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三十歳から始める魔法少女  作者: 千夜詠
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魔法少女三十歳①

R15設定にする作品は初めてになります。

ですので、初めての私の作品を読み方も多いかもしれません。

主人公や脇も年齢高めなので、青年誌的なノリで。

同時にR18作品「ロリババア召喚 ちょろい女神をおとして異世界転移」も連載中ですので、興味を18歳以上で、興味を持った方は是非、そちらもどうぞ。

 アラームの電子音が鼓膜を震わせると、七原雪花はスマホに手を伸ばした。


 ぼんやりとしたまま起き上がり、部屋の隅にある姿見に視線を送れば、ボサボサの髪をした気怠そうな女が映っている。


 何も考えるな。


 覚醒しきっていない脳に言い聞かせながら、ベッドから出ると、パジャマ代わりのTシャツを脱ぎ、ピンク色のショーツも脱ぎ捨てる。


 全裸のまま移動して、トイレに入り、続いてシャワーを浴びるのだ。


 平日のルーティン。冷たい水がやっと目を覚まさせて、体を拭いて、下着だけは身に付けた。


 時間を確認すれば、午前七時半。昔は慌てたものだが、こんな生活を八年も続けていれば、慣れたもので、手早く化粧を行う。


 ――朝食は、ああ、いつものでいいか。


 朝も自分で作ろうと思う事はよくある。が、結局、駅前のファーストフードで済ませてしまうのだ。


「よし――」


 少しだけ気合を入れて、スーツ姿の自分を確認。


 乳がやたらデカい――最近測っていないが、およそJカップ――美女がいた。背中まで伸ばした少しだけ癖のある栗色の髪に、オレンジにも似た薄い茶色の瞳をしている。


 美麗さに色艶を加えた顔立ちに、更に知的な雰囲気も混ざり、自分では品がある方だと思っている。


 が、男性社員から性的な目で見られがちなのは、やはりこの胸の極端な盛り上がりのせいだろうか。尻だって、球体を二つ重ねたような肉付きで、腰回りに合わせるとスカートがきつく感じる事も多々あった。


 これで彼氏が今いないのは何故?


 入社四年目までは、よく告白されたものだが、付き合っても直ぐに別れる事が大半である。


 自分が悪いとは分かっている。


 ただ、体が満足しないのだ。


 不感症ではない。だって、大人の玩具では絶頂に至るのだから。


「行かないと……」


 六畳フローリングとダイニングキッチンのあるマンションの一室から出て、駅までパンプスで早歩き。まだ十分に間に合う時間であるが、余裕は持ちたい。


 ファストフード店で朝のセットを食し、電車で揺られる事三十分。


 乳の大きさだけが特別な、ごく普通のOLはこうして変わらぬ日常を始めた。


 ――――


「お昼休みの一時間って、案外短いっすよね」


 後輩ちゃんがコンビニで買ったサンドイッチを頬張った。


 元気が有り余っていそうな二十三歳。私にもこんな時期があった、はず。


 元々、小さな会社だから、同期は少なく、雪花と共に入社した二人は既に寿退社している。


 後輩ちゃんの同期は、他は全て男子だから、最初に面倒を見た自分によく懐いていた。


「お昼にしたい事があればね」


 お昼の公園。会社近くのここで、天気が良ければベンチに座って昼食を頂くのも日課だった。


「携帯ゲーム、とか」


「何か、してるの?」


「馬っ子育てているっす。先輩もやりませんか?」


「はは、そういうの、やった事がないから」


 毛嫌いしているわけでもない。積極的に手を出そうという興味が湧かないだけ。


 ただ、時折、非日常を味わってみたいと思う事もある。


 三十年の自分の人生を振り返れば、平凡の範疇を超えてはいない。特別な才能もなく、キャリアウーマンを目指している訳でもなく、思い切って、何かに飛び込んでいく勇気もなかった。


