40歳OL、ビビる
「わはは!明さんうっかり〜!うちみんな『基本的に吉田』ッスよ〜!」
哲哉くんにツッコまれて頬が熱くなる。ほんとオバサンうっかりだよ……
「どうしました明さん?」
焼き係をしていた吉田くんがトングや肉の皿を弟くんたちに任せてやって来てくれた。
しかし。来てもらってもどうすれば?巌さんに結婚すると思われてるってよ、って聞きにくい!
すると巌さんがサクッと言ってしまった。
「お前、今日来たのは結婚決まったからじゃねえのか?」
ぎゃあああっ!?
「あ〜、いや、付き合ってもいない」
「あ?」
途端に巌さんの眉間にシワが。ひぃっ!
「……どういうつもりで連れてきた?」
声低っ!ケンカ?親子喧嘩になっちゃうの!?付き合ってないし、四十路ですみませんーっ!!
「明さんは大人の女性だから、まずは俺の過ごしてきたところを見てもらおうと思って」
……え?
「説明しろ」
「俺の育った環境は特殊だ。父親はもうすぐ80歳になるし、血の繋がらない兄弟は呆れるぐらいいる。父親の世話をするつもりはあるが、事業を継ぐ気は今のところない。今いる弟たちが自立するまではこっちを優先する」
巌さんが眉間のシワを少し解き、息を吐いた。何が通じたのか、吉田くんは苦笑。
「ほらな、いくら20代だって収入があったって俺の条件が悪いんだよ。だから明さんを騙し討ちしたくなくて連れてきた」
騙し討ち。そんな風に考えてくれていたんだ……
「……結婚なんぞ勢いだぞ」
「その勢いまで持っていけないくらい明さんのガードか堅いんだよ。その証拠にいまだ『吉田くん』呼びだ」
あ。
「がっはっはっは!情けない!それでも俺の子か!」
「うっせえわ!クソジジイ!」
「『吉田く〜ん』!」
「テツ!」
「佳ちゃんダッセ!」
「なんだよ初めて彼女連れてきたと思ったのに〜」
「いやいや、男は本気になるとヘタレるんだよ」
「「 なんだよそれ? 」」
「だって玉田の婆ちゃんがイワオちゃんもサキちゃんには勝てなかったね〜って言ってたよ」
「「 ギャハハハッ!親子じゃーん! 」」
「あ、テッちゃんはこの前女子のバッグ持ってあげてた」
「「 テッちゃん、佳ちゃんのこと言えねぇじゃん! 」」
「違うわ!荷物いっぱいで大変そうだったんだよ!」
中学生組が盛り上がる。話の内容は吉田家は基本女子に優しいようだ。が、なんか、いたたまれない……
「でも女子は力弱いから、手伝ってあげるとお菓子くれるよ」
「僕らバレンタインにチョコいっぱいもらえたよね〜」
「うん!3倍返しできないって言ったら、お返しなんていらないからって言われたしね〜」
小学生組の発言にあんなに騒いでいた中学生組は撃沈。
「……弟たちのモテはそういうことか……」
「3倍返しを条件にしてももらえなかったのに……」
あらまあ、いつの時代もバレンタインて切実なのねぇ。
「兄ちゃんたちも佳ちゃんとかテッちゃんの真似すればいいのに」
「マサちゃんも女子には優しくするようになってからチョコもらえたって言ってたよ」
「「「 クソッ!俺たちだけか!チョコ無しは! 」」」
……なんか、思春期可愛いわ〜。
「アホか。下心で優しくしたって女には通じねぇぞ。そん時ゃ向こうもわかって仕掛けてくるからな。そんな無駄打ちしねぇで本気の女に真心込めろ」
「うわ出た、ジジイの名言……ジジイのくせに!」
「かっかっか。お前らみたいなガキにはまだ早いが覚えておけ」
……ああ、うん……吉田くんのルーツ、ここにありだね……
不定期になりますm(_ _)m
口調の荒い吉田くん…読者さまに嫌われないといいなぁ……(笑)