40歳OL、呆気にとられる・2
マサくんの分のお肉が焼き上がる頃、続々と男の子たちが帰って来た。ランドセルを背負った子が二人、中学校の校章入りの通学バッグを背負って自転車をひいた子が三人。
「ほらな!やっぱり学校で見えたの佳ちゃんの車だった!」
「わあ!今日は肉だ!ヤッフゥーッ!」
「あれ?女の人がいる。こんにちは?」
中学生たちはバーベキューに喜んで、小学生は私を見てキョトン。それでもちゃんと挨拶ができるなんて偉いわぁ。次々に挨拶されて、感心しながらも少し戸惑う。独り身だとこんな機会まずないからね。
「こんにちは。おかえりなさい」
あやしいオバサンにならないように笑顔笑顔。小学生はまだ私より背が低いので見上げられた。
「あの、どちらさまですか?」
ランドセルの少年が首をかしげる仕草がめっちゃ可愛い。
「ぐっふっふ、なんと佳ちゃんの彼女だぜ!」
「「「 え!オバサンじゃん! 」」」
「テメェら歯ぁ食いしばれえっっ!!」
自転車を置き去りに中学生組と吉田くんとの追いかけっこ勃発。それをポカンと見やる小学生組、そして大笑いの哲哉くんと巌さん。……もう、哲哉くんはわかっててやってるなぁ……いたずらっ子め。それにしても、男の子って元気だわあ。
嘘でしょ……あんなにあった肉がみるみるなくなっていく……
「食わねぇとなくなっちまうよ、明ちゃん」
巌さんが苦笑しながら隣に立つ。ドラム缶を縦に切った手作りのバーベキューコンロはもう10年は使っているそうだ。その網いっぱいに置かれた肉。野菜は焼かず、台所で蒸されたものが大皿で折りたたみテーブルにドンと置かれている。そのまま食べるか、焼くならそこから網に乗せるスタイルのようだ。
「みんなを見てるとお腹いっぱいになってしまって……」
「かっかっか。俺も若い頃はあいつらに負けない食欲だったが、もうちょい大人しかったなあ」
「ふふふ、兄弟が多いとこんなに賑やかなんですね。私はひとりっ子なので圧倒されます」
「いやあ、兄弟なら飯時こそ殺伐とするわな。うちの子ぉらはうるせぇけど大人だぁね」
うるさいけど大人……か。
「うちの事情は聞いたかい?」
「はい、概ねは」
「うん。吉田の養子は、まだ帰ってない将大で最後だ。ツレがいなくなっちまったし、さすがに俺も歳だ。今は哲哉から下の子たちは預かりだな。でも家を出た子らが誰彼とマメに来てくれるんで、まだやってられるよ」
巌さんは眩しそうに肉の取り合いをする子供たちを見る。
「最近は元気を嫌がる子もいるが、やっぱり子供が元気だと大人は安心するわな……毎日だとしんどいが!かっかっか!」
職場の同僚たちも子供が小さい時は似たことを言ってた。でも大きくなって自立すると、日々が物足りないとも。
「んで?入籍はいつだい?」
にゅ!? う!?
「ん?佳と結婚するんだろ?」
ケ!? ち、ちょちょちょっとタイム〜ッ!!
「よ、吉田くん!」
「「「「「 はい? 」」」」」
全員に返事されてしまった。