「あ……」


「どうかした?」


「高田川さんだ」


 大きな樹木の下に、老齢に近いベテラン中年の男性がいる。痩せた体格に、着古したようなグレーのスーツを身に付けていた。


 高田川順三。会社の同僚で、部署は違うが、小さな会社だからよく挨拶はしていた。


 勤続三十六年ながら、ずっと役職無しの平のまま。ただし、堅実で真面目な仕事ぶりには一定の評価があって、温厚な物腰に、社内での評判は悪くない。


「相変わらず、くたびれた感じっすね。そこがいいんですけど」


「いいんだ」


「自分の父親があんな感じだったら、守ってあげたいっていうか」


「守ってあげたいんだ」


 解からないでもない。セクハラもパワハラとも無縁な雰囲気で、安心感は確かにあった。


 芝に座り込んで、弁当箱を広げている高田川もこちらに気付くと、互いに会釈をする。


「あれ、奥さんの手作りですかね?」


「えーと、確か、高田川さんって、独身だったはず」


 人事担当なので、それくらいの情報は把握していた。


「そうなんすか? うーむ、まだ勃つのかな?」


「ちょ、ちょっと……」


「いや、男性って、何歳までやれるのかなって」


 ――高田川さんのあそこ……。いい人だけど、ちょっと想像はしたくないな。


 苦笑いを浮かべていた。


「あっ、でも……、思い出した。この間、高田川さんが、若い女の子に声をかけているところ」


「え? 高田川さんがナンパ?」


 まるでイメージできない。


「空似かな? でも、その高田川(仮)さん、声をかけていた女の子って、中学生か小学生くらいだったっすよ」


「え? 犯罪?」


 余計にイメージできないが、この話題、直ぐに忘れてしまうだろう。


 この時は、そう思っていた。


 ――――


 息遣いも荒く、男は街を歩いている。


 ハァ、ハァ、といった呼吸音は、擦れ違う人にも聞こえ、最初は心配そうに覗き込んで、次には気持ち悪そうに顔を顰めた。


 猫背になりながら、何か月も洗っていないような髪で、唇から涎を垂らし、疣だらけの顔でニヤニヤと笑っている。


「今の女……、いい匂いがしたな。ヒヒ……」


 勃起していた。


 いつからだろうか? 理性で自分を抑えられなくなってきたのは。


 風呂に入っていないのも、面倒といった気持ちだけが先行して、働きたくないと思えば、それに抗えない。


 最悪なのは性欲だ。


 やばい、犯罪を起こしそう。


 だから、これまでは家に閉じこもっていた。


 だけど、もう我慢できなくなってしまう。


「JKみっけ」


 歩道橋を上がっていく制服の女子を見付け、階段下に向かう。そこからしゃがみ込んで、スカートの中を覗き込むのだ。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」


 股間がムズムズとすれば、周りにどんなに人がいても、肉棒を取り出して、扱きだす。


 きゃあ――と、悲鳴が聞こえた。


 何が起きた?


 ああ、そうか。自分が、ペニスを曝け出しているからか。


 悲鳴を上げたのは、若い女だ。


 こいつ、乳でけえな。顔は、まあ、いいか。


 犯したい――一度、そう思ってしまうと、もう止められない。女に抱き付いていた。


「いや――、ちょ、ちょっと……」


 周りにいたサラリーマン風の男が引き剥がしにかかってくる。が、自分の体はびくともしない。


「こいつ……。おい、誰か、警察――」


 このサラリーマンよええ。あれ、俺が強いのか?


 大して鍛えていなかったけど、妙に力が湧いてきて、ビリビリって、女の服を破いている。まるで、紙のように。


「イヤ、イヤぁ! 誰か……」


 五月蠅いと、思ったら、女を殴っていた。


 静かになった。気絶した? それとも死んだか?


「おい、誰か、あの子、助けろよ」


「け、けど……、あいつ、変だ」


 何が、変なんだよ。いいか、女のパンツ、脱がし終わったし。


 さあ、犯すぞ。


 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ――。犯すって、どうやるんだ?


「分かんねえ! 何処に入れればいいんだよ!」


 欲求が爆発しそうだ。


 あ、破裂した。真っ黒に、自分から噴き出ていくのが分かる。


 ――――


 定時にタイムカードを押して、帰路につく。最近は経営も厳しいらしく、残業は極力さけるように言われていたが、元から忙しい部署ではなかった。


 ――帰って、今日は何をしよう?


