40歳OL、応援される
「もしさ、年下と付き合うなら何歳差まで?」
「は?年下なんてあり得ないわー」
「私は5歳かな。でもライダーくんならいつでもOK!」
「あーっ!そういうことなら前の戦隊物のレッドくんね!いや、やっぱり今のブラックくんにしとく!」
…………だよねぇ。
「え、なに、本気の話!?」
「大石がついに恋の話!?」
昼休み。お弁当を食べ終え、お茶を飲むのを見計らって同僚に質問。吉田くんのことを一人で考えてると煮詰まってしまい、思い切って口にしてみた。
でも二人とも既婚者だし、あと何年かで孫ができてもおかしくない。恋バナもネタに走らざるをえない。ですよねぇ。しかも結婚は諦めたと宣言し、彼氏もいなかった私だ。四十路で恋バナって、思っていたより恥ずかしい……!
「なんというか、照れるというのではなく、いたたまれなくて恥ずかしいんだけど……」
「そこはいいから、相手は何歳?」
「……24」
「「 はああっ!?ほぼ息子じゃん! 」」
ぐはあっ!
「……そうなの」
「どこの人?勤め先は?」
「勤め先はスーパーで、レジのアルバイトをしてる」
「「 はあっ!?アルバイト!? 」」
ぎゃあっ!恐い!
「待って待って!えーと、デイトレーダーで、駅前のマンションに住んでる!」
「「 ……駅前って、あのマンション!? 」」
「うん」
「ということはかなり稼いでるわね……」
「そんな人がなんでスーパーでレジ?」
「え、と、趣味……?」
「趣味……んで?壺や布団は?買わされてない?」
「いやいや、それならミネラルウォーターでしょ」
「いや何も……」
「保険の話はされた?」
「いやいや、デイトレなら投資じゃない?」
……やっぱり詐欺を疑うよね……
「悪いけど、そんな年下じゃあ、一度は疑うわ」
ですよねぇ……
「んで、デートは?してるの?」
「え、と、月に一、二回程度……」
「マジで!そういうのは早く教えなさいよ、もう」
「で?行き先は?」
「え、と、向こうが土日仕事だから、主に喫茶店でご飯で、あとうちのお墓参りかな」
「「 お墓参り!? 」」
「うん。母の月命日に付き合ってくれてる。荷物全部持ってくれて、とても助かるんだ」
「大石が追いかけてんじゃないの?」
「あー、どちらかというと向こうが……」
「へー!でもお墓参りって、グイグイくるわねその子。大石は嫌じゃないの?」
「それは嫌じゃないよ。私の方に合わせてくれることが多いし」
「え!そうなの?」
「うん。結構気遣ってくれる」
「えぇえ……どう育てたらそんな男の子ができるんだろう……」
「孫に賭けるか……」
「何年後の話よ、まずは嫁をもらわなきゃだし、娘を嫁に出してからだわ」
「それはそうだけどさ〜」
「同居しなくてもいいから孫とは遊びたい」
「わかる!」
……私の質問、聞いてくれてたかな……?
「……それでさ、今後どうしようかと思ってて……」
「「 今後?結婚すんじゃないの? 」」
二人がきょとん。
「は!?え!?付き合ってもいないのに!?」
「「 はああっ!?付き合ってない!? 」」
まだです、とも言えず、付き合ってないと繰り返すのにも躊躇すると、二人にまじまじと見つめられた。何か喋って〜。
「いや、まあ、だから、年下はありなのか聞いてみたのよ……」
世間的にどう見られるかすごく、ものすごく気になる四十路なのよ。だって吉田くんは若いのよ。選り取り見取りなのよ。
「もしさ?息子が自分と同じ年齢の彼女を連れてきたらどうなの……?」
「とりあえず驚く」
「そりゃまあ固まるわな」
ですよね……
「でもさ」
事務所用急須からおかわりのお茶を湯呑みに注いでくれた同僚は柔らかく笑った。
「大石はその彼が好きなんでしょ?」
「うっふっふ。さっきどんな顔して彼のことを語っていたか、説明しようか?にっひっひ」
……顔が熱い。
「ときめきは大事にしなさいな。元彼と別れてから今まで恋愛のれの字どころか、好意のこの字もなかった女よあんたは。その彼と付き合いな」
「そうよ〜。何にも遠慮いらないじゃない。むしろ捕まえろ逃がすな押し倒せ」
「おし!?いやいや!……いい、の、かな……」
「そんな隈を作るくらい悩んでんでしょ。応援するわよ」
「そうよ!これでもしも詐欺だったら、私らがその彼のケツの毛まで毟り取ってから警察に突き出してやる。んっふっふ」
「わー物騒ー、そしてその言い方に年代を感じるわー」
「いいの!これくらい言わないと大石は動けないわよ」
「それもそうか。じゃあ弁護士は任せろ。友だちの旦那に一人、旦那の友だちの従兄妹に一人。最短なら我が社の顧問弁護士に話つけるわ。社長含めて飲み仲間だし」
「あんたの方が物騒がリアルだわ」
「ふふ……はは、二人とも、ありがとう」
すでに目頭が熱くなっている私の震える声に、二人はグッと手を出して親指を立てた。
「「 いけ大石。幸せを掴め 」」




