表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第三章 王都動乱編
92/128

92 生まれ変わった槍斧

 フローラを包み込んでいた球体、その全てを吸収した彼女は、一瞬の間を開けた後、突如として高笑いを上げた。


「フフフフ、アハハハハ、素晴らしいわ!! 本当に素晴らしい!! この力、本当に素晴らしいわ!! こんな事なら、奥の手、なんて言わずにもっと早くにこの儀式を行っておけばよかったわ!!」


 そして、フローラは自身の魔力を収束、その手に新たに生まれ変わった七罪武具を具現化しようとした。


「さぁ、見なさい……。これがあたしの新しい力よ!!」


 そして、魔力が収束した後、その両手に握られていたのは怠惰槍と傲慢斧、その二つが融合したような漆黒の槍斧だった。


「これが、新たな七罪武具……。素晴らしい、素晴らしいわ!! そして、この槍斧の持つ力も手に取るように分かる!!」


 怠惰の槍と傲慢の斧が融合して槍斧が誕生した。ある意味では納得である。しかし、その槍斧から放たれる威圧感、或いは格といった物は尋常なものでは無かった。それを見て、俺は奈落の最奥で初めて七罪剣を見たあの時の事を思い出した。


「さぁ、お前の力をあたしに見せてちょうだい!!」


 フローラは手に持った槍斧を上へと掲げる。その直後、槍斧から巨大な魔力の波動が放たれた。


「これはっ!!」

「くっ!!」


 俺とアリシアは揃ってあの槍斧から放たれた魔力の波動に圧倒されかけた。

 フローラの持つ槍斧から放たれた魔力の波動はこの闘技場内は元より、それこそ王都全域に到達するのではないかという程に巨大なものだったのだ。




 フローラが儀式を行う少し前、地上では彼女の傀儡の魔人と聖騎士との戦闘が至る所で繰り広げられていた。

 そして、昼が近づいてきた時刻であっても、その戦いは終わる事無く続いていた。


「くそっ、数が減っている気がしないぞ!!」

「この戦いはいつになったら終わるんだ!?」

「ぐぁっ!!!」

「くそっ、アンドリューがやられた!! これで一体何人目だ!?」


 日の出から戦い続けた聖騎士達の疲労は段々と増加しており、損耗も大きくなってきている。聖騎士達から出る犠牲者の数も加速度的に増えていた。


 彼等にとって幸いだったのが、今回の作戦が専守防衛だった事だろう。今回の作戦は聖騎士が地上で魔人と交戦している内に、神聖騎士であるアリシアが単独で今回の黒幕である神代の魔人の討伐に向かうというものだ。

 そしてアリシア曰く、黒幕である神代の魔人を倒せば、今王都を襲っている魔人も全て活動が止まる可能性が高いとの事だった。


 だが、早朝に戦い始めて、今はもう昼時だ。この場にいる聖騎士達の体力にも限界が来ていた。


「くそっ、このままでは、不味いな……」


 ここにいる聖騎士達を率いていた部隊長は思わずそう呟いていた。魔人達の数は一向に減る気配が見えてこない。

 このままでは、ここもいずれ突破される。そして、ここを突破されれば、この先にあるのはクリスチア大聖堂、教会の王都での一大拠点だ。しかも、今クリスチア大聖堂にはかなりの数の避難民が逃げ込んでいる。

 もしここを突破され、魔人達がクリスチア大聖堂に到達することがあればどうなるか。想像するのには難くない。また突破されれば、ここにいる魔人達はクリスチア大聖堂を陥落させた後、貴族街、そして王城へと流れ込むだろう。

 そうなれば、この王都は魔人の手に落ちる。或いはこの国そのものも魔人の手に落ちてしまいかねない。

 万が一に備えて、王族や国の重要人物は避難しているが、それでも王城が陥落した場合、奪還するのにどれだけの労力が必要か等、想像もつかない。

 ここにいる聖騎士の大部分、そして部隊長も、このメルクリア王国の生まれだ。生まれた国を魔人に奪われる事など考えたくもない。だからこそ、この場所を突破される訳にはいかない。この場所は必ず死守する。そう部隊長が決意を新たにした時だった。


「っ!? 何だ一体!?」


 突如として、巨大な魔力の波動を感じたのだ。その波動は王都全域に到達しそうな様にも感じられた。しかも、それは彼だけではなく周りにいる聖騎士全員がそれを感じたようだった。

 だが、異常はそれだけでは無かった。今迄戦っていたはずの魔人の軍勢、その全てがまるで糸が切れた様に次々とバタバタという音を立て倒れ込んでいくのだ。しかも、その魔人達が持っていたはずの魔器も消失しており、魔人自身からも今迄感じていた魔力すらも、まるで何者かに根こそぎ奪われたかのように、その魔力も殆どが感じられなくなっていたのだ。


「一体、何が起こっているというのだ……?」


 その事態に魔人の相手をしていた聖騎士達も全員が呆然となるが、すぐさま気を取り直した。

 最初は、神聖騎士であるアリシアが、黒幕である神代の魔人を討伐したのかとも思った。しかし、彼等はすぐにその考えを捨てた、アリシアが神代の魔人を討伐してこの状況が起きたとするなら不自然過ぎた。彼らには、魔人達がまるであの魔力の波動に当てられて倒れた様に感じられたからだ。


「全員、よく聞け!! 原因は不明だが、魔人が動かなくなった今こそ、体勢を立て直す絶好の機会だ!! すぐに体勢を立て直すぞ!!」

「「「はっ!!」」」


 そして、彼等は魔人達が再び起き上がる前に、体勢を立て直そうとするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