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青葉大三高生徒会総辞職!!  作者: さくら 美羽都
19/22

“生徒会合戦”~雑な扱い~




何故だろう。

今年の“生徒会合戦”は、勝てる気しかない……!

「茶駅田。これは、もらったも同然だな!」

「まだ、分からないわ」

「えっ」

「一高、二高がまだ本気を出していないのよ」

「なん……だと!?」

「だから、まだ分からないわ。油断は禁物よ」

「わ、分かった……」

まさか、一高と二高が本気を出していなかったとは……

「何故、一高と二高は本気を出してないんだ?」

「それは……」

「それは?」

「私たちが本気を出し始めたから、圧倒されて本気を出すのも忘れているからよ」

「おい、自信満々かよっ!」

ただの、三高(うち)の自慢かよ!?どんだけ自信があるんだ、茶駅田……!

「さぁて、「うちの学校が一番じゃあ!!」という生徒会は一体、どこの学校なのでしょうか!決まった生徒会から挙手をして、私から指名されたらアピールしてくださいね~」と、若様が説明している。

スッ……

「ぅえっ、ちょっ、茶駅田!」

「は~い!早かった三高から、よろしくどうぞ~」

「我々、三高は“個性派”揃いでございます」

「ま、まぁ……確かにそうだな」

「“落ちこぼれ”だの“庶民的”だの、色々と言われておりますが……」

(一体、何を言うんだ……!?茶駅田!!)

「芸人並みの“個性的”なところは、この二校には負けませんわ!それに……」

「それに……?」

「三高の生徒会ほど、会長と副会長の掛け合いがぴったりと、はまる人間は居ないわ!!」

「確かに、そのと~おり!」

「お黙りッ!」

「はぃいいッ!」

「会長の尻を敷くのは私、副会長である茶駅田 (あき)です!神司屋、私に付いて来なさい!!」

「はいっ!付いて行きます、姉さん!!」

「いや、そこは会長らしく「なんで俺が!?」って突っ込んで、反論するとこでしょッ!」

「えぇえええ~っ!?」

茶駅田のアドリブがすごい。パッと即興で思いつくところが最早、神業だ。

俺は、ひたすら茶駅田が投げてくるボールを打つので精いっぱいだ。

この後も若様が「もう、そろそろ他の生徒会に譲ってもらえますか?」と言われるまで、茶駅田が俺をリードしてくれた。

有難いんだけど、茶駅田の(したた)さが怖く感じるのは、気のせいなのだろうか……

ますます、茶駅田が何を考えて思っているのか分からない。

いや……一生、分からないだろうな。

「神司屋は会長だけど、乙女男子です!」

「いや、それについては訂正する。俺は、乙女男子じゃねぇえええ~!!!」

「それは、叫ぶほどのことじゃないでしょう。うるさいから、ボツ!」

「はぁあああああ!?副会長様の欲しい言葉が分からねぇ……!!」

「神司屋、キャラが崩壊しかけているわ」

「いや、もう崩壊してるから!何なら、俺の普段のキャラなんて面影すらないぐらい、キャラ崩壊してるんだよ!もういいよ、今日ぐらい!崩壊してやるぅー!」

「キャラが崩壊し過ぎて、気持ち悪い……」

「おいっ、こんななりでも生徒会長だぞ!少しは敬え、茶駅田」

「無理です」

「いや、即答!?ってか、真顔はヤメテ!真顔は(こた)えるから……せめて、にこやかに言って……」

「嫌よ。なんで、にこやかに言わなきゃいけないのよ」

「今日ぐらいは、会長の俺を(いたわ)れよっ!!」

「ハイハイ」

「冷たくあしらわれた……」

俺と茶駅田の掛け合いは、見事にウケていた。「もっとやってー!」「茶駅田さんって、見掛けによらず面白いよな」「会長に親近感、湧いたー」って声も、チラホラ聞こえた。

俺は気付けば、茶駅田と漫才やコントのような掛け合いをしていた。

茶駅田は優しくしてくれないので、冷たくあしらわれる。

俺が絡みに行っても噛みついても茶駅田は一切、構わず冷たくあしらっていく。

幽霊や空気のように、するりするりと通り抜けていく。

それが少し、寂しくもある。

俺が少し話し方を変えてみた時だって、他の生徒会メンバーに突っ込まれたのに、茶駅田だけは無言で普段通りに接してきた。

俺は、茶駅田と仲良くなりたいと思った。

茶駅田は、敢えて友達を作っていないように見えた。

でも、やっぱり寂しい。孤独が怖い。そういう風にも見えた。

自分でも何故だか分からないけれど、俺は茶駅田に少しでも学校生活が楽しかった、と思って欲しい。

三高の生徒会で良かったと思ってもらいたい、そう思った。

生徒が少しでも「学校生活が楽しかった」「学校が三高(うち)で良かった」と思って欲しい。

俺は、いつの間にか生徒会長らしいことを考えていたんだな。

最初は、お世話になった先輩である生徒会長から頼まれて会長になった。

特に会長になりたかった訳でも、内申点を上げたかった訳でもない。

ただ、頼まれたからなっただけだ。

“生徒会合戦”も弱気だったし、消極的で棄権しようとまで考えていたのに、副会長の熱意に負けて今や、俺は堂々と“生徒会合戦”の舞台に居るんだ。

人生、何があるか分からないとは本当だな。



今年こそ、俺たち三高が“生徒会合戦 初優勝”と歴史に名を刻む時だ───






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