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第4話 「祖母、圧倒的生還ッッッ!!!」

「おお、祖母よ……! 生きていたのか……! まさか狼男の腹の中から、自力で脱出するとは……!」


 奇跡の生還を遂げた祖母に対し、感涙しながら言うアネット!


 すると老婆は、そのしわくちゃの顔を歪ませて不敵に笑ったッ!


「ふっ、アネットよ……私が狼男に喰われた程度で、死ぬような女だとでも思ったのかい?」


 威厳たっぷりにそう言い放つ彼女の雰囲気は、まるで歴戦の戦士のようであるッ!


 ここで読者の皆様に説明せねばなるまい!!!


 彼女――すなわちアネットの祖母は、若い頃から世界中を旅して各国の武術を習得してきた、筋金入りの武闘家なのであるッッ!!


 身長は小柄で筋肉もほぼないに等しい彼女だが、かつては恐るべきグラップラーとして多くの武闘家たちに恐れられていたッ!


 そして、孫であるアネットに武術を教え込んだのも、ほかならぬ祖母であるッ! 彼女の熱心な指導の甲斐あって、アネットは武の心得を身に付けたッッ!!


 まさにこの祖母にしてこの孫あり、ということであるッッ!!


「はぁ……なんというか、この家族にはあまり関わらない方が良さそうだな……」


 アネットと老婆のやり取りを見てドン引きするシャルル! その感性は極めて一般的であるッ!


「さあ、アネットよ! あの狼男を仕留めるぞ!」


「応ッッ!!」


 するとアネットと老婆は、鋭い眼光で目の前の怪物を睨み付けたッ!


 並の人間であれば、2人の眼光に捕らえられただけで足がすくみ、震えが止まらなくなってしまうであろうッ!


 事実、狼男も野生の勘で恐怖を感じ取っていたが、しかし彼の中の誇りが“逃げる”という選択肢を拒んでいたッッ!!


「フン……来るなら来やがれ!」


 力強く言い放ち、腰を低く落とす狼男ッ! そして両手を大きく広げ、臨戦態勢に入ったッ!


「よし、覚悟しろ狼男ッ!」


 アネットはそう言って、ファイティングポーズを取るッ!


 それに合わせて隣の老婆も、中国拳法における“虎の構え”を取ったッッ!!


(※虎の構え……古代中国にて、“歴代最強”と謳われた最強のグラップラー、漸兆海(ゼン・チョウカイ)が編み出した構え。片足を軽く浮かせ、両手は虎の前足のように前方に突き出す。攻防一体の強力な構えであり、漸兆海(ゼン・チョウカイ)がこの構えで古代中国の妖怪・疫鬼を倒したという逸話はあまりにも有名。一説によると、彼は幼少期虎によって育てられ、その時の経験からこの構えを考案したと言われている――世界童話出版・「古代中国最強武人列伝」より抜粋)


 そしてアネットは狼男を見据えたまま、後ろのシャルルに声をかける!


「おいシャルルッ!」


「なんだ?」


「私と祖母とで奴に接近するッ! お前はそこから弓で支援しろッ!」


 それを聞いたシャルルは、やれやれといった感じで苦笑いしながらも、


「任せろ。僕の華麗な弓さばきで奴を翻弄してやる」


とCOOLに答えたッ!


「よし……行くぞッッ!!」


 (とき)の声を上げるアネットッ!


 彼女と祖母が狼男に突進していくと、後方のシャルルがすかさず矢を放ったッ!


 その繊細かつ豪快な一矢は、走る女性2人を追い越して一直線に標的へッ!


「ぬぅ!」


 面倒くさそうに矢を弾き落とす狼男ッ!


 その時彼の懐まで到達していたアネットと祖母は、息の合ったコンビネーションで相手の腹に正拳突きを放ったッッ!!


「何ィ!?」


 アネットの力強い突きと、祖母の素早い突きッ! アネットの拳をパワータイプとするならば、老婆のそれは中国拳法仕込みのスピードタイプといった所だろうかッ!