 こんな風に考えるのも日常だ。


 会社から駅までの道。時間的に人通りも増えて、活気が感じられる。街灯は既に点灯し、日中の暑さとの差を感じる位に肌寒さを覚えた。


 因みに後輩ちゃんは、今夜は合コンだそうだ。誘われたが、女子メンバーが全員二十五歳以下だったので、断った。


 まだ焦ってはいない。三十歳の誕生日の時には感じたが、今の日本で三十を超えた独身なんて大勢いる。


 合コンだけでなく、飲み会の後が、最近はずっしりと重く感じるようになった。


 寂しい――そう思ってしまう自分がいる。


「そのうち、これも当たり前になって、寂しいとも思わなくなるのかな? はあ……」


 溜息の分だけ幸せが遠のくらしいが、それなら幸せは数年先までやってこないだろう。


 悲鳴のような物が聞こえた。


 ――ん? 何かあったの?


 巻き込まれるのは嫌だと思いつつ、しかし、見過ごしてしまうのも良くないと感じて、聞こえた方へと、歩く方角を変えようとすると、更に何人もの悲鳴が聞こえてくるのだ。


「何か、あった? 事故? 犯罪とか、ちょっと……」


 興味と倫理観。怖さと正義感。せめぎ合うものを感じると足はそこで止まってしまった。


 判断できるだけの材料はない。


 周囲の人々も同じ様な顔、反応をしている。


 こちらに逃げてくる人がいた。


 余程焦っていたのか、躓き、前に倒れたそこに駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


 色っぽい三十代の女性である。石鹸の匂いがした。


「ば、化物……」


「えーと?」


 口で表現しきれないようで、彼女は指を差す。


 都会の明るさを改めて感じる。


 真っ黒で巨大なそれが、はっきりと見えるのだから。


「なに……あれ?」


 最初は作り物だと思った。きっとそこにいた誰もが。スマホを向けている人だっている。


 黒い煙をもっと圧縮して固めたような物体。それが徐々に形を変えて、加工しないと動画サイトにアップできない物に変わっていく。


 言うなれば巨人である。だが、指先が全てペニスの形をして、頭部に生えた角のような物もペニス。極め付きは、股間から、突き伸びたそれは種子島宇宙センターからうち上げる物くらいのサイズがあった。


「ひいいいいっ!」


 渾身の悲鳴を雪花はあげていた。


 股間のロケット状が、ビルを貫けば、もうあれが極めて危険な存在だと疑わない者はなく、阿鼻叫喚ができあがる。


 雪花はへたり込んでしまった。巨人の光る瞳が自分を見たと思ったからだ。


「爆乳おねえさん、みっけ」


 巨人がそう言った。


 思っただけでなく、本当に自分を見ているのだ。


 声をかけた女性は早々に逃げた。周りの人々も気遣う余裕がなくて、駅に向かって走っていく。


 ドシンと響き、黒い巨人が向かってくる。自分に向かって。


 ハァ、ハァ、ハァ、と以前、悪戯電話で聞いたような気持ち悪い呼吸を奏で、巨人が迫る。


 怖い。


 間違いなくそう思っている。


 なのに、スーツの内側では下着に濡れ染みが広がっていた。


 強烈な性的な欲求を一身にぶつけられて、雪花の牝が反応してしまった。


「な、なんで……、やだ、こっち……、こないで」


 お尻を道路に付けて、股間を開いてしまって、下着が丸見えになっている。


「むふぅ、牝の匂いぃ! ハァ、ハァ、プンプンさせやがって、このビッチ!」


 違う。私は、そんなんじゃ――とか、否定している場合じゃない。


 ――逃げなきゃ。で、でも、腰が抜けて……。ああ、誰か……。


 こんな時、颯爽とヒーローが現われたら、きっと私はその人に恋をする。今が、爆乳美人OLをゲットするチャンスよ。


 警察はどうしたの?


 自衛隊は?


 引き攣った泣きそうな表情を見せる雪花に、ペニス指の大きな手が向けられた。


「嫌ぁあああああ――――」


 とう――ビルの屋上から跳躍した者がいた。


「はあああ!」


 彼の蹴りが、巨人の頬に打ち込まれ、激しい衝撃音が響き渡る。


 巨人がよろめき、ビル一つに手を置けば、またそこが崩れていった。


 スタッと彼が雪花の前に降りてくる。


 ――嘘!? ホントにヒーロー、来た! え?


