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茶うさぎから白うさぎへの手紙 2022  作者: メラニー
10月
294/365

294 値付け

 こんにちは。


 私に限らず、ハンドメイド作家は値段を付けることに苦悩している様で。


 先日お邪魔したグループ展で、新しい試みとして、一部の作品を入札形式をお試ししていたのです。

 私が雲の上の人だと思っているような作家さんでも、自分の付けた値段で大丈夫なんだろうか?という不安はあるそうで、一度やってみたかったそうだ。


 他の作家さんも「値段を付ける時に自分の財布を見てはいけない」と先輩作家さんに言われたと呟いていた。色んなベクトルで深く頷いてまう。

 作家にはいろんなステージがあって、需要が無い時代にも、供給が追い付かない時代にもその言葉が染みる。客観的かつ、誠実な値付けが必要なのだ。


 グループ展の入札は、まず参加者が少なかったらしい。そして一つだけ入札がゼロだった。しかも、その一つはグループ展で一番最初に作品を売り切ってしまった人気作家さんのもの。

 私もだけれど、入札しても絶対に手に入らないもんなぁ~と言う思いで、入札に参加しなかった。学園のマドンナには彼氏がいない、みたいなやつでしょう。

 主催側の見解は設置場所が悪かったという反省でした。序盤に設置されている入札コーナーを含め展示を見終えて、購入できる作品をレジでお会計したのちに、そのまま出口へ向かってしまうという動線が出来てしまい、忘れている方が多かったのでは?と。

 確かにそれもあるのだと思います。でも一番の理由は、作家以上にファンは値段を付けられないからだと思っている。

 つくり手はそこまで感じていないだろうけれど、ファンにとって作家は神も同然。ニッチな分野だと特に希少性が増します。ニッチな狭い世界で自分の琴線に触れる作品を作ってくれる方なんて、天文学的確率ですから。財布が許せば、また他に競合がいないなら全部買いたいくらいなのです。

「この絵、1万円です」と言われたら「安っ!」となるし、「10万です」と言われても「ですよね~」。「100万です」だったら「わかるわぁ~」と素直に受け入れてしまう。だって、作家を好きになるってそう言う事だから。自分の財力で買えるなら言い値でホクホクニコニコしながらお金を払います。そんな神の絵に、投資目的で買うわけでは無い純粋なファンは値段を付ける事は出来ないのです。

 やはり心情は、作家さんが納得している値段で買いたいのです。……と言いつつ、自分の洋服や雑貨に値段を付ける場合、安く見積もってしまうのですが……。自分の財布事情を考えてしまう。私より裕福な人ばっかりなのにね。でも、それでも洋服は売れない時代なので……複雑です。


 私は着物が好きで、昔はローンを組んで着物を買っていました。「お客さん、気に入った!安くするよ!」といくらか安くしてもらったことも多々あります。着物自体の価値をある程度知っているので、売るための落とし文句では無く、本当に安くしてもらっているのも分かるのです。安く手に入る事は嬉しいのですが、素直には喜べない。

 着物って関わっている職人さんの数や手間の数々。仕立てもあるし。そこに流れる着物や帯の代金を思うと、手放しでは喜べない。お金が職人さんに流れないと続けていけないし、材料費を払っているのではなく、技術や技や手間にお金を払っている。文化を継承してもらうにもお金が流れることが大切なのです。

 そんな高価な物をどうして売り手の鶴の一声で安くできるかと言うと、反物を一度買い取っているから。呉服屋の旦那の心意気ひとつで、百万にも千円にもなってしまう。そういうものなのだそうだ。この人に売りたい!と思った客に売る。売りたくない客には吹っ掛ける。これが昔からの呉服屋の心意気なんだろう。着物の値段は有って無いようなもの、と言われるようです。

 今は会社になっているから、そこまでの事は出来ないだろうけれど、何年も前に仕入れた反物だったりすると、その時も流れや熱量でエキサイトしてしまう事もあるのでしょう。

 ただ、本当に産地に何度も足を運んで頭を下げて譲ってもらた幻の紬は、安くなっても80万くらいだったでしょうか……。ごめんね、これは職人さんとの約束もあって……とおっしゃっていた。

 売る専門の人と職人の感覚も違うだろう。逆に作り手の方が気に入った相手に安く売ってしまう事もあるだろうけれど。


 私が着物を買うのに値切ったことはないのだけど、会話をするうちに安くしてもらう事があって、ちょっとモヤモヤする……という現象は、以上の流れで私の手元に来るとするなら、反物の仕入れはもう終わっているから、損をするのは呉服屋という事になり、安かろうが高かろうが職人さんには関係が無い話でもあるのです。それでも呉服屋さんが潰れたら流通のルートが一つ失われるという事でもありますからね。


 印刷会社なんかに入稿して仕上がって来るような雑貨は、基本的には個数で割り算して何パーセントかかければいいと思うのだけど、膨大な手間がかかったものとなると、本当に根付は難しい。有って無いようなものというのは本当にそうだなぁと思う。だって、死ぬほど気に入って一生大切にしながら使ってくれる人にだったら上げたっていいと思うもの。


 難しいなぁ、根付。お金で価値を表すしかないんだもんなぁ。人によって価値観なんて変わるのに。それに数字で価値を押し付けてしまう。

 

 

 

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