“生徒会合戦” ~雑な闘い~
「では、まずは各々の生徒会から何名か選出し、漫才でもコントでも何でもいいので、自分の生徒会をアピールしてください!」
「え……」
若様!?今までの“生徒会合戦”にはなかった項目だぞ……!
なんで、いきなり……
(今までの“生徒会合戦”では、各生徒会長は自分の生徒会についてボケ、他の生徒会役員がツッコミを入れるという恐怖の項目だった)
もしかして、俺の負担を軽くする為に……
俺は若様と目が合い、ウインクと同時に「キラン」という効果音が聴こえた。
どうしよう、惚れた。
「では、三高からは私と神司屋が出るわ」
「え、そんな勝手に決めていいのか!?」
「じゃあ聞くけど、三高の中でキャラが濃くて個性的なのは私と神司屋以外に、誰が居るの?」
「いえ……居ません」
「分かれば、よろしい」
「ははぁ……!」
「おい!三高の生徒会長と副会長、立場が逆転してないか?」
「会長って、副会長に何か弱みでも握られてんの?」
「バカ~、これは付き合ってるんでしょ!」
「え~っ!?」
いやいやいや、勝手にあれこれと妄想をするのはやめてくれ!
俺と茶駅田は付き合ってもないし、弱みも握られてない!
それに立場が逆転しているのは、ご愛嬌!
「申し訳ないけれど、残念ながら私と会長は交際してないので、あしからず」
訂正したの、そこだけ!?いや、他にも訂正する箇所はあるだろう!?なんで、そこだけ!?
「さ、訂正したわよ」
「まだ他にも、訂正箇所はあるだろーがー!」
「え、どこ?」
「えっ!」
「え?」
「おかしいだろう、茶駅田!交際していない以外にも、訂正箇所はあるぞ!?」
「あら、あったかしら」
「あったよ、あった!」
「うるさいわねぇ」
茶駅田は呆れながら「とりあえず全て否定するわ、以上」と唐突に言うもんだから、俺は付け足して「交際もしていないし、弱みも握られていない!後、立場が逆転しているのは、ご愛嬌だっ!とりあえずではない、以上!」と無事に訂正することが出来たので、俺は満足した。
ちなみに、俺と茶駅田は今のところ同じクラスだ。
生徒会で一緒になるまで話したことは無かったが、生徒会に興味が無さそうな茶駅田が副会長に指名されたことを知った時、開いた口が塞がらなかった。
「私には、野望があるの」
「な、なんだ……?」
「私は副会長だけど、生徒会長並みの権力を獲得し、頂点に君臨すること……」
「な……なんと!」
俺は言葉が出なかった。それなら、喜んで会長職を差し出そう。
俺が副会長に変わってもいいんだぞ、と言うと「それじゃないのよ、それだと意味ないの。副会長でありながら、会長職を奪えるほどの力を獲得してから奪うのよ」
と言われた時は、恐怖でさえ思った。
そんな茶駅田が今では、俺の隣で大人しく副会長としての職務を全うしている。
俺は、いつ会長職を奪いに来るのかとビクビクしていたが、そんな気配すら感じることなくここまで来た。
忘れているのだろうか?いや、そんなことはないはずだ。
あの茶駅田だぞ?でも今日負けたら、生徒会に再びなることは二度とない。
俺たち二年生は、任期関係なく“生徒会合戦”に負ければ、生徒会の職を降りなければならない。
しかし、生徒の間で人気があって且つ先生たちによる会議により、特例で生徒会メンバーに戻ることが可能らしいが……どうなんだろう。
実際に特別で入った生徒は居ないらしい。確かに、歴代の生徒会執行部のメンバーで特別で戻った者は居なかったし……
いや、今はそんなことを考えている暇はない。
如何に笑いが取れて、三高が勝てるか……今はそれに尽力すべし!