 くたびれた着古しのグレーのスーツに、痩せた体形。彼が振り返る。


「無事ですか、七原さん」


 高田川だった。


 脳内が混乱している自覚だけがある。


「え、えーと、高田川さん?」


「話は後です。まずは、奴をどうにかしない――」


 彼の視線の先を追っていくと、座り込んで大きく開かれた雪花の濡れた股間があった。


「…………」


 雪化はそっと閉じた。


 その間にも巨人は立ちあがり、再び目を光らせる。まさしく眼光は、雪花から離れようとはしなかった。


「ち……、奴め、完全に七原さんをターゲットにしたようですね」


「な、何なの、アレは?」


「アレは、欲望鬼。不純な感情の塊が生きた人間に憑りつき、そこで育ち、いよいよ形を成すまでに成長した存在です。く……、来ます!」


 またも巨人が手を伸ばし、雪花の盾となった高田川が拳でそれを穿った。


 ズバ――――ン、と爆風のような衝撃が吹き荒れ、真っ黒な巨人の腕を粉砕する。


「凄い……。やったわ、高田川さん」


「いえ、まだです」


 一歩、二歩、と後退した巨人であったが、高田川が砕いたはずの腕が直ぐに再生していくのだ。


「な、何よ、あれは」


「欲望鬼を完全に消滅させられるのは、魔法少女しかいません」


「はあ?」


 アニメの話?


