表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第3話 「狼男との死闘ッッッ!!!」

「ぬおぉぉぉッッッ!!!」


 両腕でがっしりと狼男を掴んだまま、激しく雄たけびをあげるアネットッ!


 彼女のその叫びが、薄暗い洞窟の中で反響したッ!


(くっ……! こいつ、なんて馬鹿力だ……!)


 アネットの拘束から逃れようと必死にもがく狼男ッ!


 しかしどれだけ力を込めても、彼女の丸太のように太い両腕を振り払うことができないッ!


 するとアネットは相手を掴んだまま「フンッ!」と短く声を上げると、その圧倒的膂力(りょりょく)でもって狼男を持ち上げたッ!


 そして勢いよく腰をねじり、後方に向かって彼を投げ飛ばすッッ!!


 この衝撃の光景に、読者の皆様も驚きを隠すことができないッ!


 なんと彼女は、身長3メートルにも及ぶ狼の怪物を投げ飛ばしたのだッ!


「な、なんだとっ!?」


 驚きを隠せなかったのは、狼男も同様であったッ!


 為すすべなく宙を舞う彼が飛ばされた先は、洞窟の出口ッ!


 そして彼はそのまま外へと放り出され、森の地面に激突ッ! ゴロゴロと無様に転がったッ!


「な、なんということだ……! まさかこの俺様が、一瞬で洞窟の外まで投げ飛ばされてしまうなんて……! ありえない!」


 機敏な動作で立ち上がりながら、動物的本能によって圧倒的恐怖を感じ取る狼男ッ!


 弱肉強食の野生の世界において、“恐怖”とは自分の身を守るためのレーダーとも言えるッ!


 そのレーダーが、狼男に告げるのだッッ!!


 目の前の人間は、食物連鎖のピラミッドにおいて、自分よりも高い位置に座する存在なのだとッッッ!!!


(ありえねぇ! この俺様が、人間如きに恐怖するなど……!)


 鋭い歯をギラリと光らせながら、歯ぎしりをする狼男!


 するとその時、洞窟の中からアネットが飛び出してきたッ! 彼女の頭部を覆う鮮烈な赤いずきんが、狼男の目に焼き付くッ!


「これで、暗闇というハンデは消え去ったな……もう貴様に逃げ場所は無いぞッ!」


 地面にスタリと着地しながら叫ぶアネットッ!


 彼女の言う通り、狼男は今、太陽の木漏れ日が降り注ぐ森の中に全身を晒していたッ!


 洞窟の暗闇であれば目の発達した彼の方が有利であるが、今は違う!


「問おうッ! 貴様が私の祖母をさらった犯人かッ!?」


 アネットが仁王の形相で問いかけるッ!


 すると狼男は眉間にしわを寄せ、


「ああ、その通りだ! お前のおばあちゃんは、この俺が丸飲みにしてやったよ!」


と答えたッ!


(なるほどな……こいつ、あの婆さんの孫か! 俺様に復讐するために、ここまでやって来たってわけだな!?)


 一瞬にして事態を理解する狼男ッッ!!


「な、何ィ……ッ!? 丸飲みだと……ッ!?」


 赤ずきんの少女は、相手の言葉に怒りをあらわにしたッ!


「許せんッ! 祖母の仇、このアネットがとってくれるッッ!!」


「アネット……? フン、おかしな奴め! 女みたいな名前してやがるぜ!」


 狼男は、虚勢を張るように相手を煽るッ!


「失敬なッ! 私は女だッ!」


「ハ……?」


 アネットの言葉を聞いた瞬間、思考が完全にフリーズする狼男ッ!


 彼女は、その一瞬の隙を見逃さなかったッ!


「フンッッッ!!!」


 渾身の脚力で地面を蹴り、凄まじいスピードで敵との距離を詰めていくアネットッ!


 ゆうに時速200キロは超えているであろう速度で狼男の眼前に迫ると、その勢いのままに相手の顔面目がけて拳を放ったッ!


「グゥっ!」


 情けのない声を上げて吹き飛ばされる狼男!


 彼はそのまま枯葉の敷き詰められた地面を転がると、悔しそうな表情で立ち上がったッ!


 そして折れた奥歯を血の混じった唾液と共に「ぺっ!」と地面へ吐き出し、わなわなと震えるッ!


「こ、この野郎……俺様の歯を、折りやがったな……?」


「私は“野郎”ではなく“乙女”だがなッッ!!」


 狼男にとって、鋭くとがった牙は狩りにおける“武器”であり、誇りなのだッ!


 それを折られることはすなわち、これ以上ない侮辱ッ!


