40歳OL、叶う
最終話ですヽ(=´▽`=)ノ
「あー、つーかーれーたー!」
吉田家からマンションに帰ってくると、佳くんは定位置のクッションに倒れ込んだ。ハイテンションの子供たちに酔っぱらった大人たちの相手もしていたのでよっぽど疲れたのだろう。私は人手がたくさんあったので体力的にはいつもより余裕がある。
「今月の休み、全部潰れちゃったね。ありがとう」
「それは明さんも同じじゃないですか。俺は時間に余裕があるからいいけど、体調は大丈夫です?」
「うん。早寝すれば」
「あー、だから早く帰って来たかったのに、アイツらめ……!」
「そんなこと言って。楽しそうだったよ?」
佳くんはうーと言いながらクッションに耳を赤くしながら顔をうずめた。ふふっ。
結婚するにあたり色々と話し合った。まず家については、マンションの更新時期に合わせて解約し、その後うちに佳くんが引っ越してくる。とりあえずパソコン機器は全部置けるだけの部屋はあるし、荷物の量については問題なし。
なんで更新を待つかというと、夏祭りの花火がマンションからよく見えるらしい。吉田家のみんなで見るつもりで借りていたそうだ。
「花火はちょっと遠いけどゆっくり見られますし、花火が上がる前に出店で色々と買い込めば、会場じゃなくても祭り気分がでるかと」
なので完全に一緒に住むのは夏祭り待ち。
それに。それぞれの家に週一ペースで泊まるようにもなり、旅行は日程を改めて、婚姻届を提出してから出発し、新婚旅行を兼ねることに。
車で行ける近場だから佳くんは新婚旅行なのにとちょっと渋ったけど、移動に時間をかけるより二人でゆっくりしたいと伝えると折れてくれた。
「俺の彼女が理性を試してくる……!しかしそれも可愛い……!」
ふふっ、そんな佳くんが可愛いわ〜。
名字については、正直どちらの姓でもいいと思っている。私も佳くんも。
私は一人っ子だけれど、大石の本家の伯父にはすでに孫がいるし、我が家だけの財産は父が建てたこの家だけ。私にとっては思い出の家だが築40年以上だし、地域の地価も売るにはさほどではない微妙物件だ。終の住み家にとは思っていたけれど、さてどうしようというところ。
伯父や叔母たち、巌さんにも、名字については私たちに任せると言われた。
お茶を飲んでひと息つくと、「俺が婿入りするのが手続きは楽ですよね……」と、佳くんがぽつり。
「婿入りは嫌?」
「全然。ただ、え~と、俺、明さんを嫁に欲しいなあと思ってて」
ドキリとした。
「結婚したらそんなの関係ないんですけど、やっぱり『吉田明』って書類に書いてほしいなとか……へへっ」
照れる佳くんの姿を嬉しがる自分に少し呆れる。もう40歳なのに。
隣に座る佳くんの肩にもたれると、「ん?」と優しく囁かれた。
「実は……一人っ子だから『お嫁さん』にはなれないんだ、ってずっと思っていたの。だから今の嬉しくて」
「え!わあわあ!ええと!ちょっと待っててくださいね!」
なぜか慌てた佳くんは私を一度ぎゅっと抱きしめると立ち上がって寝室に駆け込んだ。なになに!?
そしてバタバタと戻ってきた佳くんは私の正面にひざまずくと手に持っていた小箱の蓋を開けた。
「えーと、毎度キメられず申し訳ないですが……明さん、俺に嫁に来てください」
箱の中できらめく指輪と佳くんを見つめる。
「この……指輪は……?」
「旅行の時に改めてしようと思ってたプロポーズ用の指輪です。一緒に結婚指輪を注文しに行った時にこっそり買ってました」
すぐに結婚するから結婚指輪だけでいいよねって二人で話してたのに……
「実用重視で結婚指輪だけ選びに行きましたけど、俺的なケジメというか……俺も、こういうのをやりたかったんです」
照れ笑いをする佳くんに抱きつくと、すぐさま抱きしめられた。
「ありがとう佳くん……サプライズ失敗させてごめん……」
「そんなの全然構わないですよ、明さんが喜んでくれるなら。でも返事は催促します!嫁に来てくれますか?」
そう言いながら抱きしめられる腕に力が入った。嬉しい。
「はい。ふつつか者ですが……」
抱きついたまま、抱きしめられたまま、顔を見ずに言ってしまったけど、佳くんから離れたくなかった。
「やったぁ……」
佳くんの少しだけ震えた声に、涙が溢れた。
オバチャンは涙腺がゆるくて困る。歳をとると泣いた後が散々なのよ。回復に時間がかかるのよ。
でも。
「明さんのこと、一人にはしません」
耳もとで聞く佳くんの声にすごく安心する。
「これからずっと佳くんを一人占めできるなんて、私は果報者ね……きゃあ!」
急に立ち上がった佳くんに横抱きにされて、必死に抱きついてしまった。
「果報者は俺の方です。でも今日は疲れたのでご褒美ください!」
「え?ご褒美?え?」
「可愛い奥さんを寝室に連れこむご褒美〜」
そう言いながらもう寝室に向かって歩き出した。
もう何度も肌を合わせたけれど、奥さんと言われるとなんとも言えないムズムズした気持ちになる。照れくさい。でも佳くんにグイグイ来られるのは嫌じゃない。だけど。
ベッドに降ろされ、佳くんがシャツを脱ぐ。
「……明日仕事なので、ご褒美は分割払いでいい……?」
体力的なことはどうしようもない。そこは佳くんもわかってくれている……と思う。
ほら。ニンマリ顔も愛おしい。
「じゃあ、大石家カレーが食べたいです」
「ふふっ、承りました。ありがと」
佳くんに両手を伸ばす。唇が触れる。
「「 愛してる 」」
同時に囁いてしまったのが、おかしくも最高に嬉しい。
「お嬢さんをいただきます」
お墓参りで、手を合わせた佳くんが宣言。
「仏壇の前で言ってくれたじゃない」
「そうなんですけど、なんとなく、生きてらしたら何度も言ったんじゃないかなと思って」
「ふふっ、そこまで厳しくはなかったよ?」
「でも父親だったら一度は『君にお義父さんと言われる筋合いはない!』って言いたいですよ」
「ええ〜?古風ね〜」
「明さんと並んだら頼りなく見えるだろうし」
「ふふふ!」
「えー、ここで笑います?」
「だって、今誰よりも私が頼りにしてるのに」
「よし!元気出た!」
「あはは!」
お父さん、お母さん、私、幸せです。
今日も、彼と二人でご飯を食べます。
了
お読みいただき、ありがとうございました(●´ω`●)
みわかず




