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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第三章 王都動乱編
93/128

93 『双罪槍斧』

眠い目を擦りながら書いている為、少しおかしい部分があるかもしれません。どうかご了承ください。

「今のは一体……?」


 あの槍斧から放たれた魔力の波動に俺達は圧倒されかけた。あれが槍斧の力なのだろうか? そう思った時だった。

 俺達を取り囲んでいた魔人がその波動に触れると途端にバタバタと倒れていく。


「何が起こっているんだ!?」


 今まで俺達を取り囲んでいた魔人達が一気に倒れていくのだ。その光景を見た俺達は呆気に取られていた。あの魔力の波動に俺達も触れたが、倒れていくのは俺たち以外の魔人だけだ。一体フローラはこの魔人達に何をしたのか。あの波動は何だったのか。

 そんな事を考えていたその時だった。倒れた魔人達に新しい変化が訪れたのだ。


「これは、一体……?」


 俺達の周りで倒れている魔人全員の体から、黒い霧の様なものが立ち上った。


「これは、魔力、か?」


 その霧の正体に俺はすぐに感づいた。恐らくこの黒い霧の様なものは魔人が持っていた魔力そのものだろう。その証拠に黒い霧の出た魔人からは魔力が殆ど感じられなくなっている。代わりに、その黒い霧からは魔力を感じ取ることが出来た。


「さぁ、あたしの元へと集いなさい!!」


 そして、フローラがそう叫ぶと、その霧は一斉に彼女の元へと集まっていく。そして、それはこの場の霧だけにはとどまらない。


「なん、だっ!?」


 闘技場の壁の奥からも黒い霧が現れ、ドンドンとフローラの元へと集まっていくのだ。その黒い霧の魔力の元を辿ろうと、感覚を研ぎ澄ませてみると、その発生源を王都の至る所から感じ取る事が出来た。

 その光景を見た俺は、まるでフローラが王都全域から魔力を集めているようにも感じられた。


「この魔力は一体……?」


 その黒い霧をフローラはまるで深呼吸でもするかの様に目を瞑りながら取り込んでいく。そして、その黒い霧の魔力を全て取り込んだ瞬間だった。


「アハハ、アハハハハハハハハ!!」


 フローラはそんな笑い声を上げる。そして、あの黒い霧、その全てを取り込んだフローラの持つ魔力を感じ取った時に、俺達は驚愕する事になった。


「なんて、膨大な魔力……」

「っ、怪物が……」


 俺達はフローラのその膨大な魔力に揃って驚き、呆気に取られていた。それ程までにあの全ての黒い霧、つまりはあの魔力の全てを取り込んだフローラの魔力は度を超えていたのだ。

 だが、当のフローラは大胆不敵に笑みを浮かべるばかりだ。


 フローラから感じる魔力は先程を遥かに超えている。俺とアリシア、二人の魔力と聖気を集めてもあの量には届かないかもしれない。


 そして、あの槍斧から放たれた魔力の波動、そしてあの黒い霧は、結局の所、一体何だったのか。俺の頭の中にはそんな疑問が浮かんでいた。

 だが、今はそんな事を考えている場合ではない。そんな事を考えるのはこの戦いに勝ってからでいい。


「ああ、やはり素晴らしいわ。そして、この新たに生まれ変わった槍斧、……いえ、折角だからここで、この槍斧に銘を与えましょう。怠惰の槍と傲慢の斧、その二つが融合したのだから……、二つの七罪武具を融合……、…………そうね、決めたわ。今からこの槍斧の銘は、『双罪槍斧』としましょう」

「双罪槍斧……」

「ええ、単純といえば単純だけど、相応しい名前だと思わないかしら?」


 双罪槍斧、その名の由来は、双つの七罪武具を融合したから、そして槍斧が双つの用途を持つ武器だから、そんな所だろうか。もしかしたら、俺の持つ七罪剣という銘も影響しているのかもしれない。


 そして、フローラはこれで全てが整ったと言わんばかりに、その集めた魔力を一気に解き放った。


「あの時の自己紹介を訂正しておきましょうか。今のあたしは【怠惰の魔王】改め、【怠惰と傲慢の双つ魔王】フローラ・ラスト」


 フローラは俺の方を向くと、まるで何かに宣言する様に高らかに告げた。


「カイン、お前を殺して、その七罪剣を奪えば、あたしは更なる高みへと昇れるわ」


 そして、俺にそう告げた直後、フローラはアリシアの方を向くと、口元を喜悦で歪ませながら再び口を開く。


「そして、神聖騎士の一人、【謙譲の騎士】アリシア・エレイン、お前を殺せばあたしの名はこの世界に轟くでしょう」


 俺達が相対するは神代の魔人にして、【怠惰と傲慢の双つ魔王】フローラ・ラスト。恐らくは、今この世界で最も強い存在と言っても過言ではないだろう。

 フローラから感じる魔力は先程感じていたよりも遥かに多い。だが、それでも俺達には引く事すら許されてはいなかった。


「さぁ、最後の戦いを始めましょう!!」

「アリシア、これが最後だ!! 行くぞっ!!」

「ええ、行きましょう。お兄様!!」


 俺達は揃って肩を並べ、手に持った剣をより一層強く握りしめた。


 そうだ、ここからが正真正銘最後の戦いだ。ここから先に待つ結末は、俺達が生き残るか、フローラが勝つか、そのどちらかでしかない。


「「神代の魔人、【怠惰と傲慢の双つ魔王】フローラ・ラスト。今ここで」」

「討たせてもらう!!」「討たせてもらいます!!」

「いいわ、そうでなくては!! さぁ、お前達二人共に、あたしが更なる高みへと昇る為の贄となりなさい!!」


 そして、ここに最後の戦いの火蓋が切られるのだった。

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