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七罪剣と大罪人と呼ばれた少年の反逆譚  作者: YUU
第三章 王都動乱編
88/128

88 次なる一手

少々遅れてしまいました……。

「くそっ……」


 フローラに対して【色欲】の力が効かなかった以上、【色欲】の力は実質封じられたと言ってもいいだろう。色欲刀を具現化しているだけでも魔力を消耗する。今後、長期戦が予想される事を考えると、色欲刀の具現化を解くのが正解なのは間違いない。


「…………」


 少し逡巡した後、俺は左手に持った色欲刀を消し、その魔力を俺自身へと還元した。


「アハハハ。そう、それが正解よ」

「くっ」

「お兄様……」

「アリシア、大丈夫だ」


 俺が使える筈の三つの力の内、一つが使えない以上、残りの二つで戦う他ないだろう。

 今回の戦いで頼りにしていた力の内一つが早々に使えなくなったという事実で、一瞬だけ心が折れそうになったが、今は敵の前と自分に言い聞かせる事で何とか心が折れずには済んだ。

 だが、【色欲】が効かなかった以上、もう出し惜しみしている場合ではない。


「アリシア、全力で行くぞ。ここからはもう出し惜しみは無しだ」

「分かりました」


 アリシアは俺の言葉に頷くと、自身の周囲に七本の剣を生み出した。俺と戦った時と同じだ。これがアリシアの全力だった。


「『光剣』よ、行きなさい!!」

「っ!!」


 そして、アリシアが放った『光剣』はフローラの周りを取り囲む。その直後、『光剣』は一斉にフローラに攻撃を仕掛けた。

 しかし、フローラは怠惰槍を器用に操り、アリシアの放った『光剣』を弾いていく。それでも、七本の剣による同時攻撃だ。面倒な事この上ないだろう。この攻撃の一番の利点は何よりも手数だ。あの時の俺は両手に武器を持った事で手数を確保したが、得物が怠惰槍のフローラでは、対処の難易度は俺よりもはるかに高いものになっているだろう。


「面倒ねっ!!」


 フローラは自分の周囲を取り囲んでいる『光剣』に対処しているが、それでも対処しきれてはいない様だ。少しずつ、かすり傷程度だが、それでも着実にフローラに対してダメージを与えていることが出来ている。

 だが、これだけではない。フローラと戦っているのは俺とアリシアの二人だ。また、俺もアリシアの『光剣』に当たればそれ相応のダメージを追うが、逆に言うなら、当たらなければいいのだ。

 そう考えた俺は、アリシアの『光剣』の動きに出来た一瞬の隙を突き、フローラの懐まで飛び込んでいく。


「貰った!!」

「っ、流石にそれは読めているわよ!!」


 しかし、流石は神代の魔人。この程度の攻撃は読まれている様だ。フローラは怠惰槍の柄を器用に操り俺の攻撃を受け流した。


「駄目か!!」


 そして、フローラは怠惰槍を構え、そのまま攻撃直後の俺に向けて突き出そうとしてくる。だが、俺には【暴食】や【色欲】以外にも、もう一つだけ力があるのだ。


「『強欲の魔手』よ!!」

「っ!!」


 フローラの足に対して、『強欲の魔手』を仕掛けた。あの時のガイウスと同じ方法だ。『強欲の魔手』を受けたフローラの足には突如として力が入らなくなり、そのまま跪く様な状態になった。


「アリシア、今だ!!」

「はい!!」

「っ!! しまっ!!」


 そして、アリシアは俺が飛び退くのと同時にフローラの周囲を取り囲んでいる『光剣』を一斉にフローラに向けて放った。しかし、未だに足に力が入らないであろうフローラは身体を捻る事で、急降下してきた『光剣』を回避しようとする。が、その『光剣』の速度には完全に対応する事は出来なかった。


「かはっ!!」


 身体を逸らした事で直撃とはいかなかったが、それでも完全に回避は出来なかったのだろう。肩口の方にアリシアの『光剣』の内の一つが突き刺さっていた。


「やったか!?」

「……ぐっ!!」


 フローラの額からは汗が見える。あの肩口に刺さったままの『光剣』は聖気の塊だ。魔人であるフローラにはあの『光剣』は毒に等しい。あの『光剣』が刺さったままでは、消耗していくだけだろう。

 しかし、フローラは驚くべき行動に移った。なんと肩に刺さった『光剣』を抜く為だろう、その肩に刺さった『光剣』の柄を自らの手で握りしめたのだ。


「なっ」

「あがっ!!」


 そんなフローラの様子を見たアリシアは驚きの声を上げた。肩に刺さったままの『光剣』を抜かなければ、消耗していくのは間違いない。それは事実なのだが、魔人であるフローラが何の対策も無しにあの『光剣』に触れるのは、素手でマグマに手を突っ込むようなものだ。普通ならそんな一瞬で決断出来る事ではない。だからこそ、それを躊躇もせずに行ったフローラに対してアリシアは驚いたのだろう。


「があっ!!」


 そして、フローラは勢いよく肩に刺さった『光剣』を引き抜いた。その直後、フローラは立ち上がり、俺達から距離を取るように離れる。


「……よくも、よくもやってくれたわね」

「「っ!!」」


 瞬間、フローラから放たれていた威圧感が更に一段階上昇したのを感じる。


「いいわ、次の手を打ちましょう」


 そして、フローラは怠惰槍の穂先を天高く掲げ上げた。


「さぁ、来なさい。あたしの下僕達……」

「っ!!」


 フローラがそう言うと、この闘技場の壁全体が開く様に動き出した。そして、壁の奥からは無数の人影が現れる。その後、それらは俺達を取り囲む様に集まっていくのだった。

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