「屁理屈を言いやがって……許さねぇ!!!」


 彼は激しく吠えると、アネット目がけて突進するッ!


 そして爪を突き立て、彼女を引き裂こうとしたッ!


 だがしかし、そんな行動はアネットにはお見通しであるッッ!!


「無駄ァッッ!!」


 彼女はとっさに姿勢を低く落とし、迫ってくる狼男に足払いをかけた!


「うぐっ!」


 体勢を崩された彼は、そのまま豪快に地面にすっ転ぶ! さらにアネットは追い打ちをかけるように、うつぶせの相手目がけて垂直にチョップを仕掛けたッ!


 だが、狼男もただではやられない!


 機敏にひっくり返って体を仰向けにすると、彼女のチョップを真剣白羽取りの要領で受け止めたッ!


「なんとッ!」


 驚くアネットッ!


 狼男はそこから、アネットの腹に強烈な蹴りをくらわせたッ!






 ズドンッッッ!!!






 激しいキックが彼女のみぞおちにクリティカルヒットッ!


「うぐぅ……ッ!」


 アネットはみぞおちを押さえながら苦悶の表情を浮かべ、よろよろと後ずさるッ!


「舐めるなよ、人間! お前が女だろうとなんだろうと容赦はしない! あの老婆同様に喰ってやる!!」


「貴様ァ……ッ!」


 アネット、ピンチッ! 圧倒的ピンチッッ!!


 ――と、その時ッ!


 彼女の後方から、一本の矢が飛んできたッ!


 ヒュン、と空を切りながら木々の間を潜り抜ける矢は、アネットのずきんすれすれを通過し、そのまま一直線に狼男の顔へッ!


「!?」


 慌てて顔を横に反らす狼男! 矢は彼の頬をかすり、後ろの木にトスンと刺さったッ!


「今度は何だ……?」


 頬からかすかに血を滴らせながら、苦々しく呟く狼男ッ!


 するとアネットの下に、1人の男性が歩み寄ってきた!


「フフ……やはりレディーを1人にして逃げ帰るなど、この僕にはふさわしくない」


 そう! 彼はシャルル!


 先程アネットを洞窟まで導いて帰ったはずの彼が、弓を構えてCOOLに戻ってきたッッ!!


「シャルル……助太刀、感謝するッ!」


「ふん、気にするな。レディーを助けるのは当然だ。たとえ君のような筋肉だるまでもね」


 彼女の極限まで鍛え上げられた全身に一瞥をくれながら、COOLに言うシャルル!


 そして肩まで伸びた黒髪をCOOLにかきあげながら視線を狼男に戻すと、背中の矢筒からCOOLな手つきで矢を取り出し、弓につがえたッ!


「くっ、二対一か……!」


 苦虫を噛み潰したような表情で言う狼男ッ!


 だがしかし、助っ人の登場はこれだけでは終わらないッッ!!


「――うぐぅ!?」


 狼男は突然目を見開くと、苦しそうに声を絞り出す!


「お……お腹が……痛い……!」


「んッ?」


 相手の態度の急変ぶりを不審に思い、アネットとシャルルは眉間にしわを寄せた!


 すると突然ッ!






 ズドンッ!






 狼男の腹が、振動と共にボコンと、急に空気を吹き込まれた風船のように膨れ上がったッ!


「何だと!?」


 驚愕に目を見張る狼男!






 ズドンッッッ!!!






 ズドンッッッッッ!!!!!






 彼の腹を襲う振動が、徐々に大きくなっていくッ!


 そしてッッ!!











 ズドンッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!











 一際大きな振動がしたかと思うと、とうとうこらえきれなくなった狼男は、たまらず胃の中のものを吐き出したッ!


 そう、“胃の中のものを吐き出した”ということはすなわちッ!


 彼が先ほど丸飲みにした人物……アネットの祖母が出てくるということであるッッ!!


「フン!!!」


 彼の口から、小柄な老婆が勢いよく飛び出してきたッッッ!!!


 彼女はそのまま草の海にポスンと綺麗に着地すると、機敏な動作で立ち上がったッ!


 その姿を見たアネット、思わず感涙ッ!


「おお、祖母よ……ッ! 生きていたのか……ッ! まさか狼男の腹の中から、自力で脱出するとは……ッ!」


 すると老婆は、そのしわくちゃの顔を歪ませて不敵に笑ったッ!


「ふっ、アネットよ……私が狼男に喰われた程度で、死ぬような女だとでも思ったのかい?」


 威厳たっぷりにそう言い放つ彼女の雰囲気は、まるで歴戦の戦士のようであったッ!


 次回、「祖母、圧倒的生還ッッッ!!!」に続くッッッ!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