「しかし、現在、こちらの世界には、魔法少女はいないのです」


 とにかく、現在進行形で、現実離れした状況なのだから、魔法少女とやらも実在する意識で対応しましょう。


「じゃあ、どうやって、アレを倒すんです?」


「…………七原さん、一つ、確かめたい事があります」


「こんな時に何ですか」


「こんな時だからです。パンツを脱いではくれませんか?」


 まだ混乱の只中にあるようだ。


「えーと、何でしょう?」


「パンツを脱いでください」


「脱ぐか!」


 抜かしていた腰が復活して、一瞬で立ちあがり、刹那の内に背後の電信柱まで距離を置いていた。


「大事な事なのです。さあ、私を信じて」


「股間を膨らませておいて、信じられません!」


 高田川順三、五十九歳。現役。


「こ、これは、その……、先程、七原さんの股間がしっかり濡れているのを見ちゃって」


「いやぁ――」


 パンツどころか、濡れているのまで見られた。


「さあ、パンツを貸してください。決して、変な事に使うのではありません。ハァ、ハァ」


「絶対、興奮してるぅ!」


 ドスンっとまた大きく響いた。


 巨人が、踵を返し、別の方向へと向かいだしたのだ。


「いけません。どうやら、私が七原さんを守っているから、ターゲットを他の女性に変えようです。む、屈んで、誰かを掴んだ!」


「え?」


 目を凝らしてみた。確かに誰かが、あの気持ち悪いペニス指の手に握られている。


 悲鳴が聞こえた。


「やだ、やだぁ! だ、誰か、た、たす……」


 恐怖に引き攣ったその顔は知っている。後輩ちゃんだ。


「ぐ……、まさか、同じ会社の女性が立て続けに……」


 巨人が笑っている。


「ぐへへ、可愛い女……、生暖かいもの……、こいつ、漏らした。ぎゃははは――」


 雪花は拳を握りしめた。


 今、後輩ちゃんを襲っているのは、恐怖と羞恥。それも誰も経験した事が無いような、異常なものだ。


 助けたい。でも、どうすれば――。


「高田川さん……。私のパンツで、どうにかできるんですか、あれ?」


 ハッと高田川が振り返る。


「それは、貴女次第です。ですが、可能性はあります」


 これでどんな結果になるのかなんて、分からない。でも、今はあの巨人に対抗できた高田川を信じるしかないのだ。


 スカートに手を差し込んで、一気に下着を脱いだ。


 恥ずかしい程にしっとりと濡れて、自分の生々しい体温が残っているそれを涙目で真っ赤になりながら、高田川に渡す。


「では、確かに預かりました。ふん!」


 高田川順三、五十九歳。同僚の爆乳OLの使用済を嗅ぐ。


「嫌ぁああああ! へ、変な事、しないって――」


 キリッとした顔を高田川は向けてきた。


「これは……、間違いない。七原さん、貴女こそ、私が探し求めていた魔法少女になれる才能の持ち主です」


「…………は?」


「七原さん、私と契約して、魔法少女になってよ、です」


 絶対に裏があるやつだ、これ。


「あの……、意味が分からないんですけど」


「説明は後です。ほら、今にも彼女がひん剥かれて」


 巨人の手の中で、後輩ちゃんの衣服が剥ぎ取られていく。


 上空にヘリが舞い、ドローンが飛び交ってきた。遅れてマスコミが集まり、今、映像で捉えているのである。


 ――このままだと、後輩ちゃんの裸が全国に晒されて……。


 あのペニス指が考えた通りの物なら、裸にされるだけでは済まない。


「私が、ま、魔法少女になればいいのね。三十……だけど」


「おお……。では、急いで契約を」


 高田川の鞄から、契約書が出された。


「…………それ、持ち歩いているんです?」


「ええ、何処で、魔法少女の才能を持った方に会えるか分かりませんからね。あっ、会社には、私が魔法少女のマスコットの副業をしている事、内緒でお願いします」


 高田川順三、五十九歳。魔法少女のマスコット。


 ――色々とツッコミをしている余裕はないわ。マスコットの副業の報酬が物凄く気になるけど。


 その場で契約書にサインをした。


「よし……。では、七原さん。これを」


 棒状の物が渡される。


「えーと、これは……」


「それこそ、魔法少女の魔法のステッキです」


 色といい形といい、カリ首があって、持つところに血管が浮き上がったような装飾があって、どう見ても、ベッドの下の収納に隠し持っている物にそっくりだった。


 カーと顔が熱くなって、真っ赤になる。


「これ、ディルド……、な、わけないわよね」


「どうかしましたか?」


「な、何でもないわ!」


 恥ずかしい事を考えている場合ではない。


「さあ、それを空に掲げ、ネオ魔法ランドから、魔法のエネルギーを受け取るのです」


「もう、何が何だかさっぱりだけど、こ、こう?」


 ステッキと呼ばれている物を持って、手を高く上げた。


「…………」


 何も起こらない。


 涙目で高田川を睨む雪花だった。


「ああ、それ、逆です。その亀頭みたいのを上にしないと」


「亀頭って言った!? やっぱりディルドじゃないこれ!」


「あと、亀頭を逆さにしてしまう方はドMで、正しく持てた方はドSらしいです」


 聞かなかった事にした。


 こうしている間にも後輩ちゃんの貞操及び、社会的立場の危機。


 今度こそ――。


 ステッキと呼ばれる物を、亀頭を上に、掲げる。


 上空から一筋の眩い光が差し込んで、一直線にステッキの先端に当たった。


 ――ホントに何か起こった! で、で、どうなるの?


 ステッキが熱くなってきて、震え始める。それはまるで、男根の脈動のようで――、


 ビュルッ、ビュピィィッ! どぶどぷぅっ!


 先端から白濁色をした何かが噴き上がる。


 驚愕の顔のまま、雪花は固まった。


 噴水のように飛び出してきた白濁したそれが、全身を塗れさせると、衣服が光の粒子となって、体から一旦離れるのだ。


 刹那、雪花は全裸になった。


 裸体を光の粒子が舞う事、三十秒。


「ちょっと、長すぎない!?」


 それは再び雪花の肉体に戻り、魔法少女のコスチュームを形成していく。


「ああ……、ハァ、な、なに、これぇ……」


 光の粒子が体にぶつかる衝撃が、甘美な痛みを与え、その刺激が性感と変わっていく。無数の粒子の一つ一つが同じ効果を与えてくるから、全身が激しく愛撫されているみたいだ。


「んぁ……、はあ、ああ……、やば……、これ……、ああ、よがるぅ!」


 髪をツインテールに纏めるピンクのリボン。


 可愛らしいブーツもピンクで、体を包むコスチュームもまた同系色に合わせられている。


 お姫様のドレスをイメージしたようなデザインで、ただし横広がりのスカートの正面側は生地がなく、正面から見ると、競泳水着に似て、ハイレグカットで悩ましい肉体を強調していた。背中は露出して、可愛らしさとセクシーさが同居する。


 今ここに、魔法少女が爆誕した。

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