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40歳OL、てんやわんや



 冷静に考えるとババ活か詐欺。いや、私の年齢的にまだママ活か?

 しかし、隣町の喫茶店に行きたいからと、なぜ私を誘うんだろうか?


 おかげで墓参り中も気がそぞろで、水入れの水が溢れてパンツの裾がちょっとだけ濡れてしまった。線香に火をつける際も、ジェットライターの火をただぼんやり眺めるという体たらく。そして思わず両親に報告。だって男性からの食事の誘いなんて何年ぶりだろう。忘年会に新年会、歓迎会と送別会、花見に夏はバーベキューと社内飲み会の多い会社で、それらに取引先の参加も多いけど、そこで男性から個別に誘われたことはない。そのいまさらの事実にちょっと落ち込む。

 アルバイトくんはかなり年下だが男性には違いない。久しぶりのデートに混乱しつつ、嫌じゃないと思う自分にちょっとだけ呆れる。デートに誘われるって嬉しいなぁ。


 さて、裾が濡れちゃったし着替えた方がいいかな……でもそんなに意気込んでると思われて引かれるのも、いや、裾が汚れてる女も普通に引くわ、替えよう。恋愛感情が皆無でもTPOは気にしないと。

 墓参りの帰りにスーパーでお昼と夕飯を買う予定でいたが、なんだか寄れずに遠回りして牛丼屋で小盛りセットを食べた。美味しかった。


 なぜ私はこんなに慌てているのか。彼を好きなんだろうか。

 確かに好意はある。だって彼の仕事ぶりは丁寧だ。笑顔もいいし、声だって若いのに落ち着きがあっていいと思う。好意の基準の一番が顔じゃなくなった事に内心で苦笑。それだけの年齢になったなぁ。

 そこでふと気づく。

 追っかけてるアイドルと喫茶店デートができるならそりゃ混乱するよね。と。そういやいつだったかテレビでそんな番組をやっていたっけ。

 まあ、待ち合わせからすっぽかされる悪戯かもしれないけれど、着替えだけはしておこう。もし悪戯なら、あのスーパーにはもう行かなければいいだけの話だ。客が一人減ったくらいじゃ困らないだろう。あ、貯まったポイントを全部使ってからだな。


 そうしてパーカーとジーンズという、恋人がいなくなってからの普段着で待ち合わせのコンビニで立ち読み中。日曜だからかお客はひっきりなしだ。カップル、親子、学生のグループ。年齢層が若い。自分にもあんな頃があったなぁとか、若い夫婦が赤ちゃんを抱いているとそれだけで微笑ましいなぁとか、小学生になると選ぶ物がいっちょ前だなぁとか、つい観察してしまう。

 いつもより高めのポニーテールにしたのは、髪の毛についた線香の匂いを自分から誤魔化すためなんだけど、窓にうっすら映る姿は若ぶってる感じがしないでもない。

 ……あまりに久しぶりの状況に卑屈が止まらない。こんな事なら張り切って化粧をしてくれば良かった。最初で最後のアイドルとのデートだったのに。せめてスカートにするんだった。TPOって何だっけ。


 シングル生活の家具特集を眺めていると、隣に人の気配がした。

「あ、やっぱりそうだ。すみません、お待たせしました」

 少し息を切らせたチノパンに白シャツ紺カーディガン姿で黒縁眼鏡のアルバイトくんがいた。デカイ。え?眼鏡?あれ?こんなに大きい子だったっけ?

「移動は俺の車なんですけど、スーパーの駐車場まで戻りますね、すみません。待ち合わせをここにしたけど、コンビニじゃ車置いて行けないっすもんね。俺の車、スーパーの駐車場に置いてきたので、スーパーまで乗せてください」

 すみませんと鼻の頭を掻くアルバイトくん。……あ。アルバイトくんだ。あぁ、いつもの距離より近いのか。ていうか。

「車?え?何歳なの?」

「え?俺?24歳ですよ」


 えええ!?







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― 新着の感想 ―
[良い点] >客が一人減ったくらいじゃ困らないだろう。あ、貯まったポイントを全部使ってからだな。 スーパーの心配をするやさしい主人公! でもポイントはしっかり使うんですねw 40才でポニーテールは若…
[一言]  24…高校生の時に生まれたのかぁ…。
[良い点] 1話目冒頭のお母さんの亡くなるところですでに泣きそうになり、 2話目の終わりでもうるっときて、 3話目のアルバイトくんのお誘いで「キャーッ(*ノωノ)」となり、 4話目で「わかるっ!アレコ…
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