いのだけれど、何をしに行ったのか、なぜ着替えたのかなどが謎で。

 これを聞いて答えられるのはひぃちゃんだけのはずなんだけど、彼女はもうこの世にいない。


 ふと卒業シーズンが来ると毎年のように、この謎行動を思い出すのだけど……もっと早いうちにひぃちゃんに聞いておけばよかったなぁ。聞いたところで彼女も忘れてしまっているかもしれないけれど。


 そして私の制服は一体どうなったんだろう。

 もう母校の制服は今は変ってしまっている。

 伝統の制服が変わらずに採用されているってすごく羨ましい。

 町で見かけるだけで、気持ちがタイムスリップするだろうから。自分が着ていた制服じゃなくても、同じ時代にあった制服を見ると不思議な気分になるもんなぁ。


 そういえば、私の大学の時の先輩の高校の制服はバブル真っただ中に、有名デザイナーに作ってもらったものだったらしく、すっごい肩パットだと言っていた。すっごい肩パット制服は……きっと無くなっているだろうなぁ……。それは先輩の時代ですら、厳つい肩パットは勘弁って思っていたそうなので、早く変えてあげてほしい。


 あー、制服を着たいわけじゃ泣けれど、あの制服手元にあったらなぁ。大失敗だ。



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