 その2つの拳が、的確に狼男の腹を直撃したッ!


「グワァァァ!!!」


 狼男は、たまらず後方に吹き飛んだッ!


 そして背中から勢いよく大木に激突するッ!






 ドスンッッッ!!!






 たくましい巨木が揺れ、枝に止まっていた小鳥たちが一斉に飛び立ったッ!


「ま、まさか……この俺様が、人間どもに敗れるなど……」


 地面にうつぶせで倒れながら、完全に戦意喪失する狼男ッ! その目は負け犬のように怯え、鋭い爪の生えた両手は小刻みに震えているッ!


「やれやれ、もうおしまいかい……おい、アネット」


 加齢によって白く染まった長髪を風になびかせながら、祖母は孫に呼びかけた!


「うむ、なんだ?」


「とどめ、アンタに譲るよ」


「そうか……感謝するッッ!!」


 赤ずきんは仁王の形相で頷くと、堂々と狼男に歩み寄っていく!!


 そして四つん這いで赤子のように震える敵の下につくと、両足を大きく広げ、最後の一撃を放つ準備を整えたッッ!!


「立て、怪物よ……とどめを刺してやる……」


 それを聞いた狼男は、一瞬にして瞳に怒りをにじませ、歯ぎしりをするッ!


「舐めるなよ……人間のガキが……!」






 ブオンッッッ!!!






 狼男は四つん這いの体勢から素早く跳び上がり、アネット目がけて腕を振り上げたッ!


「切り裂いてやる!!!」


 しかしッ!


 彼の鋭く磨かれた爪が、アネットの肌に到達することはなかったッッ!!


 何故かッ???


 それは……狼男の爪が触れるよりも早く、アネットの右拳による鋭いカウンターパンチが、彼の顔面に直撃しているからであるッッ!!


「!?!?」


 顔面を醜く歪ませ、激しく混乱する狼男ッ! 牙はバキバキに折れ、そこから勢いよく吹き出す血がアネットの赤いずきんを濡らしたッ!


「赤いずきんをかぶってきてよかった……ッ! これなら、返り血が目立たなくて済む……ッッ!!」


 アネットはそう言うと、今度は左拳で相手の腹にアッパーを放ったッッ!!


「破ッッッ!!!」


「グワァァァーーー!!!」


 強烈な一撃ッ!


 そのアッパーによって、狼男は一気に真上へと吹き飛ばされるッ!


 ここで読者の皆様に説明しよう! 彼女のこの一撃は、古代エジプトで生み出された空手の技、その名も“エジプティアンアッパー”であるッッッ!!!


(※エジプティアンアッパー……一般の方々にはまだあまり知られていないのだが、日本の有名な格闘技・空手の発祥は、実は古代エジプトだという説が現在の通説である。その証拠に、ピラミッドの壁画には空手のような型から強烈なアッパーを放つエジプト人の姿が描かれている。この技こそが“エジプティアンアッパー”だ。といってもこの技は対人用のものではなく、危険な肉食動物を狩る際に使われていたそうだ。どうやら、肉食動物をアッパーによって空高くまで吹き飛ばすことで、その闘いの姿を天に住む神々に見せつける、という儀式的な意味合いが強かったらしい――世界童話出版・「空手と古代エジプト、その知られざる繋がり」より抜粋)


 そして狼男は地上に戻ろうと空中で必死にもがくが、無論無駄ッッッ!!!


 なすがままに空を吹き飛んでいくだけだッッッ!!!


「うぐぅ、ちくしょう……覚えていやがれ、アネット――いや、赤ずきん!!!」


「さらばだッッッ!!!」


 そして空高くまで殴り飛ばされた狼男は、星となって消えるのであった……ッッッ!!!


 次回、「熱血武闘派赤ずきんよ永遠にッッッ!!!」に続くッッッ!!!

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