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40歳OL、正座する、させる

おまたせしました。m(_ _)m

最終話まで、7時、19時の2回投稿します。





 今日買い込んだ食料の約60%が一度の食事で吉田家の胃袋に収まった。……男の子すごい……ここまでとは思ってなかった……

「うちで一番食べるのはマサちゃんスよ」

 哲哉(てつや)くんが庭にあるステンレスの流し台で網を洗いながら教えてくれた。マサくんには結局会えずに終わりそうなのでもはや大男のイメージだ。

 それプラス、山盛りだった野菜もマサくんの取り置き以外は綺麗になくなった。

「俺、ここに来てから野菜食べるようになったんだ」

 中学生組が口々に、野菜ってうまいと言う。

「自分で育ててもやっぱりトマトは嫌いだけと、食べられるようにはなった」

「それな。俺はピーマンだなぁ。丸ごと焼けるバーベキュー万能」

 片付けがめんどいけどと笑いながら、手際よく作業する子供たち。今日の野菜は庭の畑のものと、ご近所さんからのおすそ分けらしい。

 しかし、私の手伝う隙がない……食器は紙皿だったから捨てて終わりだし、テーブルや椅子は拭いちゃったし、ドラム缶の残り火には小学生組が水をかけているし、(いわお)さんはお風呂の準備。

(あきら)さん」

 家の中の吉田くんに手招きされた。玄関を入ってすぐ左手の和室にお仏壇があり、その斜め上の欄間に笑顔のおばあちゃんの写真が飾られている。吉田くんがろうそくに火をつけてくれた。

 お線香の香りがいつもと違う。親戚ではない、よその家でお線香をあげるって、この歳になっても少し緊張する。

 香炉の向こうにある写真のサキさんはやっぱり笑っていて、

『いやね、緊張なんてしなくていいのよ〜!』

 そんな風に言ってくれそうな気がした。

「はじめまして。いつも……()くんにお世話になっています、大石明と申します。本日は大変ご馳走になりました。そしてとても楽しい時間を過ごさせていただきました。ありがとうございます」

 会ってみたかったなぁ。

 巌さんや子供たちを見ていて、肝っ玉母さんを想像できても、声音、喋る調子、手のあたたかさ、存在感を感じることができないのが残念。

 母とは違う人。でもなんとなく、母親同士ではお喋りが止まらない気がする。……口を挟めないでいる私と吉田くんを想像できる……なんなら父と巌さんもお茶をすするだけかも……ふふ、ありえそう。

「ふふっ……」

「どうしました?」

「……内緒」

 思わず笑ってしまったけど、ちょっと吉田くんには言いにくい。恥ずかしい。

「もしや霊媒体質ですか……!?」

「やだ違うわよ!でも内緒」

「え〜」

 仏壇の前から移動し、吉田くんに向かって正座すると、吉田くんもこちらに正座で向き直った。さて。

「というか、何も言わず家に連れてこられたのは騙し討ちに入らないのでしょうか?」

「あ。……そういえば怒られるんでしたね、俺」

 実家に連れてこられてとても驚きはしたけれど、本気で怒ってるわけじゃない。実際、吉田くんの恋人と思われたからすぐに受け入れられたとも思う。とても楽しい時間ではあったけど、吉田くんと私は恋人じゃない。

 ……今まさに、しゅんとした吉田くんに絆されそうなチョロオバサンだけど!普通に釣り合わないでしょう!

「行き先を聞かずにホイホイついて来た私も悪いけど、どうして?」

「…………名前で呼んでもらいたくなったから……」

 ボソリと言われた事に口があいてしまった。

「うちならみんな吉田だから、強制的に名前で呼んでもらえるかと。あわよくばそのまま定着してくれればと思って……」

 う……吉田くんの耳が赤い!本気なの?本気で言ってるの?もうチョロオバサンは心拍数が大変だよ!

「……あー、かっこわる……」


 照れて顔を背ける吉田くんが可愛すぎるんですがーっ!!







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