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茶うさぎから白うさぎへの手紙 2022  作者: メラニー
6月
158/365

158 偉業の引継ぎ

 こんにちは。


 今日、私の大好きな作品の重大発表がありました。去年亡くなった漫画家さんの未完の遺作の連載を始めると言う発表でした。


 その発表を聞いて一番最初に思ったことは「いやいや、出来ないでしょ」です。


 いつもは検索に引っかかったりするのが嫌でなかなかタイトルなどは書かないのですが……まぁ言ってしまえばベルセルクです。

 ベルセルクを読んだ事がある方なら分かると思うのですが、漫画の一ページ一ページが、又は一つのコマだけでも漫画と言うより美術作品なのです。すごい書き込みで、しかも兵士一人一人甲冑が違っていたり、大軍勢の表情やポーズまで違っていたり。そして宗教画の様に神々しく、時にはおぞましく……

 絵だけでは無いのです。お話の展開が迷路のように絡み合って、絶望は一條の光も差し込まないような暗黒に落とし込む。救いの光すら手放しで喜べないような綱渡りをずっと続けている。そのバランス。そして緻密で完成させた世界観。世界の理を細部まで統一している。それが明らかになっていなかった頃からずっと一貫している。想像力も資料集めも見聞の深さも努力も一流。

 でも一番すごいのはセンスです。独創的で暴力的で、ずっと希望が無くて。誰もついてこられないほど深く暗い樹海のような。でもそれを面白い!ついて行きたい!と思わせるセンスとバランス感覚。

 そのすべてが備わっていないとベルセルクにはならない。だから咄嗟に無理だと思ったのです。


 でも公式発表された引き継いでくださる先生の文章を読んで、気持ちは変わりました。あらすじを一緒に考えたというエピソードもそうだけれど、思いが伝わって来て。

 大切な友達だったからこそ、自分が引き継いではいけないと思う事も、成してあげたいと思う事も、その葛藤を知っているから。世界中で人気のある、ダークファンタジーの金字塔と言われるほどのビックタイトルです。その重圧はすごい物でしょう。

 それを自分の連載と並行してやるのです。もちろん絵を描くのはお弟子さん達ですが、自分が作ったお話では無い物を作品としてアウトプットするエネルギーは別の連載をもつよりも大変なことです。

 いつも「あいつならもっといい表現をしたんじゃないだろうか、あいつならどうしただろう」と自分のセンスと責任でOKが出せないのだから。

 

 想いを感じるほどに泣けて泣けて……。


 この発表に対して、出版社の商売根性が汚いだとか売名行為だとか言っている人がいたけれど、そんな事では乗り切れない苦行であることは確実です。っていうか、そもそも有名な作家さんだし……

 出版社が抱えている数ある作品の中で、数作品、宝物のように特別に扱っているな、と思う作品があるのだけど……ベルセルクは確実にそれです。そんな作品に敬意を払わないような事は絶対にない。


 私の知り合いの友達が「ベルセルクの最終話を見るまで死ねない」と言っていたのに、若くして亡くなってしまったという話を聞いた事があって。三浦先生がお亡くなりになられた時、みんな同じになってしまったなぁ、と思ったのでした。

 でもこれで、最終話を見ることができる未来がやって来る。天才の道半ばで成し遂げられなかった偉業を、友達や戦友や、人柄と才能を愛した人たちがどうにか最後まで形にしたいと動いている。もうそれだけで熱いです。


 いつも思う。

 残された方も辛いけれど、残していく方も辛いんだろう。でもずるいよ。逃げられないもの。その目から。背中を押されて。でもそれが愛おしいから逃げない。どうしようもない。


 やっと私はクリスマスに届いた現在の最新刊を読めるなぁ。これでやっと半年以上たって読める。



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